今幸せです

「ん.....」

カーテンから溢れる太陽の光にあてられて自然と目が覚めた。
ぼんやりとした頭でもここが自分の家でない事を理解して一気に覚醒していく。
一瞬パニックを起こしそうになったがどうにも私には見覚えのある部屋だった。

「なにが、あ....」

身体を起こし振り返れば私に寄り添う形でトーマスが眠っていた。
そこで理解した。
ここはトーマスの部屋なのだと。
昨日私はトロンさん達に会う為にトーマスの家を訪れていた事を思い出した。

「てか、え?どうして裸なの、トーマスも」

ただ記憶が酷く曖昧であった為、今自分が服を着ていなかったことに驚いて急いで布団を胸元に引き寄せむき出しになっていた身体を隠した。
この状況で何があったか、それが分からぬ程鈍くもないし子供ではない。
昨晩トーマスと身体を重ねた事は間違いないのだろう。
だがそれを覚えていないことは決して良いことではないだろう。

「え、何があ、ひゃあ!!??」

布団の中で何かが私の身体に触れた。
そんな事が出来るのは一人しかいない。
布団を捲るとトーマスが私の腰にしっかりと腕を回して抱き付いていた。

「と、トーマス、お、おおおはよう!」

平然を取り繕うとするも声は上ずって不自然に言葉がどもった。
そんな私をトーマスはからかう気満々の顔で見た。

「なんだよ名前、朝から興奮してんのか?」

トーマスはそのまま私の胸にぬるりと舌を這わせた。
その行動に驚いてトーマスを引き剥がそうとするもトーマス私の腰に強く抱き付いて離れようとしない。

「お前が昨日俺にした事覚えてるのか?」

トーマスはそう言って起き上がった私をまたベッドに押し倒した。

「.......ごめん、あの、何も覚えていなくて」

そう正直に伝えればトーマスはあからさまにため息をついて私の上にのしかかった。
トーマスの態度にいったい何をしてしまったのだろうかと背中に冷たい汗が流れた。

「ミハエルの事襲ってたんだよ」

「.....え?」

トーマスの衝撃的な言葉に思考が完全にストップした。
そんなまさか、え?あり得ない、と思うも昨日の事がまともに思い出せない私にとってその過信は許されない。

トーマスに責めるような目線を向けられたことでそれは私をからかう為の虚偽の言葉ではないのだと理解した。
その自分の失態に焦りで身体の体温が徐々に下がっていくのを自覚した。

「わ、私!と、とととにかくミハエルに謝らなきゃ!!」

弟のように思っていた可愛いミハエルになんてことをしてしまったんだとパニックを起こすも先ずは彼に謝罪をしなければならない、そう考えた。
許してなどもらえないかもしれない。
それでも今私に出来る事はそれしか無いのだ。
トーマスを押し退けて直ぐ様詫びをいれにいこうとベッドから降りた瞬間、トーマスに腕を掴まれてそのまま強引にベッドに引っ張り戻されてしまった。

「お前そのまま行く気か。
ミハエルがひっくり返っちまうぞ」

そう言われて自身が衣類を身につけていないことを思いだし小さく悲鳴をあげた。

「わ、わ、私の服!?どこいった?」

「昨日お前がその辺に脱ぎ散らしたせいで汚れたから洗ってやってるが?」

トーマスの言葉によりみるみる明かされる昨晩の失態に言葉を失ってしまった。

「······ご、ごめん、ありがとう。
·······その、と、取り敢えずトーマスの服を借りられる、かな?」

その私のお願いにトーマスはつまらなさそうな顔をした。

「乾燥までセットしてきてっからもうちょっと待ってろよ。」

トーマスはそう言って私の腰に手を回し胸に顔を埋めた。
その姿はまるでぬいぐるみを抱き締めて眠る子供のように見えた。
トーマスに服を借りられない以上私はこの部屋を出られないし記憶のない時間トーマスにも私が迷惑をかけた事は容易に想像出来たのでそれ以上の抵抗は諦めた。

