「···だめね、やっぱり動かない」
名前はエアコンのリモコンを何度か操作した後そう言ってリモコンを元の位置に戻した。
そしてベランダに続くガラス戸を開けた。
名前の部屋はわりと高層階にあるが今日は風が殆どないらしく窓を開けた程度では室内の温度は殆ど変化がなかった。
俺より体温の高い名前の首筋にはぱっと見で分かるほど汗が伝っている。
仕事終わりでストッキングもはいている、ブラウスもスカートも見るからに通気性は悪そうだ。
きっと見えない部分はもっと汗をかいているのだろう。
「トーマス今日は帰る?」
名前はブラウスのボタンを2つ外して俺にそう訊ねた。
そしてスカートの中に手を入れ今度はストッキング脱ぎ捨てる。
それを見ていた俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「大丈夫?トーマス」
頭が沸騰しそうな程なにか熱を持っていた俺は名前の声で我に帰る。
名前は返事をしない俺の顔の前で手を振った。
「もしかして熱中症っぽくなってる?大丈夫?」
俺のすぐ前まで来ていた名前は更にスカートを脱いでいた。
いつもより外されたブラウスのボタン、そのブラウスの裾からチラリの覗く淡いブルーの下着、すらりと長く適度に肉付きの良い白い脚。
「ほら、お水飲んだ方がいいよ」
髪が汗ばんだ額や首筋にまとわりついて、いつもより赤く染まった頬。
少し充血した目に上気した頬。
それら全てが俺を誘っているようだ。
「ほら、気持ちいい?」
水で濡らしたタオルはおそらく特別な素材なのだろう。
ひんやりとして気持ちが良い。
だが俺の熱はその程度では下がりそうにない。
「···ありがとう」
俺は名前から受け取った水を一気に喉に流し込んだ。
飲みきってその時初めて自分の喉がカラカラだったことを自覚した。
「もう一杯飲んでおいた方が良さそうね」
名前は俺の持つグラスに水を注ぐ。
俺は先程と同じようにそれを飲み干した。
そして名前は俺の手からグラスを取り上げもう一度水を注いで今度は自分でそれを飲んだ。
喉が上下するそれは顔が上を向いたのもあってよく分かる。
氷が入った冷やされたグラスについた水滴が滴り落ちて名前の汗と混じりあって首から鎖骨、そして胸へと流れていった。
先程勢いよく水を飲んだにも関わらずまた喉が渇いてきた。
いや、おそらく本当に渇いているのは喉ではないのだろう。
「トーマス、私シャワー浴びてく···」
浴室に行こうとした名前の手首を掴んで引き止めた。
それは意識しておこなった行動ではない。
気付けば身体が動いていたのだ。
「どうしたの?」
俺の行動の理由を問う名前の身体を抱き寄せてそのまま唇を塞いだ。
腰に回した手が触れた部分は服の上からでも分かる程度に汗で湿っていた。
それを肌で感じた俺の口内が今度は唾液で満たされていく。
「···トーマス、シたいの?なら一緒にシャワー浴びる?」
唇を合わせてから一分程経っただろうか、名前は俺の胸を軽く押して距離をとる。
柔らかく笑っているだけなのにその表情が妙に色っぽく見えるのは俺だけなのだろうか。
俺が返答に困っていると名前は再び口を開く。
「このままシたいのね?
私は構わないけれど···今日は凄く汗をかいてしまったから、途中で嫌だと感じたらすぐに教えてね?」
名前はそう言って再び俺の唇を塞いだ。
俺は先程より強く名前の身体を抱き締めた。
嫌だなんて思う筈がない事をしっているだろうに、随分と妙な事を言ったものだ。
「今夜は熱帯夜みたいだけれど、本当に帰らなくて大丈夫?」
この状況でそんなことを訊ねるなんて意地が悪いなんて思いながら名前を抱き上げた。
そうすれば自然と俺の首に腕を回してくれる。
「暑いのにはわりと強いから平気だ、···知ってるだろ?」
「トーマスは寒がりだものね」
名前をベッドに下ろしてすぐに俺も名前の上に股がった。
早々に自身のシャツを脱ぎ捨てる。
同じように名前のブラウスのボタンを外し全て外し終えると名前は身体を起こしたので俺はブラウスを名前の身体から抜き取った。
そしてそのままブラのホックに手をかけブラも取り払ってしたった。
名前は今ショーツ1枚で俺の下にいる。
「後でシーツ代えるの手伝ってね?」
「ちゃんとコインランドリーまで行ってやる」
再び唇を合わせた。
俺に体重をかけられる事を負担に思わない、寧ろ好む事を知っているから俺は身体をぴったりとつけた。
弾力のある柔らかな胸が汗でぬるりと滑った。
手で触れるとそれはお湯で濡れているのともローションのような人工的な液体の感触ともまた違ったものだった。
「んっ···そこはね、とくに汗がたまっちゃうの」
胸の谷間に舌を這わせれば当然しょっぱかった。
それでもそこを妙に舐めたくなるのは何故なのだろうか。
