自分の事にかまけて重要な事を見落としてしまった事に気がついた。
それに気付いたのはもう事が起こってしまった後のこと。
そこに駆けつけた時にはもう。
「...何か出来ることがありましたらなんでもします」
「ありがとう、名前さん。...本当にどうしてこんな事になってしまったのかしら...」
十代君とヨハン君に抱えられて運び込まれた万丈目君はびしょ濡れのまま気を失っている。
もちろんそんな万丈目君を抱えていた2人も全身びしょ濡れだ。
2人に万丈目君をベッドに下ろしてもらった後2人にタオルを渡し風邪をひかぬよう先に着替えるよう促した。
少し申し訳ないと思いながらも緊急事態でそんな事は構っていられない。
私は鮎川先生と協力して万丈目君の濡れた服を着替えさせた。
発熱しているように見えるのは水に濡れてただ風邪を引いた、というわけではないことを知っている。
本当になんて恐ろしいものなのだろう、と彼と同じく自身の腕に着けられたソレに触れた。
こんなもの爆弾を着けられているのと代わりないじゃないか。
酸素呼吸器を付けられた万丈目君を見て心が痛んだ。
そして万丈目君程ではないにしろただデュエルをおこなっていっただけで何が起こったかもわからず倒れた沢山の生徒達。
まさに地獄絵図だった。
「...万丈目や他の生徒は大丈夫そうか?」
少しして身なりを整えた十代君とヨハン君が戻った。
取り敢えずは命に関わる程ではないから大丈夫だと鮎川先生は2人に伝える。
それに安堵しつつも2人とも少しぴりぴりとした空気を纏っている。
それは当然の反応だろう。
「名前...名前も大丈夫か?」
十代君は私にそう声をかけた。
私はデュエルをしていない、それは分かっているだろうに彼は私に気をかけてくれたのだ。
「大丈夫よ。私はなんともないから」
彼に弱い所を見せすぎた。
今は私になんて構っていられない事態だと言うのに。
本当にごめんなさい、と心の中で彼に謝った。
事が落ち着いたらきちんと謝罪と感謝を伝えたいと改めて思った。
事が落ち着いたら、なんて。
その時私と十代君はどうなってしまっているのだろうか。
いっそ記憶が消してしまえたらよかったのに、と無責任な事を考えてしまう私は彼らよりずっと子供なのだろう。
「万丈目君達には私と鮎川先生がついているから、2人も今日は休んで。...ね?」
あまり人が多くても不安と混乱を広げてしまうにすぎないと判断した鮎川先生は2人が着替えている間に他の付き添いの生徒を帰していた。
そう伝えても十代君は心配そうな顔でそれを渋るようなそぶりを見せた。
しかしそんな十代君にヨハン君は声をかけた。
「きっと俺達がここにいても今俺達が出来る事はないんだ。だから今夜は2人に任せよう」
「...分かった」
冷静な人だと思った。
勿論彼の事は知っていた。
似ている、本当にこの2人は。
仲間の為に熱くなれるところ、マイペースに見えて案外周りが見えていて状況判断が出来るところ。
この2人は出会うべきして出会ったのだろうと感じた。
こうして面と向かって話したのは初めてのことだった。
十代君からも当然彼の話は聞いていた。
面白い奴が来たと嬉しそうに話していた彼を見て私もそれを嬉しく思った。
「じゃあ皆んなをよろしくお願いします」
ヨハン君はそう言って頭を下げた。
それに倣うように十代君も頭を下げる。
「...なにかあったらすぐ連絡してくれよ」
十代君の言葉に状況的に不謹慎に思われるかもしれないと思いながらも少しでも安心してもらえるよう笑顔で頷き、2人におやすみなさいと声をかけ寮へと帰る彼らの背中を見送った。