使用人とご子息

「トーマス様、お離しください」

「離れたら行っちまうだろ?」

「まだ仕事が残っているんですよ」

私の腰に抱き付いている大きな子供にため息をついた。
すると更に強く抱き締められてしまい私の胃袋が悲鳴をあげかけている。

「ハッキリ言いましょう、私は貴方一人に構っていられる程暇ではないんです。
そして私が仕えているのは貴方ではありません、トロン様です」

「と、父さんに仕えているなら俺だって名前に命令する権利がある筈だろ!?」

だからここにいろとトーマス様は依然私から離れようとしない。
やらなくてはいけない仕事はまだ山程ある。
後でお叱りを受ける毎になるかも知れないが子供の我が儘1つで仕事にしわ寄せがくるのは癪だ。
そう思い至って私はトーマス様の大きく主張したそこを全力で握った。

「う、あああっっ!!??」

そうするとトーマス様は痛みに耐えきれなかったようで私から手を離し股間をおさえてその場にしゃがみこんだ。

それを見て直ぐに踵を返すも今度は私の脚に抱き付いて去ろうとする私を引き留めてきた。
もっと強くやれば良かったと後悔しながら私にまとわりつく彼を見下ろせば泣きそうな顔で私を睨んでいた。
その顔に自分も主人であると私に命令しようとした威厳等微塵も感じられず思わず笑ってしまいそうになった。

「私に触れる度に大きくしているから触ってあげたんです。
満足されましたか?」

「あっ、あんなの!···そんなに俺が嫌いなのか!?」

嫌いだという言葉を自ら口にした所でトーマス様はついに潤んだ瞳から涙を溢してしまう。
その情けない姿に呆れてしまったが同時に同情の念も抱いたので私は彼の前にしゃがんでポケットに入っていたハンカチで彼の涙を拭いた。

「貴方達はいずれトロン様の責務を継ぐことになるんです。
もう自分の意見が通らないからといって泣いて駄々をこねる事が許されるような年齢ではないのですよ」

そう窘めようとすればトーマス様はキッと私を睨み付けて勢いよく私の唇に自身の唇をぶつけてきた。
雑に行われたソレに眉間にシワが寄る。
私にとってその行為に情緒なんてものは感じられない、ただ一方的に性欲をぶつけられているようなものだ。

「いっっ!」

いくら主人の子息であるとは言っても彼の言うことをなんでも聞けなどと命じられてはいない。
だから私はその行為に反抗の意を隠す気などないと言わんばかりに乱暴に捩じ込まれた彼の舌に歯を立てた。
再び彼はじわりと涙を浮かべ私を掴む腕を離した。

「貴方にとって使用人は性欲処理の面倒も見てくれる娼婦と同じですか?
なんの合意を得ていずとも手を出していい存在ですか?
それとも貴方にとって使用人は人としての価値などない存在ですか」

私の言葉にトーマス様は酷く傷付いた顔をした。
そこまで彼が思っているとは思っていない。
だが彼の行動はそうだと思われても仕方なく事だ。
だからこそ敢えて厳しい言葉を使わせてもらった。

「····だんまりですか?
トーマス様はご自身の行動や発言力に責任が持てないお子様のままですか?」

私の言葉に傷ついて俯いてしまった彼の顔を掴んで私の方を向かせた。
なんて情けない表情をしているのだろうか。
トーマス様はご子息の中で最もトロン様に似ている。
しかし圧倒的に違う所がある。
自分の意思を貫こうとする強さが彼にはないのだ。
常に何かに怯えて尻込みしてしまう。
かと言って自身の意思や欲するものを切り捨ててしまうことも出来ない。
中途半端な人間だ。

だが私は彼のそのいたく人間らしいところが嫌いではない。

「····トーマス様、私はあくまで使用人です。
ですから貴方がその気になれば私はその職を失う事はあり得ない事ではありません」

「っ、お、俺はそんなこと、望んでるわけじゃ····」

悲しい表情で私を見つめるトーマス様はとても幼い、そしてどこか甘美的だ。

「····貴方が私に抱いてる気持ちを素直に伝えてくだされば、少しなら貴方の望みを叶えてさしあげる事も可能です」

「····俺の、気持ち····そんなの、」

とっくに気付いているだろうと彼の目は訴えている。
だが私は彼のその他人任せな考えを認めるつもりはない。
言葉にするということは大切だ。
それがどんな感情であっても、言わなくてもわかるだなんて彼に思わせてはいけない。
それはトロン様に彼の世話を頼まれた使用人としての意地でもあった。