「·····トーマスも、ごめん、迷惑をかけたのはなんとなく分かるんだけど何も覚えていなくて。
·····トーマスにも何か酷い事しちゃった?」

自身の胸にあるトーマスの頭を優しく撫でながら聞けばトーマスはじろりと私を睨んだ。
正直私に抱き付いたまま上目遣いでこちらを睨むトーマスは母親に甘えている子供のようにしか見えなくて可愛く感じてしまったのだが。
しかしトーマスの言葉にそんな感情は消しとんでしまった。

「俺の服剥いでチンコ舐めて俺の舌でオナニーして自分だけイッて終了しようとしたんだよ」

トーマスが口にしたあまりの出来事に言葉を失ってしまった。
数秒間息をするのすら忘れてしまった。
あり得ないと、嘘であってほしいとは思ってもトーマスは私に嘘等つく人間ではないという事を私は知っている。
全てが事実なのであろう。
だらだらと汗を流す私にトーマスは続ける。

「まぁさすがにそんなの俺が堪えられねぇから勿論その後俺も楽しませてもらった、けど名前は早々にイキまくって寝落ちしたけどな」

胃まで痛くなってきた。
いったい昨日の私はなんだったのか。
そんな自覚はなかったが欲求不満だったのだろうか?
それにしてもやってる事があまりにも酷い。
トーマスから離れてベッドから降りて床に正座した。

「もう、謝るしかないんだけど、すみませんでした!!!」

床に額をつけて土下座した。
いい大人が全裸で土下座している。
あまりにも滑稽な姿だと思うがもう謝るしかないのだ、それくらいしか出来ない。

「バカ、やめろよ!」

そうするとすぐにトーマスが私の肩を掴んで顔を上げさせた。

「そりゃあ結果的に欲求不満のまま終了させられたのはアレだったけどお前の積極的な姿も見られたし、まぁ楽しませてもらった。だからそんなことしてもらわなくていい」

トーマスの私を慰めようとする言葉は更に私の心を抉った。

「それともそんなに気になるなら責任とって昨日の続きするか?」

そう言ってトーマスが私を抱き抱えて膝に座らせた。
お腹に腕を回しうなじに唇を沿わせる。
びくりと反応すれば声を出さずに笑っているのが首筋に当たる息遣いから推測できた。

「相変わらず俺好みの反応だ」

おかしくなりそうな程甘い甘い声色で耳元でそう呟いた後、耳朶に軽く歯を立てられる。
うっかりそのまま身を委ねたくなってしまう身体にカツを入れて後ろを振り返った。

「ごめん!私が悪いのは分かっているのだけれど今は出来ない!その、ミハエルにも先に謝らなきゃいけないし、その、ここにはトーマスの家族もいるし、い、今更なんだけれど·····」

自分で言っていて泣きそうだ。
私の言葉にトーマスはつまらなさそうな顔をした。

「昨日あんだけヤッといて今更だろ。
····まぁ仕方ねぇか。
取り敢えずもう乾いてるだろうしお前の服とってきてやるよ」

トーマスがそう言って私のお腹に回した腕の力を弛めたので膝の上から降りるとトーマスは立ち上げり自分の身なりを整えた。

少し待ってろ、と私に声をかけトーマスは部屋を出ていった。
私は布団で身体にくるみベッド脇に座った。

「(それにしても人の家に裸で一人でいるのは落ち着かない)」

そわそわして部屋を見渡せば本棚にアルバムらしきものがそこあった。
どうしようかと悩んだが勝手に見るのも気が引けると私の中で天使と悪魔が争った。
正直な所凄く気になる。
すぐ側に観音開きタイプの写真立てがあった。
罪悪感を感じつつもこれくらいなら、と言い訳してそれを開いてしまった。

