「十代らしくない」
そんなことを言われて俺は首を傾げた。
俺らしいとはいったいどういうことをいうのだろうか?
他人の中にいる俺はどんな存在なのだろうか。
「きっとみんなの中で十代はヒーローなんだよ」
それを名前に訊ねてみるとそう返事が返ってきた。
俺がヒーローデッキを使う理由は確かにかっこいいヒーローへの憧れからだ。
では俺をヒーローだと思う奴らにとってかっこいいとはなんだろうか。
常に勇敢で弱い者に優しくて悪に毅然とした態度で立ち向かい曲がった事が嫌いでけっして負ける事を知らない?
世間的にはそんなイメージなのだろうか。
だとしたら俺はヒーローとは呼べない気がする。
「名前にとってはどうなんだ?」
名前も俺をヒーローだと思っているのだろうか。
だとしたら俺は何が何でもヒーローにならなければならない。
「勿論」
名前は俺の問いに即答した。
何故かそれに傷付いた自分もいる。
俺はこれからも"俺"らしく生きていかなければいけないのだという事に。
「名前にとってヒーローってどんな存在なんだ?」
どうせ"俺"らしく生きていかねばならないなら名前の理想の俺で生きていきたい。
俺がヒーローでいたいのはいつだって名前の前でだけだ。
この時点で大多数の人が思い描くヒーローの基準から外れてしまっていると思うのだが。
「十代だよ」
名前は迷う事なく答えた。
それは所謂皆にとってのヒーローの俺の事なのだろうか、そう考えていると名前は言葉を続けた。
「私にとっては今存在している遊城十代、そのものがヒーローなのよ」
名前は俺の手を両手でぎゅっと握った。
「十代がデュエルしてたって授業サボってお昼寝してたってなにしてたってそれぜーんぶ!」
つまり名前にとって俺は存在しているだけでヒーローのような存在だとでも言うのであろうか。
そうだとすれば逆に戸惑ってしまう。
そんな俺の心境に気がついたのか名前は続けてこう言った。
「でも敢えていうならね、私を一緒に戦わせてくれる十代。
それが私にとって一番のヒーローの条件なのかもしれない」
なぜだろうか、名前の言いたい事の意味ははっきりとは分からない。
なのに俺はその言葉を聞いて心が暖かくなったのだ。
「十代は十分強いしきっと一人で闘えちゃうんだろうなって場面も沢山あるんだ。
でもそんな十代だからこそ、十代が私を信じて一緒に戦うことを認めてくれた自分自身を誇りに思えるのよ」
俺にとって名前は誰よりも守りたい存在だった。
だが同時に誰よりも信頼できる頼りになる相棒でもあった。
名前を危険な目に合わせて、と苦言を言われたこともある。
それでも俺は名前と並んで戦えることが嬉しかった。
「これからも私を信じて一緒に戦ってね、ヒーロー」
俺の胸のうちで引っ掛かっていたトゲのようなものが消えた。
とたんに世界が明るくなったように感じた。
俺は孤独に闘うヒーローではなかった。
こんなにも最高のパートナーがいたではないか。
「頼りにしてるぜ、ヒーロー」
お互いに拳を作りコツンとその拳を合わせた。
俺は皆が期待するヒーローにはなれないかもしれない。
でも名前といれば俺はいつだってヒーローになれる。
俺にとって俺をヒーローにしてくれる存在。
名前こそが世界一のヒーローだ!