「言えませんか?····ではこの話はおしまいです。
失礼しま···」

「っ言う!!言う····から·····」

トーマス様は私の言葉を遮ってそう言い私の手を握った。
片手で乱暴に涙を拭って少し赤くなった目で私をしっかり見据えた。
それは弱々しくと強い意思を感じるものだった。


「·····好き、なんだ···ほんとはずっと一緒にいたい。
父さんにも、兄貴にもミハエルにも、名前を渡したくない。
ずっと俺だけを見ててほしい、俺だけの為にここにいて、メイドとしてなんかじゃなく、···ずっと一緒に、いたい····」

彼の目は強い意思を主張しながらも見捨てないで、とすがるようだった。
まだ17歳なのだ。
失うことを恐れている彼にとってはこの言葉を口にすることは大層勇気がいったのだろう。

「·····もっと早く、その言葉が欲しかったですよ」

そう言って彼の頭を優しく撫でれば彼は再び泣きそうな顔をして私を見つめる。
彼を可愛いと思う感情は母性から来るものなのだろうか、それとも恋心なのか私にははっきりとは分からない。

「トーマス様、私はトロン様の使用人です。
だから貴方のお世話はしっかりとさせていただきます。
····ですが私自身の気持ちとしては、貴方の願いを叶えてあげたいという気持ちもあるのですよ」

「···そ、れって····」

私の言葉に彼は驚いた顔で私を見た。
その顔はどこか期待を含んでいてその素直な反応に思わず頬が緩んでしまう。
一度小さく息を吸って真剣な視線を彼に向ける。

「····絶対に、秘密に出来ると誓えますか?」

「····な、にを、だ?」

私は立ち上がりトーマス様に手を差し出した。
彼は戸惑いつつも私の手をとったのでその手を握り彼を引っ張り立ち上がらせた。

「こちらへ····」

「は?え、お、おい····?」

トーマス様の手を引いて導いたそこは彼が毎晩眠っているベッドだった。
混乱する彼の肩を押せば簡単にベッドサイドに腰をおろしたのでそのまま胸を押し彼の身体をベッドに沈めた。

「失礼します」

私はそう言って靴を脱ぎベッドに上がり彼の上に覆い被さった。

「っ、な、なに、してんだよ!」

トーマス様はそれに慌てた反応を示すもやはり少し期待している様子はある。
単純な子だと再び頬を撫でれば若干青ざめていた顔はほんのりと赤く染まった。

「····最後までは出来ません、····けれどトーマス様が正直に想いを伝えられたご褒美に、少しだけ貴方の願いを叶えましょう」

私は彼のシャツのボタンに手をかけた。
一度びくりと反応を示した彼だが抵抗する筈もなく私にされるがままになっていた。
しかし瞳は明らかに動揺してキョロキョロと動いていた。

「触りますよ」

「っ」

そう宣言して彼の胸を優しく撫でれば大袈裟な程彼の身体は跳ねた。
その初々しさに口元は緩んだ。
彼の顔を見れば自身の反応に恥じているのか耳まで顔を赤くしている。
この反応を見る限り人にこうして触れられたのは初めての事なのだろう。

「くすぐったいですか?」

優しく優しく撫でれば彼の胸の突起が手のひらに引っ掛かった。
部屋の中は十分に暖かい。
そこが硬くなっているのは寒さのせいなどではないだろう。

「普段ここを触られていますか?」

「あっ···」

親指と人差し指できゅ、っとそこを挟めば彼は目をぎゅっとつむって声を漏らした。
ここまで反応がいいということは普段から自慰の際には触れているのだろう。
想像すれば随分可愛らしいと思うもあまり苛めすぎても後が大変だと思い私の問いに答えない彼に追及することはせずに親指の腹でそこを擦った。

