可愛い子猫さん

「さっむ····」

私が寒さに震えて目を覚ましたのはほぼほぼ太陽が登りきって外が明るくなった頃だった。
今何時だろうかと寝ぼけながらもスマホを取ろうと手探りで枕元を探して思い出した。
昨日スマホをリビングで充電してそのままにしていることを。

面倒だと思いながらも布団から出てそれを取りに行こうと布団を捲る。
だが私は布団の外のあまりの寒さにすぐにそれを中断して布団に逆戻りしてしまう。
逆戻りした布団の中から腕だけを伸ばしてカーテンを少しだけそっと開け外の景色を見て思い出した。
昨日見た天気予報で今日は雪になると言っていたことを。

「(まさかこの時期に本当に降るなんて思わないじゃない)」

再びカーテンを閉め寝返りをうった。
徒なりには顔近くまで布団をしっかりとかぶって眠っているトーマスがいた。
可愛らしい寝顔を見せるトーマスにそっと抱き付いた。

「····名前?」

「ん、まだ起きなくて大丈夫」

まだ完全に起きたわけではならしいがさすがにそうすればトーマスは気がついてしまったようでうっすらと目を開けた。
起こしたかったわけではないのでそう言って眠りを促せば彼は私に抱き付いて再び目を閉じて眠りについた。
鎖骨辺りにあたる息がなんともくすぐったい。

「(子供体温なのか眠っているからなのか、まぁどちらにせよ私は嬉しいけれど)」

ダイレクトに感じられる彼の体温が心地よい。
彼ともそれなりの付き合いだ。
以前は抵抗があったが今では衣類を着ることなく抱き合ったまま眠ることに躊躇いが無くなってしまった。

現実問題そういうことがあって後始末を終えなければ眠りにつくことなんて出来ない。
それでもそれを終えてもまだ互いの肌に触れていたい、そうしていられることを幸せに感じるようになったのだ。

「(トーマスは女の子顔負けのすべすべなお肌をしているしね)」

どこを触ってもすべすべとした肌触りをしている。
かと言って何か特別やケアをしているわけではない。
根本から言って私とは基盤が違うのだ。
トーマスの兄弟は皆それはそれは見目麗しい容姿をしている。
ごく平均的な一般家庭よりも大きなお屋敷に住んでいるし3人とも上品さを感じられる。
色々あったとは聞いているが元々の育ちも良いみたいだし今はトーマスも沢山稼いでいるから普段の食生活も良いのかもしれない。
生活の質というものは直接体に表れるものだ。

「(3人の中でも一番男っぽい見た目をしているのに眠っている時のトーマスはとても可愛らしいんだよね)」

すべすべの肌に手をあてればトーマスは私の手にすり寄ってきた。
子猫にじゃれつかれているような錯覚を覚える。

「···眠れないなら起きるが」

再び眠そうな目が半分開いた。
そつ言って欠伸をした姿はますます猫のようで可愛らしい。

「ううん、寝てていいよ。
ごめんね、つい触れたくなったの」

正直に今の気持ちを口にすればトーマスの頬がほんのり赤くなった。
昨日はあんなに男性的だったのに、そんなギャップに心がときめいた。

「触るならもっとちゃんと触れよ、くすぐったいだよ」

トーマスからのクレームに先程以上に頬が緩む。
これが彼のおねだりだと言うことももう理解している。
力いっぱい抱きしめてあげるとトーマスは何も言わずに私の胸に頬を寄せ背に腕を回した。

「ねぇ、これって朝だから?」

「···まぁ、半分は、な····」

太ももにあたるそれを指摘すればトーマスはばつの悪そうに眉間にシワを寄せ先ほどより強い力で私に抱き付いた。
怒っているわけではない、これは照れ隠しの反応だろう。

「男の人って大変だね」

「···他人事みたいに言ってんな」

鎖骨に立てられた歯がくすぐったいと肩を揺らせば私が抵抗すると思ったのか逃げられないようにがっちりと腰を固定されてしまった。

「逃げたりなんてしないよ」

「····べ、別にそんなんじゃねぇよ」

私がそう言えばトーマスは先程より顔を赤くして否定した。
どうやらトーマスがそれをしたのは無意識だったらしい。
そしてそれでも私を拘束する力は弱まらなかった。

「ずっと一緒にいるよ」

「···当たり前だろ」

照れて俯いてしまったトーマスの額に唇を寄せれば彼はこちらが良いと言わんばかりに顔をあげたのでそのまま唇にもキスをした。
トーマスの上目遣いは何度見ても可愛くてたまらない。

「···今日は本当に寒いね」

「···ああ······」

再び彼の頭を抱いた。
大切な宝物を守るように、大切に、大切に。









互いの体温を分け合うように抱き合った私達はまだ布団の中にいた。
先程と同じようにぴったりと抱き合ったまま。

早朝よりは室内の温度も高くなっているように感じられる。
それでもなんとなくくっついていたくて。
私が少し体勢を変えようとすればそれをここから私が抜け出そうとしていると勘違いしたのかトーマスは自身の足を私の足に絡ませてきた。
こんなに可愛い男性が他にいるのだろうかと考える私は色ボケしていると笑われるだろうか。

贔屓目無しで見てもトーマスが可愛いということは否定出来ないと思う。
その贔屓目というものの物差しも所詮私のものなのだが。
実際そんな事はどうでもいい話だ。
私だけがそれを知っているのだとしたらそれはそれで嬉しい話かもしれない。

なんて、やはり私は心底この可愛い恋人に惚れ込んでいるようだ。

「やっぱりまだ寒いからここにいようか」

そう提案すればトーマスは小さく頷いた。
もう桜が咲きはじめたというのに今日はなんて寒いのだろうか。
きっと皆がその気候に不満の念を抱いただろう。

だが私にはそれほど不満を感じることはなかった。
それはきっと、腕の中にいる私の可愛い恋人も同じだろう。