とまらない

もう彼の唇の感触も歯並びも私は覚えてしまった。
それほど迄にトーマスのキスはしつこい。
その言い方ではまるで悪い事のように聞こえてしまうかもしれないがそれは断じて違う。

「···ん····名前」

盛り上げる意味もあるだろう、時折彼が漏らす吐息や何度も呼ばれる名前に私の身体は緩やかに上昇していく。
トーマス服の中に手を入れた時ふと思い出した。

「ねぇ、トーマス、もう1つ聞いてもいい?」

「なんだよ?」

トーマスが私の頬や首筋にキスをしながらブラこホックを外した。
答えてはくれるらしいが手を止めるつもりはないようだ。

「んっ···トーマス私が、その、感じちゃうのは仕方ないって言ってたでしょ?
あれって私が特殊な体質だからってこと?
それともトーマスが特別上手だってこと?」

「·······あー····いや、あれは、···ん···まぁどっちか、或いはどっちも正解だな」

トーマスは私を抱き上げベッドに座らせた。
そして下に着ていたインナーごと脱がせ下着も取りはらい私をベッドに寝転ばせた。

彼にしては歯切れの悪い言葉に違和感を覚えるも彼の唇が身体に触れるともうそんな疑問を考える余裕がなくなってしまう。

「最近は触れる度にお前のフェロモンが溢れだしてきて、気付いてるか?
外で猫達がそのフェロモンにあてられてるの」

「え?な、なに?」

胸をやわやわと触られながらちゅっと胸の先端を吸われた。
長い舌がねっとりとそこを舐める。
身体が覚えてしまった快感に心拍数が上がり息が乱れ始める。

胸だけではない、彼の舌が、指が、どこに触れようと私の身体はおかしくなってしまうのだ。
こんなことを世の女性皆が経験しているのかと思うと恐ろしくなる。

「まぁもはや一番あてられてるのは俺かもしれねぇけどな」

トーマスは私の顔を見下ろしてそう言って再び唇にキスをした。
分かっててやっているのだろうか。

私の出すフェロモンとやらがトーマスに一番効いている、そう聞いて喜んでしまっている私はきっと彼の事が。

「(···好き···)」

なのだろう。
そうはっきりと自覚したその時トーマスが私の身体の上に崩れ落ちた。

「なっ、え?あ、ト、トーマス?どうしたの?」

突然の衝撃に彼の身体を揺さぶると彼の身体の筋肉が強張った。
意識を失ったわけではないようだ。
それに安心するももしかしたら体調を崩していたのかもしれないと思って彼の背を揺する。

「どうしたの?どこか悪いの?」

そうすればトーマスが私を羽交い締めにするようにして肩を掴んだ。
彼の爪が肩に食い込む。

「だ、大丈夫?」

普段より若干ではあるが乱暴な彼に不安を抱き彼の手に自身の手を重ねるも彼の爪は私に食い込んだままだ。

痛みに思わず顔を声を漏らせば彼はゆっくりと顔をあげた。

再び私の視界に入ったトーマスのその目があまりにもギラギラとしていた事に私はびくりと身体を震えさせてしまう。

「····今、考えたこと、口に出して言えよ」

「え···なに、どういう、こと?」

トーマスも何かに耐えるように強く目を瞑って続ける。

「っ、俺がさっきキスした時っ···名前が考えてた事だよ!!
強く思ったろ!それを言えっつってんだ!!」

雨に濡れて帰った日、初めてトーマスに怒鳴られた。
あれは叱られたと捉えた方が適切だろう。
あの日とはまるで違う、叫びのような怒鳴り声に心がざわつく。
それは怒鳴られた事に対してなのだろうか?
違う、ということは気がついている。

「頼むからっ····」

再び開けられた目はやはりギラついた、まるで野生動物のそれのようではあったが苦しそうに見えた。
私が答えないと彼が苦しいままだというのだろうか。

これは言ってしまっていいのだろうか。
トーマスが私に好意を持ってくれていることは知っている。
だがそれはもしかしたら化け猫として、特別な存在として私を守る上で芽生えた保護欲によるものかもしれない、そんな不安が消えない。

こんなことなら恋愛の一つや二つ経験しておくべきだったと過去の自分を嘆いた。
分からないのだ、私にはそれの正しさが。
それでも確実な事は一つ。

私はもうそれを言わずにいる、ということは出来ないのだろう。

トーマスの頬にそっと手を触れた。
トーマスはぴくりと一瞬身体を震えさせた。
触れた肌は普段より熱く感じた。
それは気のせいではないらしい、額にはうっすら汗が滲んでいた。

「(きっと何かに耐えてくれている、そしてそれはきっと私のためだ)」

こんなにも私の為に苦しんでいる彼にこの想いを隠しきれる筈がない。
寧ろ想いは強くなる一方だ。

私は一つ深呼吸をして息を整えた。
私の想いが伝わるようにしっかりと彼の目を見つめる。



「···トーマスのこと、好きなの···特別な、きっと異性としてって意味で···」



口にした直後トーマスは一瞬目を丸くして固まった後、私の顔を両手で包むように持って荒々しくキスをした。
それは普段のように丁寧なものではない。

時折歯がぶつかるような。
一瞬彼の舌を噛んでしまいそれに謝ろうとするも彼はキスをやめない。
私はトーマスの背に腕を回しそれを受け入れた。

どんな行為ですら彼から与えられる刺激は私にとって毒のように身体を痺れさせてしまうものなのだ。

どれくらいそうしていただろうか。
それはほんの数秒だったかもしれない。
時間の感覚が分からなくなるほど私は彼のキスに溺れていた。
二人の唇が離れた時息が上がった私を見下ろすトーマスの目は普段のものに戻っていた。