「っ、名前っ···」

「我慢なんて必要ありません、今ここにいるのは私とトーマス様だけです。
誰も見ていませんよ」

覆い被さって彼の耳朶を甘噛みすれば再び身体を震えさせた。
それを見て私はそのまま舌を耳の中に押し込めば彼は悲鳴のような声をあげる。

「ココはご自身では刺激出来ませんものね···如何ですか?案外気持ちいいのではありませんか?」

彼の肩を掴んだソコをねっとりと舐めればその度に彼の身体か小さく跳ねる。
私の太股には再び硬くなったそれが触れている。

「っ···名前·····」

顔をあげ私の名を呼ぶ彼の顔を見ればその顔は快楽を感じつつもどこか哀しげで、私はその表情の理由に気付いている。

「申し訳ありません···私はこういった事をするのが初めてではありません」

はっきりとそう伝えると彼はショックを受けつつも恨めしい目で私を睨んだ。
嫉妬しているのだろうか、だとしたら本当に可愛い子だと彼の苛立ちを知りながらも口元は緩んでしまう。

「男性を既に知っている私を軽蔑しますか?
触れられたくないと私を引き剥がしますか?」

「っ、そ、んなこと···しない···!」

トーマス様は苦々しい顔をしつつも私に強く抱き付いた。
彼は随分嫉妬深い、本心ではそれが嫌で仕方ないのだろう。
けれども私を欲する気持ちも捨てられずに私にすがっているのだろう。

「···有り難うございます、少し腕の力を緩めていただけますか?
これではトーマス様を気持ち良くしてさしあげる事が叶いません」

トーマス様は少し悩む様子を見せるも素直に私を解放した。
よく出来ましたと言わんばかりに頭を撫でるとやはりどこか悔しそうな顔をした。

「トーマス様のそういう所、私は好きですよ」

「なっ、っっ····!」

彼の胸の突起を口に含んでちゅっと音を立てて吸った。
何か言おうとしていた彼だがその刺激に言葉は引っ込んでしまった。
舌先でちろちろと舐めるとそれが気持ち良いらしく吐息を漏らした。
彼がそこを刺激されることが大層好きだということを理解した私は緩急を付けそこを刺激していく。

その度に漏れる吐息とびくびくと震える身体に私自身えらく興奮している。

「トーマス様は随分敏感なようですね」

胸からそのまま唇を下に這わせてお腹にキスをした。
その行為にもトーマス様は身動ぎ息を乱れさせた。
くすぐったいのもあるだろうがそれだけでは無いことは言うまでもないだろう。

「こんなに大きくして、···苦しいでしょう?」

「っ、そ、んなのっ!こんだけ触られたら、当たり前っ···」

ズボンの上からそれを握って上下にシゴけば今度は太股を震えさせた。

「存じ上げておりますよ、貴方が夜な夜なベッドで何をしているかを···ね···」

「っひぃっっ···!?」

ぎゅっと強く握ればソコはどくんと脈打った。
このままでは服を汚してしまいそうだと思い彼ズボンのベルトに手をかけた。
再び彼の顔を見れば戸惑いの表情を浮かべつつも今から行われるその行為を想像して期待しているのが見てとれる。

ベルトを緩めズボンのボタンを外しファスナーをおろした。
履き口に手をかけ彼の顔を見れば私の意思を読み取ったようで戸惑いながらも少し腰を上げた。

「失礼しますね」

私は下着ごと彼のズボンを脱がせた。
ソコは腹に付くほど立ち上がっていた。
嫌悪感を抱く程ではないが露出されたソコからは構造的に少し独特の匂いが香った。
けして良い匂いなどとは言えないのだが私はその生物として当然のその香りに興奮を覚えじわりと私の中が湿ったのを自覚した。

「····」

私はその誘惑が堪らなくて焦らすこともせずにそれを口に含んだ。

「あっ···!あ、い、···いきな、りっ!?」

私は完全に興奮してしまっている。
そして辛抱たまらんと言わんばかりに彼のものを口内でねっとりと舐め回して吸い付いた。

「や、そっそんなに···!つ、つよっ····ああっっ!?」

初めて味わう刺激が彼にとって強すぎるようでそれから必死で逃げようとして彼の腰が暴れた。
それをさせまいと私は彼の太股をがっしりと拘束して唾液を含ませながら彼のものを強く吸いながら顔を上下に動かした。

