二人の休日

待てない

「トーマスはオナニーどれくらいするの?」

2週間ぶりに会った恋人に家についておかえりなさい、ただいまのやり取りをした直後にそう訊ねられた。
名前の突拍子もない言葉には慣れていたつもりだったがやはり名前は俺の想像の遥か上を行く女だった。

「·····と、時と場合に、よる····」

適当に流してしまえば名前は自分から聞いてきたわりにはそっかーっとどこか気のない返事をする。
というより心ここにあらずといった具合だろうか。

取り敢えずブーツを脱ぐ為玄関に腰をかければ後ろから名前に抱き着かれた。
寂しかったのだろうか。
今週はまともに連絡も取れずに今日ここに来たのもほんの一時間前に明日の仕事の予定がずれたおかげだ。
30分前に今から行っていいかと確認をとれば名前は少し妙なテンションで勿論と答えた。

寂しくて俺の事でも考えていたのかもしれない。
可愛い恋人をうんと甘やかそうと決めたすぐあと俺はその可愛い恋人に聞かされた言葉に思考を停止させられた。

「私ね、今日してたの、30分くらい前」

ゆっくりと振り向けばどこか虚ろな目をした名前と視線がぶつかる。

「もうちょっとでイきそうだったんだけどね、トーマスが来るって言うから我慢したの」

名前はそう言ってチュッと音を鳴らしてキスをした。

「もうぐちょぐちょでパンツ気持ち悪いからパンツ脱いでいい?」

俺のモノは当然のように硬くなっていて久しぶりに会って感情が爆発寸前だった俺達は玄関上がってすぐだというのにそんなことお構い無しにでその場でセックスした。



見たい

「私トーマスが一人でしてるとこ見たい」

つい先程獣のようなセックスを終え二人で風呂に入ると猫のように甘えてくっついてきた名前が可愛くて癒されていたらまたしても突拍子のない事をお願いされた。

「何を、····聞くまでもないよな····」

とんでも無いことを言う名前にも若干慣れてきた気がする。
名前と付き合う上でそれは重要な事だ。

「トーマスと再会した時は私が寝てる時にオナニーしてたから私ちゃんと見てないから見たいの」

「やめろ、頼むから、その時の事は忘れてくれ·····」

誘い文句のような言葉を貰ったとは言え酒で自我がまともに持てていない名前をホテルに連れ込んで意識のない状態にも関わらず服を脱がせ名前の性器を舐めて自慰していただなんてどう考えてもアウトだ。

あの頃の自分が如何に狂っていたのかということは重々把握している。
寧ろ記憶がはっきりと残っているのが辛いくらいだ。

「私は気にしてないよ、そんな事より今はトーマスのオナニーの方が気になるもの」

期待に満ちた目で名前が此方を見つめる。
どう考えてもそんな狂った頼み事等毅然とした態度で断ればいい話なのだ。
それなのにそれが出来ないのは先程名前が口にした俺の問題行動に対する罪悪感のせいだろう。
だかあの日がなければ今こうして名前といられなかったのだからなんとも皮肉な話だ。

「あの時みたいに舐める?」

名前は諦めるつもりはないようだ。
何をしたって名前に勝てる気がまるでしない俺は覚悟を決めた。

「········これっきり、本当にこれっきりだからな····」

何故だろうか、泣きそうになった。
自分がこんなにも逆らえないことに。
そしてこれからする事に少し興奮してしまっている事に。

「ありがとう!トーマスだいすき!」

名前は首に抱き付いて俺にキスをした。
わからない、なぜこのまま2回戦ではいけないのかが。

なぜ俺は恋人の前で自慰をしなければいけないのか。

そんな事を思いつつも目の前に露にされた名前のソコから先程洗い流したにもかかわらずまたとろりとした液体が滲み出ているのを見た俺は容易にイケそうだと思ってしまった。
そして案の定俺はソコを存分に味わいつくし無事再び達っすることが出来た。
それを見てありがとうと言われた俺は顔をひきつらせた。



ごちそうさまでした

「レバ刺し無くなったのが本当に辛い」

「桜ユッケでも頼むか?」

もぐもぐと肉を咀嚼しながら憂いを帯びた目でそう嘆く名前にそう提案すれば首を縦に振った。

名前に晩飯は何が食べたいかと聞けば焼肉が食べたいと言ったので俺達は今焼肉屋にいる。

俺は生肉は食べられないが名前は好きらしい。
なんだか名前らしいと思ってしまった。

「トーマスはご飯も食べた方がいいよ。
もう少しお肉付いてていいと思う···うん」

以前も俺が痩せた事を気にしていた名前がそう言った。
名前は今まであまり体型を気にした事はなかったらしいが俺と付き合い始めてから認識が変わったらしい。
付き合い始めの頃も自身の体重が増えた事をかなり気にしていた。
俺の事はともかくとしても名前が多少太った事に対して俺自身がなんとも思っていなかったので気にする必要などないのだが俺にだけそう言った感情を抱くというのは自分が特別な存在だと言われているようでなんだか嬉しい。

「名前も好きなだけ食べろよ」

店員が運んできた馬肉を名前の前に差し出せば名前は目を輝かせた。
満面の笑顔でそれを食べている。
なんだか餌付けをしているような気分だ。

「壺漬けカルビもう一回食べたい。
あとハラミとたまごスープ」

名前がリクエストしたものと自分も食べたいもの数点とご飯を追加オーダーする。
名前は何やらもの言いたげにこちらを伺っている。

「どうしたんだ?」

「····お酒、飲んでも、いい?」

外で一人で飲む事を禁じてから名前は律儀にそれを守っていた。
いつも酒を飲む時は俺に許可を入れてから注文するようにしている。
明日は仕事な訳だが少し早い時間に出るのであれば名前の家に泊まる事が可能だ。

「明日早い時間に起きなければいけないが今晩泊まってもいいか?」

信用していないわけではない、だが酔った名前を1人にするのはほんの少し不安だった。

「勿論いいよ!」

名前は二つ返事でそう答えて嬉々として店員にアルコールを注文した。
現金な奴だと笑ってしまう。
しかし次に名前が言った言葉に俺は飲んでいた烏龍茶を吹き出しそうになる。

「トーマス泊まれるならもう一回戦出来るね」

気管に入った烏龍茶でむせる俺を見て名前はけらけらと笑う。

「沢山食べて体力つけてね」

ビール片手に上機嫌にそう言った名前。
この時実は泊まれなくてもホテルに連れ込めないかと模索していた事を聞かされたのは本日三度目の射精を終えた後の事だった。