他人は知っていた

「IVさんってなんか危ない性癖もってそうですよね」

そう言われたのは酒の入った席だった。
俺ではない、相手にだ。
仕事の打ち上げの場だった。
そんなものに参加などしたくはないのだがプロとして活動している以上その活動を円滑に続ける為にも最低限そういったものにも顔を出さねばいけない時もあった。
今日はまさにそれであった。

酔っぱらったスポンサーの男はへらへらと笑いながらそう言った。
俺は貼り付けた笑顔でやんわりとそれを否定しながら酔いを覚ませという念を込めその男に水の入ったグラスを手渡した。

男がグラスの水を飲み干した頃その男の付き人のような部下が現れ俺に頭を下げてその男を下がらせた。

俺は解放されて助かったと内心ため息をついた。








「ただいま」

「おかえりなさい、トーマス」

それから一時間程して俺はようやく名前の家に帰る事が出来た。
デュエルとは違う嫌な怠さも名前の顔を見れば一瞬で吹き飛んだ。

「あーーだるかった」

力いっぱい名前を抱きしめ肩に顔を埋め肺いっぱいに名前の匂いを吸い込んだ。
名前は俺のその行動が恥ずかしかったようで俺の頭を軽くはたいた。

「打ち上げだったからお腹は減ってないよね?
お風呂すぐ入れるから、早めに入っておいで」

名前はそう言って俺を引き剥がした。
恥ずかしがりやな名前も可愛く思うがもう少し甘えさせてくれてもいいのに、と少し不満を抱いた。

「一緒に入りたい」

頬にキスをしてそう伝えるも名前はもう入ったからダメ、と俺のおれだりを拒んだ。

なんだか面白くない。

「名前が入らないなら俺も入らない」

「ええ····」

名前は俺のわがままに眉間に皺を寄せた。
そして少し悩んだ後しょうがない、とため息を一つ吐いて一緒に風呂に入る事を了承した。






「疲れてるみたいだし一人でゆっくり入ってほしかったのに」

俺に抱きしめられた名前はそう言った。

「俺はこの方が疲れがとれるんだよ」

この言葉に嘘はない。
名前の柔らかい身体に触れていれば癒される。
視界に入るふくよかな胸やすらりと綺麗な足は目の保養にもなる。
そこにそろりと手を這わせれば名前に手の甲をつねられた。

「お風呂でそういうことしたら危ないでしょう」

「ちょっとくらいいいじゃねぇか···」

つれない、そう不満を溢せば困ったように名前は眉尻を下げる。

「····お風呂上がってからなら、いいから」

名前は俺に本当に甘い。
俺が少し不満な姿勢を見せればなんやかんやと折れてくれる。
それは子供の頃から変わらない。
この時ほど自分が数年遅く生まれた事に感謝することはない。

「なら上がるから俺の身体洗ってくれよ」

「·····」

そう言って名前を引っ張り上げて浴槽を出た。
俺のにやにやとした表情にじとりと俺に視線を向ける。

「····普通に洗うだけだからね」

「なんだよ、サービスしてくれたって良いだろ」

胸を軽く指でつつけば名前は再び俺を睨んだ。

「文句があるなら自分でやって」

「疲れてるから癒してほしかっただけなんだけどな」

「·····そこどうにかしてから言ってください」

名前にそう言われて俺のソレを見ればすっかり元気になっていた。
まぁ当然か、と思った。

「····ここでトーマスが望んでることするのとお風呂から出てから、その、ベッドで最後までするのどっちがいい?」

「ここでシた後ベッドで2回戦が良いが」

どっちかしか駄目、そう言って名前は顔を真っ赤にした。
どうやら今日はこれ以上は折れてくれそうにない。
あまりやり過ぎると機嫌を損ねてどちらもさせてもらえなくなるかもしれない。