胸の先端は既にぷっくりと立ち上がっていて口に含んだ。
歯で甘噛みすれば掠れたような吐息が洩れる。
吸い付けばくぐもった声を溢す名前に違和感を覚え顔をあげた。
「···窓、開けっ放しだから」
俺の考えなんて名前にはお見通しだったようで、俺がそれを訊ねるまでもなく名前はそう言った。
閉めるべきかと悩むも普段声を我慢することなんてない名前のそれに普段とは違う厭らしさを感じ完全に硬くなったのでこのまま続行することを決めた。
キスをしながら脇腹を撫でればくすぐったいようで名前は少し腰を引きながら息を盛らした。
だがそれがくすぐったいだけではないのを知っているので俺はやめなかった。
「トーマス···もう、熱いの、すごく···」
名前は自ら唯一身に纏っていたショーツを脱ぎ捨て俺の手をとって自身のソコを触らせた。
特別にぬるりとした感触、それは当然汗ではない。
「熱いな、いつもより、ずっと」
指を中に入れるとまるで熱いお湯かと思う程ソコは熱を帯びていて、その熱さにに喉がごくりと鳴った。
ソコに口を付けようとしたその時、先程水を飲んだグラスがふと視界に入った。
水を飲み干したグラスの中には溶けかけの氷とその溶けたほんの少しの水。
俺は名前の上から降り好奇心でそれを口に含んだ。
「···トーマス?っっ···!?」
口内で氷を溶かし、冷たくなった下で名前のソコを舐めれば名前は手の甲で口を塞いで背を仰け反らせた。
その明らかに“イイ”反応に俺の口角が上がった。
しつこく舌で舐めあげる、熱いソコを舐めていればすぐに舌の体温は元に戻ってしまっただろう。
だがもうそれもどうでもいい。
ソコはもうぐずぐずに濡れているのだから。
「悪い、俺の方がもう限界だ」
下に履いていたものを脱ぎ捨てて熱い熱いソコに押し当てる。
許可を得るように名前の顔に視線を向ける。
断られる筈がない事を知っている。
「早く、挿れて···トーマス」
言われるや否や細い腰をしっかりと掴んで自身のモノを押し込んだ。
名前から溢れる息遣いがゾッとするほど甘ったるい。
そのあまりの甘さに頭がおかしくなりそうだ。
「っ、トーマス、キス、キスしてっ···」
可愛いおねだりに俺のモノはどくんどくんと脈を打つ。
名前の希望通り覆い被さり余裕のない荒々しいキスをしながら腰を振る俺の姿は滑稽だろう。
時折歯が当たる、そんな荒い行為にも限らず興奮してしまうのは俺だけではないらしく名前のソコは俺を絞めつける。
相変わらず俺のモノを絞めあげるソコに腰が震える。
「っ、ぁ、ひっ···!」
堪らなくなったからか名前は俺の首にがっしりと抱き強く唇を押し付けた。
限界なのだと察した俺は敏感なソコだけを擦りあげる。
「っ、イ、っっ····!!」
名前は大きく声を上げそうになるのを耐える為に俺の肩に思い切り噛み付いた。
甘噛みされることはあってもそこまで強く噛み付かれたことはなくその痛みに思わず顔をしかめた。
それは確かに痛みを感じて、その筈だったのに。
「ぐっ、!」
その痛みの直後俺もソレに反応するように欲をぶちまけてしまった。
名前は俺に噛み付いた顎の力をゆっくりと弱めた。
そしてゆっくりと身体を離し、気だるく笑った。
カーテンの向こうから差す月光を背に浴びたその姿はまるで絵画に描かれたヴィーナスのように、それはそれは美しく見えた。
それは俺が心底名前に惚れているからなのだろうか。
絵画のように額の中になんて入れてしまいたくない。
閉じ込めてしまうのなら俺の腕の中で永遠に。
石膏像のように腕を切り取ってしまえば、足を奪ってしまえば名前はどこにも行けないだろうか。
だがこの美しく腕が、足が名前の意思で俺に触れてくれないなんて耐えられない。
「···シャワー浴びて、洗濯しに行こっか」
ぎゅうっと俺を抱き締めた名前はまるで優しい母のようだった。
母親の記憶なんてもう殆ど残っていない。
子供の記憶は曖昧だ。
俺の中にある母の記憶がどれ程正しいものかなんてもう分からない。
それでもこうして名前に抱き締められ頭を撫でられると時折母親を思い出す。
先程まであんなに淫らな事をしていたというのに随分とおかしな話だ。
「シーツ洗濯してる間にアイス買いに行こう。
この前食べたのが美味しかったからトーマスにも買ってあげる」
あんなに欲望を掻き立てられた名前はそこにはもういない。
そこにいるのはただただ可愛らしい最愛の女だった。
「···そんなの俺に買わせろよ」
名前は笑顔でありがとうと言った。
名前がこんな風に笑うことを“あの頃”の俺は知らない。
あの頃の俺は気が狂う程名前を求めていた。
そして今の俺は泣きたくなる程の幸福感を得た。
骨の髄まで愛する事が許された、その幸せを噛みしめて今日も名前を抱き締めた