そこには子供の頃のトーマスと家族、そして私の写真が。

「(·······私もここに入れてもらえているんだね)」

そこに自分がいたことに驚きつつもそれが嬉しくてして幼い自分達の写真を手でなでた。

そんな時扉が開いた。

「····お前·····」

「ご、ごめん」

トーマスは私が手に持っているものを見て目を見開いた。
勝手に見たことに怒らせてしまったかもしれないと思いすぐに謝罪の言葉を口にした。

「いや、別に怒ってねぇよ。
名前に見られて困るもんじゃねぇし」

ほら、と洗濯済みの私の服を差し出してくれた。
写真立てをそっと元の位置に戻しそれを受け取り私を急いで身なりを整えた。

「俺これくらいガキの頃から名前の事好きだったんだ」

トーマスがさらりといった言葉に驚いて舌を噛みそうになった。
トーマスの方を見るとまた拗ねたような顔をして私を見る。

「やっぱり気付いてなかったのかよ。
父さんにも兄貴にもミハエルにまで俺の気持ちなんてバレバレだったんだけどな。
俺も隠す気なんてなかったけど」

気付かなかったのか、というよりもトーマスは私の事を姉のように見ていると思っていたのだ。
好かれている自覚は勿論あった。
私がクリスやミハエルと遊んでいるとトーマスは強引にでも入ってきて私にくっついて離れなかったから。
お気に入りのおもちゃを取られたくなくて我が儘を言う可愛い弟のように思っていた。

「名前と会えなくなった時気持ちを伝えられなかったことをずっと後悔したし次に会った時はすぐにでも自分のものにしてやるって気持ちでいっぱいだった」

私達が再会したのは去年の、凌牙君との決勝戦が行われた直後だった。
もっともそれはトロンさんの指示に従い凌牙君に反則負けになるよう仕掛けた直後だった。

トーマスはあの時私にそれを知られた事にショックを受け、お願いだから嫌わないでくれと子供のように泣いてすがってきたのだ。
そんなトーマスに昔の面影が重なり、いけないことだとは理解しつつも私は無条件でトーマスを受け入れたのだ。

泣きじゃくるトーマスは私に何度も好きだと言った。
それが姉弟としてというものではないことは私にも気付けた。
私はその時自分がトーマスに抱いている感情が何なのか分かっていなかった。
それでも目の前で泣きじゃくるトーマスを拒絶することなど頭には浮かぶ筈もなく彼を受け入れ、その日はそのまま彼を自宅へ連れ帰った。

家に着いてからもずっとトーマスは私から離れず何度も好きだ、愛していると口にした。
そんなトーマスを抱きしめ頭を撫でてやれば泣き疲れたのかトーマスはそのまま眠ってしまった。

その日からトーマスは時間さえ出来れば私の元にやって来た。
その度に愛の言葉を囁いては頬にキスをして悲しそうに笑った。
その表情から私の返事を今は欲していないのだという事を感じ取った私はただ黙っていた。
会う度に同年代の男の子よりも細身に見える彼の身体が心配になった。
勿論心の方も。
彼が今どんな理由があって何をしているのは知らない、聞けなかった。
ただただ彼の無事を祈ることしか出来ない無力な人間だった。

それから1年以上経ったある日、私に会いにきたトーマスは泣きじゃくっていた子供のような顔ではなく、全てが解決したような、すっきりとし晴れ晴れとした表情で私の元に現れた。

「俺は本当に酷い事もしてきたしそれは償わなければいけないと思ってる。
でもまた家族が、あの頃と同じように揃って暮らせるようになった。
だから俺達はこれから俺達に出来る形で贖罪していこうと思っている」

これまでトーマスやクリス達が行っていた事を聞かされた。
その告白は辛い内容だった。
私には何が悪くてどうするのが正しかったかなんて分からない。
だから黙ってトーマスの話を聞いた。
辛い顔をしているように見えた、それでもトーマスの表情は再会した頃と比べるとどこか柔らかく見えた。
そして自分が知らない間に随分と大人になったのだと知った。
なんだか寂しくもあったし支えてあげられなかった自分が悔しくもあった。

「そんな俺が、今の幸せ以上のものを望むのは贅沢な事なのかもしれない。
それでも俺は、····名前を諦めきれない」

私を見つめる目に愛しさが溢れていて胸がぎゅっと締め付けられた。
きっと私だってとっくにトーマスを愛していたのだ。
何も出来ない自身を恨めしく思う程に。

「名前、好きだ、ずっとお前だけだった。
俺の側にこれからもいてくれないか?」

トーマスは私の手をとって薬指の根本にキスをした。
それが嬉しくて堪らなくなって力いっぱいトーマスに抱きつけばトーマスも私を優しく抱きとめた。

「私も一緒にいたい、大好きよトーマス」

トーマスの告白に対して自身の気持ちを真っ直ぐに伝え顔を上げ目を合わせればどちらからともなく唇を合わせた。
待ち焦がれたように何度も何度も、角度を変えて。




「あの時名前を諦めるか凄く悩んだんだ、だけど俺には無理だった。
多分どうなっていたって名前の事だけは諦めきれなかったんだと思う。
今はあの時名前の事諦めなくて良かったって心の底から思ってる」

