最後にあなたと

朝起きてベッドから起き上がりカーテンを開けた。
空はどんよりと曇っていて今にも雨が振り出しそうな、そんな朝だった。

「まるで私の気持ちを表しているよう」

なんて柄にもないことを考えた。
私は再びカーテンを閉め気持ちを切り替える為にシャワーを浴びた。
熱いお湯を浴びれば嫌でも目が覚めてくる。
髪を洗い身体を洗い終わった頃には寝ぼけていた頭も完全に起きていた。

浴室から出て髪をタオルでしっかりと拭き身体にバスタオルを巻き付け鏡で自身の顔を確認した。
うっすらと目の下に隈が出来ていた。
だがこの程度であれば化粧で誤魔化しが効きそうだと安堵のため息をつく。

しっかりと肌のケアをしてから髪を乾かし化粧をした。
いつもより丁寧に、少しでも自信が持てるように。
こんな日はいつも服も何を着ようか悩んでしまうので前日から決めておいた。
待ち合わせ時刻まではまだ余裕があるがそれを着て鏡で身なりを確認した後すぐに家を出た。

そうしないとまた違う服が良いかもしれない、と悩んでしまうかもしれないから。
外に出ると先程と変わらずぼんやりと薄暗い。
鞄の中に入れてきた折り畳み傘の出番はおそらくあるだろう。
足取りが重い、今日は楽しい1日になる筈だった。
これから大好きな人に会うというのになぜ私はこんな気持ちで待ち合わせ場所に向かっているのだろうか。

その答えが明確であるからこそより気が沈んでしまう。
早く会いたいと望んでいるのに反面時間が止まってしまえばいいと望む自分もいる。
こんな調子で私は今日上手く笑う事が出来るのだろうか、そんな不安を抱きながらも待ち合わせ場所のカフェに着いた。
店内に入りカウンターでコーヒーを注文した。
それを受け取り奥の方の席に座る。
人はまだまばらで一人客が殆どだった為店内は静かだった。
外は雨が降り始め、しとしとと音を立てていた。
そんな雨音の中でカチャリカチャリと小さく食器のあたる音だけが静かな空間に響いた。
それに不快感などは無く寧ろ心地よいと感じる程だった。

店員さんのいらっしゃいませ、の声にそちらを見ると新たに入ってきた客は私の待ち人だったらしい。
彼は店内を見回して私に気付くと軽く手を上げ待たせた、と謝る仕草をしてから背中を向け店員に飲み物をオーダーした。

注文したそれを受け取り私の元に来た彼はコップをテーブルに置いて改めて謝りを入れる。

「悪い、待たせたな」

「まだ時間になってすらいないよ。おはよう、トーマス」

おはようと挨拶をすれば同じように彼から挨拶が返ってきた。
少し前まで私はそれがどれ程幸福な事であるかなんて気付かなかった。
満身していたのだ、当たり前の日常に。
今となってはそれがとても心苦しい。

「今日はいつも飲んでる甘いのじゃないんだな」

「たまにはね、そんな気分だったの」

お互いの好みも知っている、私達の付き合いはそれなりに長い。
付き合い始めてからそれほど経ったわけではない。
彼とは元々友人だったのだ。
プロデュエリストの彼と友人になれたこと自体奇跡みたいなものだ。
それなのに今こうして彼の特別な存在になれたということが、まるで夢のような話だと言えるだろう。

「何かあったか?」

彼は察しがいい男だった。
だからこそいつも嫌な思いをしたことがない。
それは幸せな時間を過ごさせてくれた。
だが今日はその察しの良さを憎く思ってしまう。
例え彼が私の微妙な心の変化に気付かなかったとして、それでも現状は変わらないというのに。

今日1日彼と幸せな時間を堪能して、最後にそれを打ち明けようと思っていた。
それでもそれは叶わなかった。
ここで勘づいてしまった彼になんでもないと否定していつものように振る舞う事が私にはとても出来そうになかったからだ。

