逃げられない

(あ、やばい)

なんとなく不穏な空気を察した私は即友人達に今日は先に帰ると一言入れてその場を離れる。

(今日はどうしてもみたい番組がある)

それを阻止されたくない私は足早にかつ目立たぬようにそっとそこを抜けだす。
しかし何度かそれをやったことがあるが私は一度も成功などしたことがなかった。
そして今回も。

「名前」

名前をはっきりと呼ばれた。
こうなってはもうそれを振り切ることなど不可能だ。

「帰るのか?」

背後から聞こえるその声は徐々に自分に近付いてくる。
私はその声を聞くと身体が硬直してしまう。

「俺も行っていいか?」

あっさりと私に追い付いた十代は私の目を見て柔らかな微笑みを向ける。
その微笑みがなんだか耽美なものに見える私はどこかおかしいのだろうか。

今までの経験から拒んだところで意味のないこともそれによってよりめんどくさい状況になることも知っている。
つきたいため息をぐっと我慢して首を縦に振れば十代は私の手をとって帰路を急がせた。

(録画予約しておけばよかった)










鍵を開け玄関に入った瞬間十代は扉を乱暴に閉めその扉に私を押し付けた。

「なぁ、さっき誰と何をしてた?」

十代は笑顔だけれど笑っていない。
先程は日直の仕事でクラスメイトの男子と共に職員室に行っていた。
そしてそのまま世間話をしながら帰ってきた。
ただそれだけの事だ。

「日直だから集めた提出物をクロノス先生に提出しにいってただけだよ」

十代もちゃんとやらないと駄目だよ、と続けるも未だ十代の表情は固かった。

「ふーん、じゃあなんであいつがお前の身体に触ってたんだ?」

それはなんと色気もない、その男子生徒は転びそうになった私の二の腕を掴んで支えてくれた、それだけだった。
十代にはその掴んだ状態だけを見られていたのだろう。

「転びそうになったのを助けてもらっただけだよ」

そう伝えると十代は乱雑に靴を脱ぎ部屋に上がった。
それを見て思わず吐きそうになるため息をぐっと堪えて自身を靴を脱ぎ十代に続くと部屋には行かずお風呂場に向かっていた。

「何してるの?」

「風呂入ろうぜ」

そう言って浴槽にお湯を張り始めた。

「·····二人で?」

女子寮には大浴場がある。
よって各部屋に備え付けのお風呂は簡易的でどう見ても1人用サイズのバスタブだ。
しかしその問いに対しても十代は当然だろうというように頷いた。

(ややこしいことになりたくないから逆らわないでおこう)

今の十代の提案を断ればどれだけ面等なことになったかということはわりと新しい記憶にある名前はそれに抗う事はやめた。

1人サイズの浴槽はみるみるお湯がたまっていき10分としないうちに十分なお湯かさになった。

「そろそろいけるな」

浴槽を見てそう言った十代は私の制服を脱がしにかかる。
自分で出来ると言った所で十代がそれをやめることはないという事を知っているので私は十代に身を任せる。
私を脱がせた後十代自身も服を脱ぎ私を浴室に押しいれた。

シャワーの蛇口を捻りお湯を出しながら掌でボディソープを泡立てる。
軽く身体にシャワーをあてた後私の身体をわしゃわしゃと洗い始めた。
右腕をしっかり目に。

十代は以外と束縛が激しい。

これはもしかしたら私しか知らない事かもしれないけれど。

痛いくらいの強さでそこを洗い満足したのか十代はやっといつもの表情に戻った。
そして全身についた泡を全て流しおえたあと私を抱き抱えるようにして浴槽に浸かった。

ぎゅうぎゅうのそこは疲れを取るという目的には不向きかもしれないがこうしてお互い密着して温かなお湯につかるという行為は案外リラックス効果がありお互い気に入っていた。

私のお腹に抱き付き肩に顎を乗せた十代はなんだか少し可愛らしいと思う。
それはまるで母親に甘える子供のよう。

「いたっ」

私の考えている事を感じとったのか十代が私の肩に噛みついた。

「なにするの」

「べつに、美味そうだったから」

不満を訴えるも悪びれた様子などなくがしがしと私の肩を噛み続けた。

「十代、痛いよ」

「そっか」

再びそう訴えると今度はそこをぺろぺろと舐めはじめた。
そして首筋に舌を沿わせた後耳たぶをかぷりと甘噛みした。

「十代、だめ」

「無理」

お尻にあたるそれに気が付いて急いで十代を止めようとして離れようとするが十代は先程以上に腕に力を入れ私を引き留めた。

怪しい動きをする腕を引き剥がそうとするがこの細い体のどこにそんな力があるんだろうというような力で私の腕ごと抑えこまれた。

「せめてベッド行こうよ」

十代は私のその言葉に一瞬動きを止めた。

「ベッドに行ったら当分終わんねぇけどいいのか?」

その声色は実に楽しそうだった。

「嘘つき」

どこでシた所でこんな日の十代はなかなか満足しないことなど今までの経験上よく知っていた。
ならばここでするよりベッドの上の方がよっぽど楽なのだ。

「ベッドが良い」

「了解」

私の了承の言葉にとても嬉しそうな十代はろくに身体も拭かずにそのまま私を抱きかかえたままベッドに直行した。

(ああ、シーツがびしょ濡れになる)

布団も干さなければいけない、明日晴れるのかなどと呑気なことを考えていると十代の唇と舌が私の唇をなぞり咥内を荒らした。

(まぁどうでもいいか)

そうしてそのまま私の意識がなくなる頃までそれは続いた。
見たかったテレビ番組はやはり見られなかった。