穏やかに笑うトーマスに胸がときめいた。
何も出来ない私をこんなに愛してくれている、なんて幸福な事だろう。

「ありがとう、私凄く幸せだよ、トーマス」

細身だけれどすっかり大人の男に成長したトーマスを抱き締める。
私の身体に触れるトーマスの手がこんなに心地よく感じるのは私がトーマスを愛しているが故だろう。
トーマスも同じように感じてくれている事を願った。


「あ、そうだ。
ねぇ、あれってアルバム?よかったら見せてくれない?」

先程気になっていたアルバムの中身が気になりトーマスにそうお願いするとトーマスは気まずそうに私から目を反らし言葉に詰まった。

「あ、嫌なら全然いいよ!無理強いしたくないからね」

すぐにフォローの言葉を口にすればトーマスはなんとも言えない顔をした。

「········ぜってぇひかねぇってんなら見ても別にいいぜ」

トーマスは中身については触れずに本棚からそれを取り出し私に手渡した。
私がひくものとはなんだろう、と考えながらアルバムを開いた。
そこに写っていたのは幼い頃のトーマスと私の姿だった。

「うわー懐かしいね!」

幼いトーマスがかわいくてページを順番にめくっていく。
それはただの幼少期のアルバムにすぎなかった。
だからトーマスの危惧していた言葉の意味が最初は分からなかった。
それに気付いたのはページを何枚かめくった後だった。

「·····わ、私ばっかり、だね?」

そのアルバムのページの殆どがほぼ私で埋め尽くされていた。
誰かと写っているものもあったがそれは不自然にトーマスだけでそれ以外がほぼほぼ私の写真だった。
後半からは再会してからのもので撮った記憶すらないものだからトーマスが無断で撮ったのだと推測されるものだった。

「········トーマス、その、気持ちは、う、嬉しい?けど撮る時は言ってね」

だらしなく口を半開きにしている自分の寝姿などを見て恥ずかしく思ってそう言えばトーマスは更に気まずい表情で、はい、と返事をした。

「で、でも仕方なかったんだよ!!
トロンの復讐が終わるまで名前に手なんて出せねぇし、それでも名前に会えば抱きたくて仕方なくてなのに名前は無防備に俺の事受け入れるから、自分で処理しねぇと襲っちまいそうで気が狂いそうだったんだよ!!」

なんというか私の写真をナニに使っていたという事を必死に熱弁されて顔がひきつるのを我慢出来なかった。
仕方ない、仕方がないのだ。
彼はあの時16歳、多感な年頃だ。
他所で女の子を引っ掛けるより余程健全ではないか、自分の中でそう結論付けた。

「あ、うん、わかったから、大丈夫だから、ね?」

まだページは残っていたがアルバムをそっと閉じてそう言った。
するとトーマスは不安そうに私とアルバムを交互に見た。

「········はい、返すね」

アルバムを差し出せばトーマスはあからさまにほっとした顔をした後笑顔でそれを受け取った。

「没収されるとでも思ったの?」

私の問いに頷いた後、元あった場所にそれを大事にしまった。
その本棚には同じ装丁のアルバムがまだ3冊ある。
もしや、と考えたが私にその中身を確認する勇気はなかった。