「···話したい事があるの。
だからどこか、···二人きりになれる場所に行きたい」

私はスマホの地図アプリで近くのある場所にピンを指しそれを彼に見せた。
彼はあからさまにそれに動揺を見せた。

「お、お前、こ、ここがどういう所か、分かっているのか?」

一瞬大きな声を出しそうになるもののぐっとそれを我慢して身を乗り出して私にそう訊ねた。
困惑から表情は歪んでいたが至近距離にあるその顔は相変わらず整っていて息を飲んだ。

彼は案外パーソナルスペースが狭い。
仕事柄色んな人と話はしてもなかなか他人を懐に入れる事が出来ないどこか臆病な青年だ。
そんな彼は今私を無条件でそこに入れてくれている。
なんて幸せなことだろう。

「分かってる、大丈夫。···トーマスは、嫌?」

「····んなわけ、ねぇだろ····」

彼の言葉を聞いて私は飲みかけのコーヒーを飲み干した。
そんな私をじっと見つめる彼の視線が痛かった。
それでも私はそれに気付かないフリをした。
私と同じように紅茶を流しこんだ彼の表情はどこか固い。
それは確実に私のせいで、ごめんなさいと心の中で彼に謝罪した。







「部屋が空いていて良かったね」

「あ、あぁ····」

店を出てお互い殆ど会話も無しに私達はそこに移動した。
建物の中に入りパネルに表示された部屋を選択してそこに入る、そこはイヤらしいことをすることを目的に作られたラブホテルだった。

選択肢に如何にもギラギラとした特殊嗜好のある人向けの部屋とシンプルな部屋の2室しかなかったので迷うことなくシンプルな部屋を選択した。
今になるとこんな機会はもう二度と無いかもしれないのだからもう一方の部屋を選んでも良かったかもしれない。

「私実はこういう所初めてで、···トーマスは来たことあるの?」

「···ある訳ねぇだろ、···そもそも女と付き合ったの自体お前が初めてなんだから」

彼に恋人がいたかどうかを訊ねたことはなかった。
元々モテていたのは知っていたしそれを知れば嫉妬してしまったかもしれないからだ。
だから彼の初めての恋人が私だった事を知り嬉しく思った。
だからこそこれから彼にしなければいけない話が辛かった。

「····突然こんな場所に誘って····そういう事がしたかったってわけじゃないんだろ?」

彼がそう言ってソファーに腰掛けた。
私も彼に続いて隣に座った。

「話ってなんだよ。···言っとくけど別れ話なんて聞く気はねぇからな」

私に向けられた視線が鋭くなった。
私はそんな彼に苦笑いを浮かべた。
別れ話なんてするつもりはなかった。
それでも私が今からする話は、人が聞けばそれと同じなのかもしれないのだ。

「こんな場所で······別れたいなんて思ってない。···でも、私もどうすることが正解なのか分からなくて、でもどうにもならない事があって、それはトーマスに一番に話さなくちゃいけないことだから、だから誰にも邪魔されない所に来たかったの」

トーマスは私の言葉に少しだけ警戒を解いた。
そして安心させるように私の手を握る。

「なんでも話せ、俺はお前の事はなんでも知りたい」

私は彼にこんなにも認められているのだ。
それを実感させてくれた彼の言葉に目頭が熱くなった。
だが子供のようにそこで泣いてしまうわけにはいかないのだ。
私はなんとか心を落ち着かせ口を開く。

「うちは父が海外で単身赴任をしていて母は一人で暮らしているの。
母は母で仕事をしていてそれが生き甲斐だったから家族バラバラでもそれぞれ皆充実した生活を送っていたの」

「ああ、俺と一緒にいる時もちょくちょくメッセージや電話がかかってきていたよな」

離れて暮らしている分とれるコミュニケーションはとっていた。
半分は義務のような形になっていたかもしれない。
それでも私はその義務のような習慣が苦痛ではなかった。
今となってはその時間が愛しくてたまらない。

「でもお父さんとはね、もう電話もメールも出来なくなってしまったの」

「·······何があった?」

それを口にした途端空気が薄くなったような気がした。
耐えきれずに彼の手を握る手に力が入った。
すると彼も同じように私の手を力強く握り返してくれた。
私より大きなその手に安心した。

「お父さん、向こうで事故にあって···もう会えなくなっちゃった。
それでね、お母さんは自分の仕事を優先してお父さんに着いていかなかった事を後悔して、ご飯も食べられなくなって身体を壊してしまったの」

