「なぁ、なんでそんなの吸ってんの?」
いつからだろうか、私が食後の一服を楽しんでいると邪魔者がやってくるようになったのは。
遊城十代、この学園で最近話題の有名人。
本来であればこれは咎められる行為だ。
初めて見つかった時まずいな、というよりは面倒くさいなと正直思ったがそもそも私がここに入学することになった過程は親子感でのいざこざや高校くらい出ろという世間に対する面子の問題だ。
そんな理由だからこそこの学園に未練などない。
むしろ私が退学になるのもそれはそれで願ったり叶ったり、だからこな男に口止めなどしなかった。
だが男は教師に密告や面白おかしく他人に話すことをしなかった。
事態は更に面倒なことになった。
この男はあれから毎日のように自分の元にやってくるようになってしまったのだ。
心底面倒ではあったが一人なりたくて場所を変えてもなぜかそこを嗅ぎ付けて現れるのだ。
教師に密告する気配もない、何が目的かがわからな、正直気味が悪くて苛々した。
そして当たり前の事を態々訊ねることにも。
煙草を吸う事の理由など吸いたいから以外の理由があると思うのだろうか。
「貴方にとってのデュエルくらい私には必要不可欠なんだよ」
遊城十代がデュエルが出来ないと発狂するように私は煙草が吸えないと発狂する。
この一見自由なように見えてけしてそうではないゆりかごのような監獄。
私にはこれは必要な事だった。
早く消えろと言わんばかりに煙草の煙を男の顔に吹き掛けてやればケホケホと噎せながら抗議の言葉を寄越した。
「俺は煙草なんて必要ないんだよ!」
ごもっともだとも。
分かった上で消えてほしくてやった嫌がらせだ。
「腹がたったならとっとと消えろ。
貴方が消えないなら私が消える」
短くなった煙草を携帯灰皿に擦り付け火を消しその場から立ち去ろうとした。
その時私は男に腕を捕まれた。
「俺は名前といたい」
「なんで私の名前知ってんの?」
この男に名を名乗ったことがあっただろうか?
気味が悪くてそれを訊ねるも男は質問に答えない。
「名前だって知ってたじゃん」
「私と貴方じゃ全然状況が違う」
私はごく普通、その他大勢の一般生徒にすぎない。
今はこの面倒な男相手に多少雑な対応をとってはいるが普段はそうではない。
面倒事をさける為にある程度相手を気遣った行動を取り目立たぬように地味に生活してきた。
「まぁ俺がなんで名前の名前知ってるかなんてどうでもいいよ」
私の質問にまともに答える気がないようで男はまたしても同じ言葉を口にする。
「なんで煙草やめねぇの?」
いい加減馬鹿馬鹿しくなってきた私はため息をついた。
このやり取りに何か意味があるのだろうか。
実に無駄な時間だ。
「口が寂しいからだって言ったらどうする?」
そう答えたら遊城十代は一瞬きょとんとした顔をした後考える素振りを見せた。
この男にデュエル以外の事に頭を使う事があったことに驚いた。
そして妙案が思い付いたと言わんばかりに男は笑う。
「なら俺が慰めてやろうか?」
そう言ってあろうことかこちらの了承も得ずにこの男は私の唇に自身の唇を押しあててきた。
この男はまるで悪戯が成功した子供のように笑っている。
背筋が騒ついた。
全身がこの男を拒絶する。
そこで私のスイッチが入る。
「ほんと貴方って噂通りのおバカさんみたいね」
にやついていた男の顔が無性に腹がたった私は遊城十代の胸ぐらを乱暴に掴んで壁に叩きつけ今度は私が唇を奪ってやった。
先程十代がしたものとはまるで違う深い深い口付けを。
荒々しくも丁寧に歯茎、舌、口内をねっとりと犯した。
視線を下に落とせば十代がそれによって発情しかけている事が分かったので先程まで絡ませていた舌を血がでるのではないかという程強く噛んだ。
「いっっ!?」
そして胸ぐらを掴んでいた手を離せば遊城十代はその場に尻餅をついた。
そりゃそうよね、貴方膝が笑っていたもの。
「100年早いのよ」
座り込んだ十代の胸を蹴り倒れ込んだ所にのし掛かり両手を抑え込んだ。
十代は何が起こっているのか理解出来ていないようで目をぱちくりさせている。
「自分の女でもない奴にキスされたくらいで勃起してんじゃねぇよ」
そして乱暴に股関を掴めば十代は小さく悲鳴をあげた。
「私に今されている事に腹を立てるなり悔しかったりするならもっと良い男になんなよ。そしたらあんたの童貞貰ってやってもいいよ」
空になった煙草の箱を握り潰して十代の胸に押し付けおまけだと言わんばかりに首筋に噛みついてやった。
(ああ、悪い癖がでた)
だから私には煙草が必要なのだ。
煙草は私の理性の蓋だ。
遊城十代を乱暴に壁に叩きつけた瞬間興奮してしまった。
私は男をねじ伏せてしまいたくなる性癖を持っている。
(しかしもうこれであの男が近付くこともないだろう)
遊城十代は私と同じ性をしているのではないかと思う。
だからもう私に関わることはないだろう。
内心あの男相手に本気で食ってしまおうかと思った事は気の迷いであったと思いたい