私がいたってきっと足手纏いにしかならないということは分かっていた。
デュエルの強さではない、足りないのは覚悟だ。
ヨハン君は知っていたのだろうか。
二手に分かれた際自然と私は十代君側に振り分けられた。
くれぐれも気を付けてください、と不安な表情で私に警告した明日香ちゃん。
胸が痛かった。
彼女の手を握り私も明日香ちゃんの無事を願った。
「森と変わらないくらい植物で覆われているから足下にも気を付けて、本当に無茶はしないで、ね…」
これから彼女が危険な目に遭うと知っている。
それは十代君のおかげで大事に至るわけではないということも知っている。
それでも怖い思いはする。
強引にでも彼女と行動を共にすべきだろうかとも考えた。
しかしここは少し異質だ。
あのような罠が他にも仕掛けられているかもしれない。
仮に本来起こるそれを逃れられたとしてイレギュラーな事態が起こった時彼女が無事に助かる保証がない。
「行こう」
ヨハン君の言葉でそれぞれ出発した。
出来る限り足を引っ張らぬよう今日はこちらに来てから制服と共に配布されたパンプスではなく元いた世界であの日履いていたスニーカーを履いてきた。
あの日ここに飛ばされた時全てを無くしていなかったことを改めて幸福に思う。
あとは体力が落ちていない事を願うばかりだ。
「名前、大丈夫か?」
改めてそう訊ねたのは十代君。
彼が私が着いてくることをあまりよく思っていない事は言葉にされずともなんとなく伝わった。
何か言おうとしながらも言葉を選ぼうと悩んでいるようだった。
しかしそれを手助けしたのほヨハン君だった。
手助けというのは十代君ではない、私だ。
彼は私の気持ちを察したのか私の意思を尊重して十代君に今はとにかく急ごう、と背中を押したのだ。
殆ど知らない人間の筈の私を、殆ど反則のような手段で知った彼の人柄を知っている私にはどうでもいいからとにかく急ごうなどという意味で言っているわけではない事を理解している。
「…ありがとう、ヨハン君」
私が感謝を伝えれば彼は笑顔で親指を立てた。
その笑顔はやはり十代君に似ているなと感じた。
全てに片がついたら彼とも色々話してみたいと思った。
折角同じ世界、同じ次元に存在する彼と出会えたのだから。
そんな事を考えていたその時私の手がぐいっ、と引っ張られた。
「おいヨハン...名前は俺のだから変な気起こすなよ!」
十代君はヨハン君に向けてそう言った。
ヨハン君はキョトンとした顔をしたあと呆れたように笑った。
翔君も苦笑いを浮かべている。
「お前意外と嫉妬深いんだな」
「アニキは名前さんにゾッコンなんスよ」
ヨハン君と翔君の言葉に十代君は言葉を詰まらせるもそれを否定する言葉を返す事はなかった。
こんな時だというのに私はそれが少し嬉しくて。
「(ゾッコンなのは私の方なんだけどね、十代君も同じ気持ちでいてくれたのなら嬉しいよ)」
それが伝わればいいと思って彼の手を握り返した。
十代君は私の方を見て少し顔を歪ませた。
「っそういうことだから!!危ないから俺から離れるなよ!」
そう言った十代君にヨハン君はそれだと俺が危ないやつみたいに聞こえるだろ、とツッコミが入った。
こんな時にやめましょう、と冷静な言葉をかける翔君に十代君は分かってるよ!と声を荒げた後咳払いをして自身の頬を叩いて気を引き締め直した。
こんな状況で不謹慎かもしれないがそんなやりとりのおかげで私の緊張は少し和らいだ。
本当に素敵な人ばかりだと改めて実感した。