「っ、····いっ、····いや、悪い、なんでも、ない」

トーマスは何を言いかけたのだろうか。
おそらくいつ起こったことなのか聞きたかったのだろう。
不謹慎だとか無作法だとでも思ったのだろうか。

「本当に少し前、2週間くらい前かな。
実家に帰ってお父さんを見送った後、それまではお母さんいつもと変わらなかった。
それでも無理をしてるってのは見てれば分かった。
···トーマスは大きな大会の決勝戦が近かったから、報告が遅れてごめんなさい」

「···俺なんかの事はいい、···大丈夫、なのか?」

トーマスは私よりずっと前に母親を亡くしている。
そんな彼からすれば私はどう見えているのだろうか?
完全には分からずとも彼が私を心配してくれていることはよく分かる。

「私は大丈夫·····でもね、これは私が支えるべき時なんだって···そう思っているの」

「····それは·····」

彼の表情が少し歪んだ。
おそらく私が今から言おうとしていることを察したのだろう。
彼が見せた顔に私はほっとしてしまったところもある。
私は彼にとって惜しい存在だったのだと、それがはっきり証明されたということだから。

「私実家に帰ろうと思う。
どのくらいになるかは分からない。
今の会社に通える距離ではないから仕事も辞めて····」

「····」

無言のまま私の手を握る手に先程よりも強く力が込められた。
骨が軋みそうなくらい、痛いくらいの筈なのに今はその痛みを実感出来なかった。

「トーマスに気軽に会う事が出来なくなってしまうの。
少なくとも暫くは私の方からトーマスに会いにいくことは出来ないと思う。
···ー···だったら、私達····」

私の方から別れ話を持ちかけることになるなんて思わなかった。
そんな時が来るなんて、ポタリポタリと水滴が伝って太ももを濡らした。
視界がぼやけて見えなくなった後一度まばたきをすれば更に大粒の涙が重力に逆らうことなく落ちていった。

私は父が死んだと聞いた時泣かなかった。
勿論悲しくなかったわけではない。
それは親戚の手前、母が悲しみにふけることを必死に耐えて気丈に振る舞っていることを理解していたからだろう。
あの時我慢出来ていたにも関わらずどうして今涙を流しているのか、それは彼の、トーマスの前では私は泣いていいものだと思っているからなのだろう。

トーマスは私の涙を手で拭った。
私には彼にそうしてもらえる権利があった。
その特別な権利を今永遠に失いかけているのだ。
そう考えると更に涙の勢いが増していく。

「名前」

私の名を呼ぶその声が愛しい。
彼の声には魔法がかけられているのだろうか。
それだけで胸が張り裂けてしまいそうだ。

「····名前の事情は分かった。
けどな····悪いが俺はお前の提案に乗るつもりはねぇよ」

トーマスは私の身体を抱き寄せた。
強く強く抱き締められる。

「···別れる、なんて選択肢俺にはない。
それが仮定だったとしても言いたくない。
会えないって言っても一生じゃねぇ。
地球の裏側でもない、新幹線で数時間の距離だろ?
名前が来れないなら俺が行く、それで何か問題あるか?
俺たちが別れなくちゃいけない理由が、あるなら俺に言ってみろ。
俺はその全てを否定してやる」

トーマスの声を、目を見ればけしてその場の軽口で言っているわけではないということがはっきりと分かる。
分かってはいる、だがそれはあまりにもトーマスに負担が大きすぎる。
私よりずっと良い人がいくらでもいる。
トーマスならば直にそんな人と結ばれる事が出来るだろう、それならば負担をかけてまで私と関係を続ける必然性が果たしてあるのだろうか?

