愛故に変化する

「暑い·····」

夜中寝苦しさに目を覚ました。
もう涼しくなったというのにどうしたものだろうと寝ぼけた頭で考える。
と言ってもその原因はすぐに理解した。

「····名前····帰ってたのか····」

昨晩泊まりの仕事に行った俺はどうにも泊まったホテルで寝付けなかった。
名前が仕事が終わる数時間前に帰るから夜家に言っていいかと訊ねれば、なら先に部屋にいてくれて構わないと言われその言葉に甘えることにした。
眠っていない事を話せば自分が帰るまで寝ていてもらって構わないとも。

最近では自分の家のベッドよりも寝心地の良さを感じるようになった名前の家のベッドに入ればすぐに意識が遠退いた。
名前がベッドに入ったことに気付かない程に熟睡していたようだ。

時計を確認すればすでに深夜2時を回っていた。
やってしまったと
名前は俺にぴったりとくっついて眠っている。
付き合い始めた頃はこんなことはあり得なかった。

出会いが出会いだったのもあるが名前の性質もあって身体は人一倍重ねた。
でも眠る時俺の邪魔にならないように名前は俺から間隔を開けて眠っていた。
そんな名前の背中を見てなんだか寂しくなる俺は後ろから名前を抱き締めた。
そうすればほんの少し名前は身体を強ばらせたがそのまま振り払うこともせずに俺に抱かれていた。

可愛くて堪らなくてついつい強く抱き締めてしまっていたからきっと名前は起きてしまっていたと思う。
そうしているうちに俺の意識が飛ぶ寸前名前が自身にまとわりついた俺の手を握ったのが嬉しくて仕方なかった。

だが今はそんなレベルではない。
名前自らこうして俺に寄り添って眠っている。

「···可愛い」

眠っている名前の頭を撫でた。
普段とは違う幼い顔をしている名前が本当に可愛かったのだ。
そのまま額に唇を押し付けた。
軽くしたつもりだったのだが名前を起こしてしまったらしくゆっくりと目を開けた。

「悪い、起こすつもりはなかっ、」

名前は俺の顔を見てくしゃりと笑った。
俺はその笑顔に心臓を撃ち抜かれてしまう程の衝撃を受けた。
名前はけして無表情な方ではない。
寧ろ普段から比較的にこやかだ。
怒った顔に至っては殆んど、いや、見たことがないかもしれない。

それにも関わらずなぜそんなにも衝撃を受けたのか、それはきっと今の名前の状態だろう。
名前はまた目を閉じて眠ってしまった。
先程目は開けたがそれは起きたとは言えない状態だったとは言えない程度の覚醒だっただろう。
それでも俺を認識して、半分無意識状態で笑ったのだ。
それがどうしようもなく嬉しかった。

いつもは俺の方が余裕がないこともあって普段からどこか子供扱いを受けている。
それはけして馬鹿にされているわけではないし名前相手になら不快ではなき。
だがなんとなく情けない気もする。

そんな名前は今安心しきった顔で眠っていて。
俺を見て笑った顔はいつもより幼く見えた。
俺は別に名前の外見に惚れ込んでいたわけではない。
それでも今はこんなに可愛い女が他にいるだろうか、なんて考える程だ。

「名前」

その安心しきった寝顔をいつまでも見ていたい。
だがそれと同時に自分の目を見て自分の名を呼んでほしい。
そうも考えるのだ。

その想いを押さえきれない、我慢の効かない俺は名前の唇を指で撫でた。
キスがしたい。
触れるだけのキスも、ねっとりと中を味わうようなキスも、息も出来ないような激しいキスも、とにかく名前に触れていたい、そう強く願った。