「ら、だ、だめぇっ··!あっ、あっっ····!っひぃっ···!?い、いっっ!?」

口の中で彼のモノがびくびくと震えた。
経験のない彼は初めて経験するその強い刺激に耐える事など出来なかった。
口内に広がる不快な青臭い異臭を放つそれが鼻腔を抜ける。
通常であればすぐにでも吐き出してしまいたくなるようなそれをなぜかそうするのを惜しくなった私はそれをしっかりと味わうようにゆっくりと飲み込んだ。

彼のモノからまだとくんとくんと出るそれを絞りとっては飲み込んで。
ごくんごくんと喉を鳴らして飲み込めばその度にトーマス様は腰を震わせた。

全て出し終えた頃私はソコから顔を上げ半分放心状態で力なく横たわる彼の顔を見た。
彼は何とも言えない表情で私を見つめる。

「どうでしたか?···少しは満足していただけました?」

優しく肩を撫でればトーマス様は私の腕を掴んで再び私を抱きしめた。
今度は私も彼の頭を抱き抱えるようにして頭を撫でた。
彼は私の胸に顔を埋めて強く強く私を抱き締める。

「····名前、····俺、名前と一つになりたい····」

トーマス様は私の首筋に噛み付いてそう言った。
その行動は甘えているようにしか見えない。

「駄目です、トーマス様」

私はそんな彼をはっきりとした口調で拒み私から引き剥がした。
そんな私の態度に彼は再び瞳を不安げに揺らした。

「····そんなに、····名前は俺より父さんが大事、なの、か?」

トーマス様のこういう表情に私はどうにと弱いらしい。
普段であれば毅然と引き離せるにも関わらずどうにと今はそれが出来そうにない。
そんな私自身に呆れながらも彼の問いに答えを示す。

「···トロン様は私にとって大切な主人です。
両親を亡くした私が何不自由ない暮らしが出来ているのは全てトロン様のおかげです。
トロン様という雇い主がいなければ私は今のように生活出来ていなかったかも知れません。
ですからその恩人のご子息であるトーマス様に、そのような事が許される筈がありません。
···先程の件に関しても、私を信用してトーマス様の面倒を命じられたトロン様に対する裏切りです」

彼は私の言葉に表情を暗くしていく。
そんな彼を抱き締めたくて堪らない私は異端だろうか?
けしてそうではないと思っている。
それは私が彼を雇い主のご子息程度の存在に収まっていない事を示している。

「トロン様がいらっしゃらなければトーマス様とお会いすることは出来ませんでした」

泣きそうな顔で私を見つける彼の額にそっと唇を押し付けた。
それだけで彼は大きな瞳から涙を溢した。

「···それでも····俺が父さんの息子である限り、名前は俺を愛してくれないのか?」

「···心外ですね、··········私は········」

彼の言葉に流されそうになるも私はなんとかそれに耐え口を閉じた。
望む言葉を口にしない私を恨めしく見つめる彼の瞳に普段の力強さは感じられなかった。
まるで捨て犬のようだと思った。

「·····トーマス様、もしも本当に私を想ってくださっているのだとしたらトロン様を越えてください。
トロン様よりずっと立派におなりください。
····そして、私を····」

トーマス様は目を見開いた。
トーマス様は私の気持ち等気付いてもいなかったのだろう。
私がどんな思いで彼を突き放していたのかも。
それも当然だろう、私は彼に何も伝えていないのだから。

「トーマス様はきっとなれます。
ですから····それまで私は誰とも身体を重ねません。
トーマス様ともこれっきりです。
どうか偉くなってください。
そして、···そして私を拐ってください」

「、名前····俺···本当に、本当、に····」

トーマス様の瞳に先程まで浮かんでいた涙は既に消えていた。
そして決心したかのようにぎゅっと強く目を閉じて再びその目を開けた。

その時には彼はすっかり大人の男の顔をしていた。

「····俺、絶対に父さんより、ずっと凄い男になる。
父さんを越えて···絶対に名前を手に入れる」

先程まで泣いてすがっていた人とは思えない。
それを少し寂しく思ってしまう私は天の邪鬼なのかもしれない。

「····はい、トーマス様なら、きっと····」

何処か自信が持てずにくずぶっていた彼の姿はもう何処にもない。
その背中を押したのが私だという事実に少し優越感のようなものを感じてしまった。

「·····キス·····したい、でも、それをしたらきっと我慢出来なくなる、から」

彼は苦々しい顔でそう言って私に小指を差し出した。

「心配されずともいずれいくらでも出来るようになりますよ。
最もそれはトーマス様にかかっていますが」

彼の小指と私の小指を絡ませた。
子供染みた誓いの立て方だ。
だがそれはふざけて等いない、神聖な儀式のようなものだ。
それを私達二人がきちんと理解しているのだからそれで良い。

