·おねだり
「あ、待って、脱がないで」
まさに今ベッドで彼女と夜の営みを始めようとした時彼女から待ったがかかる。
俺が仕事の都合で暫く会えなくなる為俺の充電をしておきたいとなんとも可愛いおねだりをされた。
にも関わらず待ったがかかった。
その理由は何かと訊ねれば彼女は照れる様子もなくこう答える。
「暫く会えないからトーマスが今着てるシャツ借してほしいの。
一人でする時そのシャツの匂いかぎながら今日のえっち思い出しながらするから」
ようは自慰用のおかずとして俺のシャツを使いたいから俺の匂いがついたシャツが欲しいというのだ。
いつもいつも名前は俺に対して欲望を隠そうとしない。
正直な所それが嬉しい。
しかし何故俺はそんな可愛い彼女を置いて泊まり掛けの仕事になど行かねばならないのだろう。
一瞬で熱くなった下腹部が彼女を強く求めている。
「だから今日は沢山しようね」
言っていることはかなり過激な筈なのに嬉しそうに無邪気に笑う彼女が異様に可愛い。
俺も随分歪んでしまった。
·エレベーターに閉じ込められる
非常用ボタンを押すもうんともすんとも言わない。
どうしようかと、本気で参った。
ついでに言うなら俺は今尿意を我慢している。
「トーマス、大丈夫?」
冷や汗を流す俺に名前が訊ねる。
エレベーターに乗る前トイレに行きたいと言っていたのでそれを名前も知っている。
「我慢できなくなったら言って。
私がなんとかしてあげるから」
「は?」
名前は笑顔で恐ろしい事を口にする。
「口に出していいよ?」
「ば、バカ言ってんな!」
本当になんて事を言うのだろうか。
俺にそんな趣味はない、ない筈なんだ。
「大丈夫、トーマスのなら大丈夫だから····あ····」
「どうした?」
なのにいつもいつも俺は名前の一言一言に振り回されてしまう。
「····想像したら濡れちゃった」
「ぶっ!?は、はぁ?嘘だろ!?」
とんでもない事を言う名前に思わず漏らしそうになったとはとても言えない。
だがこれが冗談ではないのが名前だ。
ここで終わらない。
「ほんと、触って確かめてみる?」
「ば、ばか!カメラ付いてるんだぞ」
俺がそう言うと名前がチラリとカメラを確認した。
「想像したらもっと濡れちゃったから出られたらホテル行きたい」
「····ああ」
名前と付き合ってからというもの、俺は今まで経験したことのないようなアブノーマルな行為を経験した。
だからこそどんなに特殊な行為でも容易に想像出来るようになってしまったしそれにより興奮すら出来るようになってしまったのだ。
だからこそもう誰でもいいから早くこの場を脱出させてくれ、そう強く願った。
俺も早くいきたいのだ。
·おさんぽ
今日はお互いに仕事が同じタイミングで終わったこともあり急遽二人で食事をとることになった。
俺の現場と名前の職場が近かった事もあり取り敢えず会ってから行き先を決める事になった。
「トーマス、待たせてごめんね」
5分程前に先に着いていた俺に名前は詫びの言葉を口にする。
「謝られる程待っていないからいい」
こんなやり取りがいかにも恋人同士という感じがしてなんだか嬉しく思えて自然に笑顔になった。
「何か食べたいものがあるか?」
「あるにはあるんだけどね、そこがタクシーを使うまでもない場所で電車でならすぐの場所なの」
でも····と悩む素振りを見せる名前にどうしたのかと問うととんでもない返事が返ってきた。
「最近女性の痴漢が出るらしくてね、だからトーマスが狙われたら嫌だなぁって」
「は?」
理解に苦しむが電車で男が痴漢被害にあっている事件が起こっているらしい。
なんともはた迷惑な話だがでも俺はその事実よりも名前が俺を他の女に触られたくないと思っていてくれていることに喜びを感じてしまった。
「だからね、少し歩くけどお散歩がてら歩いて行きませんか?
勿論トーマスが疲れてたら他の近くのお店にしてもいいしタクシー使うよ」
そう言って俺の手を握る名前がとてつもなく可愛くて今すぐにでも抱きしめてしまいたくなった。
「いや、なら歩くか」
名前の提案を呑めばなんとも嬉しそうに笑って頷いた。
本当に今日会えて良かったと心から思えた。
「····なぁ、今日泊まってもいいか?」
普段はわざわざ確認するような事はしないのだが今日は敢えて言いたくなった。
俺の言葉の意図にすぐに察した名前は勿論、と首を縦に振り俺の腕に両腕で抱き付いた。
「お腹すいたね」
しっかり食べて体力つけなきゃ、そう意気込む名前が本当に可愛かった。
もっとも名前の言うお腹がすいたには二つの意味が含まれている事を俺は理解しているのだが、それすらも愛しいのだ。