「おめでとう!早々に完売したわよ」
「あ、うん、ありがとう···」
マネージャーから発売したDVDの完売を知らされた名前は何とも言えない表情でお礼を言った。
「···いや、でも、なんなの?」
「言ったでしょう。あれは売れるって」
確かに企画が上がった時やたらと強く押していたのは覚えている。
特典映像の内容に若干引きもしたが半分ヤケになって全力で挑んだ。
評価は上々だったらしくこれがきっかけでCMのオファーが来たらしい。
「とりあえずスポンサーの事もあるからこの件は一度保留にしているの。
公式に妊娠発表をしてそれでも取り下げなかった企業があればそことは契約すべきだと思うわ」
プロデュエリストとは言え半分芸能人のようなものだ。
スキャンダルを狙って雑誌記者が張り付くなんて事は珍しくない。
そこで面白可笑しく書かれててしまえば契約違反だとスポンサーに責められてしまう可能性もある。
「その辺の判断は全部任せるよ」
マネージャーは嬉しそうだ。
明日香同様に私の妊娠を報告した時は今にも十代の元に飛び出していきそうな勢いだった。
焦りもしたが自分は本当に大切にされているのだなと改めて知れた事が嬉しかった。
あくまでも私たちはビジネスパートナーではあるが少なくとも私はマネージャーを姉のような存在だと思っている。
コンコン
扉をノックする音が室内に響いた。
マネージャーが対応に出る。
客人は万丈目君と万丈目君が紹介してくれた病院で私診てくれているお医者さん、そして今回のプロジェクトの責任者だった。
今日は彼らとの打ち合わせの日だ。
「一般への発表は安定期をすぎてから、と考えております。」
万丈目君がそう言った。
初めて目にする仕事モードの万丈目君はとても新鮮だった。
「我々としては彼女のモデル採用はビジネスの為でもあります。
しかし何より彼女が出産という大仕事に挑むにあたり、安全面を害してしまうような事は避けたいと考えております。
ですからあくまでも我々は彼女が安全に出産に挑めるよう誠心誠意フォローに努めたいと思っております。」
その万丈目君の誠実な言葉にそこにいた皆が頬を緩めた。
その日の話し合いは発表時の対応やマネージャーと万丈目グループの社員との連携に関するものが主だったので私は殆ど聞いているだけだった。
そこで少しだけ不安になった。
私は何もしていない、人に支えられてばかりではないか、と。
だがその不安を口にした所で迷惑をかけてしまうだけだという事はわかっていたので口にはしなかったが。
「それでは今日はこの辺で、お時間いただきありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。
ご迷惑をおかけすることが今後も多々あると思いますがどうか宜しくお願いいたします」
一時間程でその日の話し合いは終わった。
互いに挨拶を済ませお開きとなった。
そんなとき
「申し訳ありません。
名字さんと少しだけお話があるのですが宜しくですか?」
万丈目君がマネージャーにそう訊ねた。
「はい、勿論です!」
では我々は先に車に戻っておくと言って部屋を出ていくお医者さん達を下まで見送ると言ってマネージャーも共に部屋を出た。
改まって万丈目君の言う話とはなんのことなのだろうか。
「おい、名前。
お前さっきから全部顔に出ているぞ」
私の顔を見て呆れてため息をついた。
「そんなに俺様の事が信用できないのか?まったく。
お前の事は万丈目グループの威光にかけても徹底的にフォローしてやる。
だから余計の事を考えるな。」
私の不安を感じたのだろうか、万丈目君は自信満々な顔でそう言ってくれた。
学生の頃から変わらぬ万丈目君の頼もしい所にとても安心してうっかり泣きそうになった。
私はこんなに涙腺が弱かっただろうかと疑問に思う。
どうやら妊娠中は色々な所に影響がでてしまうようだ。
「お前を支えようとしてくれる人間がいるのもお前の人徳だ。
だからそれは全部受け取っておせ。
そして俺様に受けた恩は全てきちんと返してもらうからな!」
私に罪悪感を感じさせないような言い回し、こういう優しさを持っているそんな彼が私はとても好きだ。
「万丈目君は早く明日香にプロポーズしなよ」
「なんだ貴様!人が慰めてやったのに、や、藪から棒に!」
万丈目君は私の言葉に慌てふためいた。
相変わらず明日香の事となると平常心を保てなくなる。
「私は二人が一緒にいるの凄く好きだからね、万丈目君の事応援してるよ」
本心だった。
万丈目君は素敵な人だと思う。
少しズレているし自信家でプライドも高い。
でも凄く優しいし一途だと思う。
だから私の親友がそんな人とずっと一緒にいてくれたら、と願ってしまう。
「·····大きなお世話だ」
万丈目君はか顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「俺様はお前と違って暇ではないからもう仕事に戻る。
とにかくお前はくだらないこと考えずに子供のことだけを考えてろ」
そう言って万丈目君は部屋を出た。
素直じゃない所もまた彼の魅力の一つだと思う。
そんな所を知れたのも十代がいたからだと思う。
私が仮に一人でも育てていこうと思ったのも本心だ。
十代が自身の意思で旅に出た事も責める気もない。
心の底からは応援している。
それでも、会いたいな、そう考えてしまのはこの子の影響なのだろうか?
まだあまり膨らんでいないお腹を撫でる。
なんだかとても安心した気持ちになった。
「早く貴方に会いたいね」
それは果たしてお腹に宿った子供に言ったのだろうか
それとも