「···トーマス?」

それが通じたのか名前が目を開ける。
まだ眠いらしく名前は目を擦りながら小さくあくびをした。

「名前、····気付いた、のか?」

そんな筈はないと思いながらもタイミングが良すぎる目覚めるに期待してそう訊ねる。
が、そこで俺は現実を知る。

「腕···ちょっと痛い···」

寝ぼけ眼の名前にそう言われて気がついた。
俺が名前の二の腕を爪を食い込ませる程強く握ってしまっていたことに。
慌てて手を離せばうっすらと赤くなっていてほんの少しだが爪が食い込んでいた所に血が滲んでいた。

「っ、わ、悪い!」

それに気付いてすぐに謝罪すれば名前は大丈夫だよと言って優しく笑う。
その笑顔から名前が本当になんとも思っていない事は理解した。

だが一時的にとはいえ名前に傷をつけてしまったことにショックを受けた。
俺はそれほどまでに名前を求めていたのだろうか。
だとしても名前を傷付けていい理由になんてならない。

「ふふっ···どうしたの?」

名前は俺を優しく抱きしめて背中を擦った。
またいつもと同じになってしまった。
俺はいつもと同じくただのガキに成り下がってしまったのだ。

「私のこと求めてくれてたんでしょう?」

名前の言葉に心臓が大きく鳴った。
名前の察しの良さは心臓に悪い。
ぴったりとくっついている胸からそれが名前に伝わったのか名前はクスクスと笑っている。
だがそれはけして俺を馬鹿にしている笑いではない、だからこそ恥ずかしさが溢れていく。

「私はね、いつだってトーマスが求めてくれたら嬉しい。
だから遠慮なんてしなくていいんだよ」

俺は何も言っていないのに名前は俺の気持ちを察してしまう。
これは女特有の勘というものなのだろうか?
俺はこんなにも名前が好きで堪らないのに名前が俺の事を察する程に名前の気持ちに気付けない。
それが悔しくて堪らない。

その悔しさを誤魔化す為にキスをすれば名前はそれを受け止めた。
俺が舌を入れると当たり前のように絡ませる。
俺はもうキスだけで身体の中心に熱を持ってしまう。

そんな時だった、名前が待ったをかけるように俺の胸を押したのは。


「ごめんね、····ちょっとお手洗いだけ済ませさせて?」

名前少しだけ恥じらいを見せながら俺にそう言った。
俺はそれを聞いてなんだか妙な感覚を覚えた。
そんな趣味は俺にはなかった筈なのに、どうにも最近の俺はおかしくなってしまっている。

「···トーマス、悪いこと考えてる?」

そんな俺の思考はやはり名前にバレているようで意地の悪い笑顔を向けられた。
俺はばつが悪くなって目を逸らす。
そして名前から返ってきた予想外の言葉に驚くことになる。


「あのね、トーマスにだったら見せてもいいよ?」

「·····な、な、」

名前はにこやかな表情で続ける。

「でもここじゃ後始末が大変だから、お風呂でもいい?」

俺は今どんな顔をしているのだろうか。
少なくともファンには見せられない顔をしていることだけは確かだ。

「行こっか、トーマス」

起き上がった名前にそう声をかけられた俺は気付けば顔を縦に振っていた。
やはり俺は心底欲望に弱いようだ。


脱衣場に移動して名前は俺の服を脱がせ始める。
俺はされるがままだった。
俺の服を全て脱がせ終えると名前は自身を服を脱ぎ始めた。
下着まで全て脱ぎ終えそれを洗濯機に入れると名前は俺の手を引いて浴室内に入る。


「···こんなことするの、初めてだからちょっと恥ずかしいね」


名前の言葉に俺のモノはもうパンパンに膨れ上がってしまった。
経験豊富な名前の初めてという言葉にどうしようもない優越感を感じ興奮してしまったのだ。

俺は堪らなくなって名前を抱きしめる。


「トーマスがしてるのも、また見せてね?」

それはとんでもないお願いだった。
でも名前にならいいかと思ってしまうのだからやはり俺はおかしくなっているのだ。


きっと俺は今日の事を一生忘れないだろうし何度もソレを使うことになるだろう。
察しがあまりよくない俺ですらそれを理解出来た。