「名前、お前が考えていることは分かる。
でもそんなの俺の知ったことじゃねぇよ。
俺はお前が良い、だから俺はお前を手離す気は更々無い」

きっとその言葉は私が望んでいた言葉だ。
私は彼との別れなんて始めから望んではいなかった。
期待していたのかもしれない、彼もそうだと言ってくれることに。

「···私も、トーマスがいい···」

胸を軽く押して距離を取った。
そしてそのまま彼の唇に自身の唇を優しく押し付ければこんなに幸せなことがあるのだろうか、と歓喜に震えた。

全身が彼を求めている。

「なぁ、なんでこんな場所を選んだんだ?
····二人きりになれる場所なんて、他にいくらでもあるだろう?」

意地悪な質問だ。
予想なんてついているに違いないのに、理由は分かっている。
きっと言わせたいのだ、私の意思を。

「気付いてるくせに」

彼の肩に手を置いて顔を寄せれば自然と目を閉じてくれた。
睫毛の一本まで綺麗だと思いながら私も目を瞑る。
柔らかく暖かい唇に触れた。
腰に彼の腕が回された。
触れる身体は唇のように柔らかくはない。
女友達とハグでは味わえないその感触に彼が男であることを再認識させられて身体は更に熱くなる。

「···抱いてほしい」

素直に言葉を口にすれば彼の喉が少し震えた。
顔を見れば笑っている。
それは馬鹿にしているような表情ではない、本当に嬉しそうな、その笑顔が彼も私と同じ気持ちなのだということを語っているようで幸せだった。

すぐ隣にベッドがある。
私たちは立ち上がりそちらに移動して再びベッド際に腰を降ろした。

「···今日、朝シャワー浴びてきたんだろ?
だったらこのまま抱いてもいいよな」

私の腕をさすりながらトーマスはそう言った。
何故それを知っているのだろうか。

「普段と香りか違った。いつも会う前シャワーを浴びてきた時なんかは我慢するの結構辛かったからな」

そう言って再び唇を合わせながら背中に回された腕は私の服の中へと入っていく。
その服の中で手がもぞもぞと動いてキャミソールを捲って今度は直に背中を触れられた。
お医者さん意外の男の人にそんな所を直で触れられたのは初めてのことだ。
恥ずかしい反面何か違う感覚も湧いてくる。

「思ってたよりずっと気持ち良いな。
ずっと触れてたい」

トーマスは私のカットソーを脱がせた。
再び肩から腕を一撫でして今度はキャミソールに手をかけた。

「もうここまで来たら止めたって聞けねぇからな」

最後の確認だと私の眼を見つめた。
私はただ黙って首を縦に振った。

それを見てトーマスは私のキャミソールを脱がせた。
部屋は空調が効いていて寒くも暑くもない、とても快適だ。
トーマスは大人しく女の子らしい服を好んでいたので普段から彼と会う時は肌の露出が少ないものを着ていた。
だからこそ今こんなにも彼の前で素肌を晒していることにドキドキした。

「今日俺に見られる事を前提にこれにしたのか?
ああ、いいな、凄く俺好みだ」

「···嬉しい、けど一々そういう言い方しないで」

今日初めておろしたそれは今日の為に新しく購入したものだった。
普段着ているものはもう少しシンプルなものばかりだったから、少しでも魅力的に見えるよう、勇気が出るように買ったそれは彼の御眼鏡に適ったらしい。

「俺と付き合い始めてから服の感じも変わっただろ。
そういうの好きだぜ、貴方色に染まりたいって言ってるみたいで。
健気な感じが可愛いなって」

ベッドに寝かされて私の上にトーマスが覆い被さった。
そした下着の上から触れられた事で私の心臓の音が大きく鳴った。
鎖骨から胸元を手が触れて、今度はそこに唇が這った。

「ふ、っ···」

首もとに彼の髪が触れてそれが擽ったくて肩を震わせるとその間に背中のホックを外されてしまった。

「折角俺の為に選んでくれたもんを外しちまうのも勿体ねぇけど、俺はこっちも気になるからな」

留め具を外された下着は私の胸を守ることを放棄して簡単に彼の手の侵入を許した。
これ程までに照れるものなのかと自分自身が驚く程顔が熱くなる。
心臓の鼓動は早鐘のように鳴った。

「興奮してるようだな」

硬くなった突起を軽く指で摘ままれた。
まだまだ先は長いというのにもう恥ずかしくて堪らない。

「人間なら誰にでも同じようなものが付いてんのに、なんで名前の身体に付いてるってだけでこんなにエロく見えんだろうなぁ」

腕に通されただけの下着は身体から抜き取られてしまい上半身を隠すものはもう何も無い。
トーマスは無遠慮に私の身体を見ている。
お腹が出ていないだろうか、汗をかいていないだろうか、もう少し胸が大きい方が好みだろうか、湧水のように次から次へと不安が湧いてきて胃がキリキリと痛み始めた。