「····やっと····やっと····」

「···や、っと?」

「···やっと、俺のものになった」

トーマスが歓喜に目を潤ませている。
細められた目がキラキラと輝いていてそれはまるで岩肌の裂け目から顔を覗かせる鉱石のようだ。

欲しいと強く望ませる。

貴方の全てが知りたい、全部見せて。

それを求めてそこに手を伸ばせば瞼は自然と閉じられてその鉱石は隠れてしまう。
それはまるで彼を永遠に手に入れることが出来ないと謳っているようだ。

宝物を掴めない私はその肌に触れる。

「ずっと欲しいと思っていた、喉から手が出る程、初めてお前を見たその日から手に入れたいと望んだ」

ずっととはいつからだろう。
彼は私を守ってくれていたと言った。
いつから私を求めてくれていたのだろうか。

「···いつからって顔をしてるな」

今度はトーマスの手が私に伸ばされる。
同じように瞼に触れられ私は目を閉じる。
熱い指先が頬に触れる。

その熱に溶けてしまいたいと望んだ。

「名前が望むことなら何だって叶えてやりたいけどな···でもこれ言うとお前絶対ひくだろうからな」

再び交わされたキスに先程の荒々しさはない。
これまでずっと優しいと感じていたそれが霞む程に優しいくて。

宝石なんて手に入らなくてもいい。
この手が、唇が私に触れてくれるならそれでいいと私に叫ぶ。


「じゃあ、お願い一つ聞いてくれる?」

「隠し事に対するお願いか?
···いいぜ、なんだって言えよ」

トーマスの手に私の指を絡ませた。
それは自然と握られる。
ほんの少しのことに愛しさは溢れて今にも零れてしまいそうだ。

「続き、シたい···」

絡めた手に唇を寄せる。
それは明確に彼を誘う行為だった。

トーマスはなんとも複雑な表情でこちらを見つめて私に食らい付く。
身に付けていたものは乱雑に脱がされた。
それすらも嫌ではなかった。
それほど彼を求めていたのだ。

大きく広げられた太ももの間に身体が押し込まれる。
ぬるりと指を滑りこまされたそこは相変わらず彼を欲していて、彼の指を飲み込んだ途端やめないでと言わんばかりに吸い付いた。

「可愛い、本当に可愛い女だな、名前」

「あっ···そ、こっ··もっと···!」

可愛いと言われて簡単に喜んでしまうこの身体が憎くて誇らしい。
彼を受け入れる為だけに発情しているのだと。

「もっとお前が乱れるところが見たい。
俺だけに見せてくれよ、全部、全部知りたい」

トーマスには隠し事があるくせに、なんて思ったけれどそこに怒りの感情や不公平感なんてまるで無くて。
私自身が彼に知ってほしいと望んでしまっている。

「知ってほしい、だから、···だからもう、お願い···」

早く入れてほしいとズボンの中で苦しそうに抑え込まれている彼のモノに触れた。
私が男の人のそれに触れたのは初めてのことだった。

トーマスはカチャカチャと音を立てながらベルトを緩めズボンのボタンを外しファスナーをおろした。
そして下着ごとずらしそれを取り出した。
それだけで期待して中がひくついた。
私はそれが私を気持ちよくしてくれるモノだと知っている。

「ああ、ちょっと待て」

トーマスはそう言ってポケットの中から何か錠剤のようなものが入ったケースを取り出した。

「···なぁに?」

「今日はまだ飲ませてなかった。
···避妊薬、飲んどかねぇと猫なんて生き物は生物学上すぐ孕んじまうから」

それを聞いて私でも化け猫であるトーマスの子供が妊娠出来るんだと知った。

「···前は、いつ飲ませてたの?」

「あー···今までは口の中で溶かしてキス下時流し込んでた。
名前キスするとき俺の唾液吐き出さずに飲み込んだから、いけるなって、な」

そう言われて顔が熱くなった。
とくに意識はしていなかったのだが今まで私は当たり前のようにトーマスのそれを飲み込んでいたという事実に。

「だから分かってると思うけど味なんてしねぇから、飲めるか?」

トーマスが私にそれを見せつけた。
私は感覚がおかしくなっていたのだ。
だからこう口にした。

「···いつもみたいに飲ませて?」

それを想像して自然と上がってしまう口角。
トーマスは黙ってそれを口に含んでいつも通り私にそれを含ませた。
彼から与えられるそれを喉を鳴らして飲み込めば彼は顔をゆっくりとあげ私を見下ろした。

目がたまらない、と言っている。

そして今度は下を貫かれた。
それは甘くて鋭くて、好きだと口にした後のキスのように荒々しいのに寧ろそれが優しくて。

今行われているそれが私を、私の心を求めているのだということが伝わってきて苦しい。

「好き、大好き」

それを言葉にすれば苦しくなった。
その度に私の中でそれが蠢いて彼の汗が私の顔に落ちてきた。

下半身が汗だくだ。
太ももからお尻に汗が流れ落ちていく。
でもそれはトーマスも同じだった。

私は丸裸でトーマスは最低限しか肌を露出していない。
それでも彼も私と同じだということは知っている。

「名前っ···好きだ、愛してる!
絶対に、もう二度と手離さない、一生俺のものだ!!」

がつんがつんと打ち付けられていたそこに温かいものがぶちまけられた。
私の中で何度も痙攣しながら吐き出されるそれ。
妊娠することはないとはわかっていても私は彼に与えられる全てが嬉しくて。

私は全てを出しきろうと緩やかに動きながらされる射精によって達した。

身体はまだ彼を求めて熱いままだった。
それでも心は感じたこともない程満足感を感じていた。

誰かを好きになってその人と結ばれる事がこれ程までに幸せだということをトーマスは教えてくれた