「分かったよ、普通にでいいから洗ってくれよ」

「···はいはい、分かりました」

名前はボディーソープをしっかりと泡立てて俺の身体を洗っていく。
少し惜しいがこれでも十分気持ちよかった。

時々背中に触れる名前の先端にこの後の事を想像して興奮は増していった。
それがゆえ萎える事のない俺のソレを再び視界に入れた名前は恥ずかしそうにソコから目を逸らした。

何度も見ているし舐めているにも関わらず未だこういった反応を見せる名前はいつまで経っても飽きない。

「ちょっと、と、トー、マス!」

名前が無意識で自身を擦り始めていた俺を咎めた事で俺も我に返った。
余程溜まっているようだと自分の行動に呆れた。

「悪い、風呂出たらいっぱい気持ちよくしてやるからな」

「····昔は本当に可愛かったのにね」

俺の軽口に名前はあきれ顔でシャワーをかけ泡を流していく。
名前自身にも付いた泡がえろいなと考えていたのでやはり俺の勃起は収まりなかった。

「別に可愛くなくてもいい」

そう言って名前の身体を抱きしめ胸に顔を埋めた。
名前は身動ぎをしながらも諦めたように俺の背中にシャワーをあてて背中の泡を流していく。

排水溝に流れていく泡が全てなくなった頃名前はシャワーを止めた。

「はい、終わったから。
早く乾かさないと風邪ひいちゃうから上がろ」

名前は俺の背中をとんとんと叩いてそう言った。

「ん···早く名前の中に入りたいしな」

「···もう!いいから出るの!」

名前は怒りながら俺を引っ張って浴室から出た。
自身の身体にタオルを巻き付けると俺の身体を先に拭いていく。

普段はここまでしてもらうことはないのだが今日はなんとなく甘えたい気分だったので大人しく身を委ねた。

「ほら、服着ないと」

「いらねぇよ、どうせすぐ脱ぐんだから」

名前が差し出してきた清潔な着替えをそのまま脱衣場に置いて俺は名前を連れてへと寝室へと足を進めた。

「んー、折角だからなんか普段と違うことしたい気分なんだよなぁ」

「え····なに?」

名前はなんとも言えない表情で俺を見つめる。
俺は勿論笑っている名前が一番好きなのだがこんな顔もまた大好きだ。

「そうだ、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれよ」

「ええ····トーマスがお兄ちゃんとか、ちょっと無理があるんだけど」

まぁそれはそうだろう、名前はずっと俺の姉のような存在だったのだから。
名前の言い分はわかる。
だからこそロールプレイングとして楽しみたいのだ。

「たまにはそういうのもいいだろ?
俺ちゃんとさっき我慢したんだから、な?」

あざとく首をかしげて名前の顔を覗きこんだ。
名前はこんな分かりやすい俺の演技に簡単に騙される。
いや、騙されていることに気付いている。
それでも幼い頃の可愛い俺の姿を思い出して強く拒めないのだ。
俺はそれを利用している。

「····分かった、から」

今日も名前は折れた。
今夜は楽しい夜になりそうだと俺はにやけるのが抑えられなかった。
それを見て名前はまたため息をついた。

「トーマスはいつから危ない性癖持っちゃったんだろうね」

数時間前スポンサーの男に言われたのと同じ言葉を再び名前に言われた。

だがなぜか今度はそれにイラつくことはなかった。

「いつからかは分からねぇけど何年も好きな女を想って我慢続けてたからなぁ」

多少はしゃいでも仕方ないよな?そう伝えれば名前は気恥ずかしいそうに目を逸らした。

責めているつもりなど勿論ない。
ガキの俺は名前に想いを伝える勇気なんてなかったし全てが終わるまで告白をしない事も自分で決めていた。

だから今こうしていることももう少しで結婚出来る事も幸せでしかない。


「まぁあいつの言ってた事が当たってたってのは癪だがな」

「え、何?」

俺の一人言に疑問符を浮かべる名前になんでもないと言ってそのままベッドに押し倒した。


「約束通りベッドまで我慢したんだからしっかり付き合ってもらうからな」


俺の言葉に名前は顔を真っ赤に染めて首を縦に振った