「なんて顔してんだ、褒めてんだよ」

「、あっ····!」

トーマスが私の胸に吸い付いた。
彼の舌がぬるぬると私のそこを這っては歯を立てられまた吸われて、咥えられていない方の胸も手で揉み解されてそちらの突起にも刺激を与えられる。

これが気持ちいいことなのかということは正直私にはよく分からない。
所詮こういったことは知識でしか持っていないのだ。
ただ今おこなっていることはイヤらしい行為であるという知識が私の感覚を狂わせていく。

「気になるのか?」

トーマスの手が私のスカートを捲りあげて太ももを撫でた。
そうされて初めて私が膝を擦り合わせていたことに気がついた。

「え、あ····そ、その····」

冷静になると違和感に気付く、下着が湿ってしまっていることに。
勿論それが汗などではないということも。

「こっちも脱がすぞ」

ウエストが半分ゴムになっているスカートは容易に脱がされてしまった。
身に付けているものはだらしなく湿ったショーツ一枚、ただそれだけだ。

「こっちもイイが、···これ以上濡れちまったら帰りが困るから脱がすぞ」

彼らしいと言っては語弊があるかもしれない、でもそれが一番分かりやすい、そんな意地悪な顔で私の身体からショーツを抜き取った。
脱がされたショーツは確かに濡れて染みを作っていた。

そう言えば替えの下着を持ってくるのを忘れてしまったと気が付いた。
洗ってドライヤーを使えば乾かせるだろうかと考えていると足がぐいっと広げられてしまった。

「ちょっ、そ、そんな、いきなり···っ」

「ちゃんと言ったぞ。なんか違う事考えてたんだろ」

閉じようとする足を阻止するようにトーマスは私の足の間に身体を押し込んで裏ももを手で掴んで身体を折り曲げられてしまった。
彼に泌部が丸見えになってしまっている。

「み、ないで···」

「馬鹿言うなよ、俺はお前の、名前の全てを目に、身体に焼き付けてぇんだからな」

隠そうとした手を簡単に退けられてトーマスはソコを凝視している。
気がおかしくなりそうだった。
それなのに、ただ辱しめを受けているような格好をしているのに私はその視線に当てられてソコをひくつかせてしまっている。

「こんな風になってんだな」

「、ひっ···!」

そっと触れたトーマスの指に身体に電気が流れたような感覚を覚えた。
トーマスはソコを優しく擦りはじめた。

「あっ、ま、って···!な、か、····変で!ひゃっ、し、刺激が強すぎ、て!」

「それって感じてるって事だろ?···今すげぇエロい顔になってるの気付いてるか?」

そう言われてどろりと中から液体が溢れ出た。
その慣れない感覚はどうにも気持ち悪かった。
それでもそんな私を見てトーマスは嬉しそうに笑っている。
そして溢れたソレを突起に塗り付けはじめた。
先程よりは刺激は少ない、だが別の感覚が溢れていく、きっとこれは気持ちいいということなのだろう。

「最初はなかなか上手くいかねぇとか聞くが····これならなんとかなりそうか」

「な、なに、あっっ····!?」

今度は彼の舌が泌部を這った。
腰を持ち上げるように身体を折り曲げられているせいでトーマスがそこを舐めている姿が視界に入る。
そのあまりの光景に顔を逸らせばそこでまたトーマスが笑った。

「こんな味がするんだな。これも忘れねぇ、もっと飲ませろ」

「っ、吸わない、で、ああっんっ····!」

じゅるりと立てられた音はわざとだろう。
わざとらしく下品に音を立てながら吸っては飲み込まれる。
そんなものが美味しいとは思えない。
それでも彼に視線を戻せばそれはもう機嫌の良さそうな顔でそれを飲んでいた。

「また溢れたな」

その顔を見てまた私はソコを濡らしてしまった。
ぴりぴりと走るその刺激は私が考える事を放棄させただただ私の身体を熱くする。
そしてぬるりと彼の指が私の中に押し込まれた。