「····時間が押してしまいました。
今度こそ失礼しますね。
申し訳ありませんがトーマス様はご自身で身なりを整えてください」

惜しむ気持ちをおさえて一刻も早くここを立ち去りたいそう伝えれば再び彼は顔を赤くして不機嫌そうにこちらを睨み分かっていると返事をした。

その姿ととても可愛らしいと思っていることは口にせず私は彼の部屋を後にした。

長い廊下を歩く。
すれ違った他の使用人は笑顔で私に挨拶をして通り過ぎていく。
誰も私の心がこんなに乱れていることなど知る由もないだろう。



「やぁ、名前」



ただ一人を除いて。


「今お帰りでしょうか?お帰りなさいませ」

使用人らしい態度で私はトロン様に頭を下げた。
顔を上げた時トロン様は苦笑いを浮かべてただいまと返事をしてくれた。


「まったく、すっかり使用人の態度が染み付いちゃったんだから。
こんなんじゃ君のご両親に申し訳が立たないよ」

「何を仰るのですか、私はトロン様に感謝しかしておりません。
私の両親もきっとそうです」

トロン様は私の言葉にため息をついた。
その顔は見た目とは裏腹にどこか余裕を感じる私より大人の雰囲気を纏っていた。

「僕は君を娘にするつもりで引き取ったのに、君は僕の娘になんてなってくれないんだもの」

「私には勿体ないお言葉です。
働かざるもの、食うべからずですから。
···ふふっ、それに今そうなってしまっては困るのですよ。
いつか、いつか貴方の娘になりたいと私は望んでいるのです」

私の言葉にトロン様はなにかを含んだ顔で笑う。
考えが読み取りずらい人ではあるが今彼が何を考えているか程度は分かる。

「トーマスも早く色々な意味で覚悟を決めてもらわないとね。
普段は勝ち気な子なのに妙な所で尻込みしてしまう、出られる勝負でそこにある勝算に気付けないようじゃまだまだ僕が隠居出来ない」

「そうですね、····ですが私はトーマス様のそういう所、とても好きですよ」

繊細で傷付きやすい、それでも欲しいと思う物はすべて失いたくなくて足踏みを繰り返す。
私は彼のその人間くささを心底好いている。


「君が僕の娘になる日はいつになるだろう」


「それはきっと悲観する程遠い未来ではありませんよ」


一人言のように呟いた彼に再び頭を下げ失礼させていただきますという意思を伝えた。
トロン様は優しく微笑んで私の手をとり手の甲にキスをした。


「たまには二人でゆっくりお茶でもしよう」

「はい、是非···ご相伴にあずかります」


トロン様がその場を立ち去る。
その背中に再び頭を下げた。

様々な感謝を込めて。

私は自室に戻った。
その部屋の広さも家具もそれは決して使用人に与えられるようなものではなかった。
私は明確にトロン様に特別な扱いを受けている。
それを知っているのはトロン様ただ一人だ。



「(ああ、こんなに濡れてしまっているのか)」

真っ黒なワンピースの中に手を入れた。
下着はぐっしょりと濡れていた。
その不快な布切れを私は脱ぎ捨て我慢出来ないとばかりにベッドに転がった。


目を閉じて瞼に浮かぶのは先程のトーマス様の姿だった。
私は瞼に焼き付いたその耽美的な姿を見ながら自身を慰める。


「(愛しています、貴方が思うよりずっと、トーマス様)」


トロン様が私達の気持ちを既に知っている上反対する気など微塵も無いことを知った時貴方はどんな反応をするのでしょうね。

彼を想って夢中でそこを刺激すれば先程の彼と同じように意図も容易く私は達してしまう。
そんなことは当たり前の話しだ。

私は心の底から彼を愛しているのだから。

これまでのように貴方が甘えてくれる事がなくなるのは寂しく思う。
それでも私は貴方が立派な大人になるその日をいつまでもお待ちしております。


貴方と交じりあえることが叶うその日まで、私はこれからも従順な使用人になりましょう