「私が殆ど自分しか写っていないアルバムを持っていたらなんていうか、うん、凄く自分大好き、みたいになるからね」

「俺は名前が俺の載った雑誌とか新聞全部買ってくれてんの嬉しかったけどな」

トーマスは上機嫌だ。
まぁなんていうか私も人の事を言えないのかもしれない、でも私のは世間に出回っているものだからトーマスのそれとはまた違うと思うのだが。

「あ、でももし良かったらトーマスと一緒に写ってる写真はコピーとかでもいいから欲しいな」

そう言えば次会う時に用意しといてやると嬉々としてトーマスが言った。

「あー、でもあれだな、折角だからさ、一回撮ってみたいんだよな!名前とのハメ撮「アルバム没収しようか?」······すみません、嘘です」

調子に乗ったトーマスが下品な事を口にしようとしたのですかさずそれを阻止すればすぐに謝罪の言葉を口にした。
昔のように明るくなったのは大変喜ばしいがこういうところはいただけない。

それでもこんな軽口をトーマスが口に出来るようになった事にも幸福を感じられる。



「······さて、そろそろミハエルに土下座しに行かなきゃね」

ふーっと1つ大きく深呼吸して気合いを入れ直す。

「いや、別にそこまでする必要ないと思うけど」

トーマスが呑気にそう言ったことで何かもやもやしたものが引っ掛かった。

「······ねぇ、私ミハエルに、その、一体どこまで、お、襲ったの?」

口にしていて胃が痛くなった。
だけれどきちんと謝罪する為にも現状を把握することは必要だと思い改めてトーマスに昨日私が行った罪について訊ねた。

「ああ、頬っぺたにキスしたんだよ」

トーマスが不機嫌そうにそう言ってそっぽを向いた。
そう言ったっきりトーマスは言葉を続けない。
まさか、と思いその疑問をトーマスに投げかける。

「······えっと、も、もしかして、それだけ?」

身構えていた私にトーマスは大きく頷いた。

「······何それーー!!??」

トーマスが襲うだなんて表現したから私はもっとえげつない事を想像してしまっていた。
頬へのキスなど子供の頃からトーマスだけではなくトーマスの家族には当たり前のようにしていたしトーマスが仕事で遅れて私が一人でトーマスの家に訪れた際に自然な流れでトロンは勿論クリスともミハエルとも再会を喜んで挨拶として、親愛を込めてキスをしていたのだ。

「そんなのクリスともトロンさんとも挨拶でしてるじゃない!」

そう言えばトーマスの表情が消えた。
その顔はみるみる表情を変え私に鋭い眼差しを向けてくる。

「ふっざけんな!お前がするのは俺だけでいいんだよ!!」

「え?いや、だってトーマスの家族は私にとっても家族みたいなものだし」

怒るトーマスにそう返せばまたギロリと睨まれる。

「そんなの関係ねぇんだよ!お前の唇も身体も全部俺のもんだから俺以外の奴に触らせんな!!」

全力で恥ずかしい事を口にするトーマスになんと返せばいいか分からなくなって言葉につまった。
トーマスはイライラとした表情で私の頬っぺたをハンカチでごしごしと拭いた。
そんなトーマスに私は抵抗することも反論の言葉を口にすることも諦めた。

「·····分かった。
その、ごめん、ね?」

早々にトーマスを怒らせたことに謝罪を口にすれば痛いくらい腰を強く抱かれ顔中にキスをされた。
なんというか惚れた弱みとでも言うのだろうか?
こんな彼も可愛く思えてしまうのだ、私は。

「ねぇ、トーマス、取り敢えずトロンさん達に改めてきちんと挨拶したいからさ、取り敢えず行こうよ」

そう伝えれば渋々ながらも私から離れてため息をついた。

「·····今日この後名前の家に行っていいか?」

不機嫌そうにトーマスがそう訊ねたので私は勿論、と2つ返事で了承した。

「昨日の続きするなら許してやる」

昨日の続き、その意味に気付けないほど鈍くもないし子供でもない。
私だってトーマスとするのは決して嫌ではない、だがおそらく今回は凄く長くなるだろう。

今までの経験からして、そう考え喉がひゅっと鳴ったがトーマスの言葉に覚悟を決め二つ返事でそれを了承した。
すると途端にトーマスは笑顔になり、早く行こうと私の手を握った。

きっと今夜は眠れなくなるだろう。
挨拶を終え、トーマスの家を出た後途中のコンビニで栄養ドリンクを買いに立ち寄った際にトーマスが避妊具を二箱買っていたのを見て私は気が遠くなり眩暈さえ起こしかけた。