補給の為のもの

デュエルアカデミアの卒業式から4ヶ月、十代は自身の精霊を引き寄せる体質か、トラベルに巻き込まれやすい体質か或いは両方が要因となりなんやかんやと忙しない旅を続けていた。

事態によっては一週間程野宿をせざる終えない環境もあり体力的にも参る事があった。

「今回もなんとか解決したにゃ〜
今日は宿で休むことができそうだにゃ」

くたびれた様子の十代に大徳寺はお疲れ様、と敬いの言葉を続ける。

「ああ、とにかく腹が減ったから取り敢えずは街に降りて飯だな」

十代の疲れの原因は空腹が一番の要因なようだ。
そういうやいなや十代のお腹が大きく鳴った。
くたびれた身体をなんとか動かし足早に街に向かう。





「あ〜生き返った!!」

適当なレストランでたらふく食事を堪能した十代は満足気に膨れたお腹をぽんぽんと叩いた。

「君、いくらなんでも食べ過ぎじゃないのかい?」

その様子にユベルは呆れたようにそう言った。

「良いんだよ、また次いつ食べられなくなるかわかんねーんだから」

呆れるユベルにそう返事をして冷えた炭酸を一気に流しこんだ。







「おい、聞いたか?日本でプロデュエリスト、名前.名字のイメージDVDが発売されたらしいぞ!」

店内の客の話が聞こえた十代はその内容に飲んでいた炭酸飲料も吹き出した。

「なに!?名前と言えばデビュー前からファンクラブが発足されるほど人気のデュエリストじゃないか!販売は日本だけなのか?」

その衝撃の情報を口にした男にその連れの男は食い気味に情報を求めた。

「国内のみで販売らしい。
俺の友人は日本版A○azonで購入したらしい!
そのDVDの特装版は名前とのデート気分が味わえる映像が入っているらしく発売から爆発的に売れているらしいぞ!」

男は興奮気味にそう続ける。
その二人の会話を聞きながらぶるぶると震える十代。

「なんだか凄いことになってるにゃー。
名前さんは凄い人気者になってるんですにゃ〜」

「人間というものはおかしな物に興味を持つもんだねぇ」

「いやいやいやいや!おかしいいだろおおお!!!」

その二人の話を聞いていた大徳寺とユベルがのほほんとそんな話をしていると十代は辛抱たまらんと言わんばかりに雄叫びを上げた。

「イメージDVD!?デート気分が味わえる!?意味わかんねーよ!!あいつ何やってんの!!??俺だってまともにデートなんてしてねぇよ!!」

芸能人、アイドルなどに興味がない十代はそういったものの需要を知らなかった。
ましてや卒業後即日本を離れた十代は名前の日本での人気を把握していなかったのだ。


「じゅ、十代君!凄く目立ってるにゃ!」

「こんな場所で目立つなよ十代」

突然大声を出した十代に店内にいた客全員がが目を向けた。
それを咎める為に二人は落ち着くように声をかけたが十代には聞こえていなかった。


「君はもしかして日本人かい?
名前は最近人気上昇中のプロデュエリストで君と同じ日本人さ!
君と同じくらいの年齢じゃないのかな?」

そんな十代の心情を知らずに先程まで名前の話で盛り上がっていた客が十代に話しかける。
十代は思わずその男を睨み付けると男はやれやれといった表情をして十代から目を反らした。

そして乱暴に代金をカウンターに叩きつけ十代は店を後にした。





宿にチェックインした後十代はホテルのパソコンで先程聞いた話が本当なのか検索をかけた。
デマであればいいと思いながらもエンターキーを押して出てきた検索結果は各ネットニュースサイトとオリコンチャートでそれが間違いのなく事実であるという事を十代に叩きつけた。

(いやいやいや、は?浴衣も水着も俺見たことねぇよ!)

画像一覧を見てみるとその映像のスクリーンショットの一部が載せられていた。
それは浴衣を着て縁日を楽しむ様子や水着姿で視聴者に向けてかき氷を食べさせるようなものだった。

十代はそれを見て色々な感情が頭のなかでぐちゃぐちゃになった。
そしてなんとももやもやした気持ちのまま名前のDVDを購入したのだった。








「へぇ〜これが例のですかにゃ。」

「君も物好きだねぇ。」

数日経って十代が届いたDVDを開封する所を大徳寺とユベルが一緒に興味深げに

数ヶ月ぶりの名前の姿に妙な緊張感を感じながらも十代は一つ深呼吸してリモコンの再生ボタンを押した。

本編は名前のデビュー戦だった。
初戦というのにも関わらずのびのびと実にデュエルを楽しんでいるというのが表情からもプレイングからも伝わってきた。

(俺は名前のこういう所に救われてきたんだ)

デュエルは人の心を映す鏡のようなものだ。
名前のデュエルは真っ直ぐで純粋そのものかと思えば予想だに出来ないような奇想天外な展開を見せ、皆をあっと湧かせる。

「名字さん、変わってないですにゃ」

「相変わらずおかしな手を考えつくもんだね。僕には理解できないよ。」

悪態をつきながらもどこか久しぶりに見る変わらぬ名前の様子に顔が緩んでいた。
名前には人の毒気を抜かせる不思議な魅力があった。

しかし問題はこれからだ。
イメージDVDというものが再生された。









「控えめに言っても最高だったよ!!」

十代その出来の良さにどうすることも出来ない感情を枕に込めてベッドに叩きつけた後ベッドにダイブしてその枕に顔を押し付けた。

(くそっ!なんなんだよ!すっげーもえたわ、というかもう)


「ああああああああああああああ!!!!!!」

大声をあげ起き上がった十代二人が心配するのを他所に自身の荷物を漁りだした。

「十代君、ど、どうしたにゃ?」

心配する大徳寺に返事をすることもなく十代は学生時代の制服を取り出した。

あきらかに女子生徒のそれを。

「じゅっ、十代くん!そ、それは、ぬ、盗みは犯罪だにゃ」

それを見て慌てる大徳寺を他所にあまりにもはっきりと答える。

「これは名前に貰ったんだよ」

その言葉に大徳寺とユベルは顔をひきつらせて固まった。
十代はその二人を気にする事もなくその制服に顔を埋めた。

「(ま、まずいにゃ〜!怖いにゃー!)」

「(十代、さすがの僕もそれはひくよ)」








虚ろな目で笑いながら名前の制服を抱きしめる十代を見て十代のこれから行うであろうことを察した二人はそっと部屋をでた。

一時間後には先程の十代の表情を忘れてしまうほどすっきりとした顔になっと十代に更に二人の顔はひきつったのだった。