「っ、」

「濡れてはいるが、やっぱ狭いな」

おそらく指はまだ一本しか入っていない、だが信じられない程の圧迫感を感じた。
潤っていた為か痛みはそれほど感じなかった、だがなんとも不思議な感覚だ。

「ここ、で合ってるか?」

「ひゃあっ、!?」

手探りで触れられたソコに再び刺激が走る。
思わず漏れた声を聞いてトーマスは再び突起に唇を這わせながら中のソコをぐりぐりと押した。
途端に何か得たいの知れない感覚が込み上げてくる。

「なん、か、へ、んっ!」

「···大丈夫だ、楽にして、何も我慢しなくていい」

違和感を訴えてもトーマスはそれをやめてくれない。
涙が出そうになった。
それでも彼の言葉を信じてそれを拒まず受け入れた。
高まる感情に筋肉が収縮するような感覚。


「あ、あぁっ····!!」

そしてそれは限界を達した。
びくびくと震えるソコとどろりと流れ落ちていくその感覚にこれが所謂イクという感覚なのだと理解した。

「思ってた以上に感度が良いみたいだな」

息の乱れた私の中に今度は指が2本挿入された。
増やされた指にやはり圧迫感を感じたが不思議と先程指を一本挿入された時程苦しくはなかった。

「こんな場所に入れたら即イッちまいそうだな···」

ゆるゆると中を刺激されて先程達したばかりだというのに、いや、今の今だからこそだろうか、私のソコは更に潤っていく。

「····ト、ーマス···もう···その···」

彼の手を握って名を呼べば私を見てぎこちなく笑う。

「···悪いが、多分痛い思いさせちまう····でも多分やめてやれない···それでももう入れていいのか?」

途中でやめられないと始めに聞かされた。
それでも改めてそう訊ねられた。
つくづく愛されている、大切にされているのだと実感する。
それだけでどうしようもない程幸せだ。

「···痛みも喜びも、全部トーマスが与えてくれるものならなんだって···私は知りたい、だから···」

相手がトーマスでなければこんな言葉を言う余裕はなかっただろう。
痛いことも苦しいことも嫌いだ。
それでもトーマスが相手であれば、寧ろそれすら嬉しい事だと思える気がするのだ。

「···分かった」

トーマスはシャツのボタンに手をかけそれを一つずつ外していく。
全て外し終えてシャツを抜き取り中に着ていたインナーもガバッと脱いだ。
贅肉など少しもない、それでも私より広い肩幅は彼が男なのだと語っていた。

ズボンのベルトを緩める。
カチャカチャとベルトの金具が音を立てる。
ボタンを外しファスナーが下ろされ上の服と同じようにすぐに身体から離れていく。
あっという間に下着一枚になった。

「すげぇガン見してんな」

「あ、え、ご、ごめん····」

謝らなくていいと言いながら最後の一枚となった下着に手をかけた。
脱ぐ前から彼のソコは主張していた。
私を相手に彼も興奮してくれていたことを知って恥ずかしくもあったが何より嬉しかった。

私と同じく何も身にまとっていない彼が再び覆い被さり私を抱き締めキスをした。

「出来るだけゆっくり、するけど···ごめんな」

「····大丈夫、お願い····」

トーマスがベッド脇に置かれたソレを取って封を開けた。
そして中身を取り出してそれを自身のモノに装着する。
なんとも生々しい光景だ。

「出来るだけ楽にしてろ、よ···」

私のソコにぐぐぐっと押し込まれていくソレは先程とは比べ物にならない程の圧迫感を私に与えた。
経験したことのない痛みも感じる、だがソレは想像していたよりずっとマシなものだと感じた。
私は幸運なのかもしれない。

「···っ、」

「はっ···全部、入った····」

トーマスは力強く私を抱き締めた。
なんて幸せなのだろうか、そう考えていれば私の中が再びきゅーっと収縮した。
それにトーマスは小さく声を漏らした。
その零れた声が色っぽくて胸が高まった。

「俺んな余裕ねぇんだから、な···」

私の前髪をかきあげられ額にキスをしたトーマスの首に腕を回し、今度は私の方から目一杯抱き付いた。

「····動いていいよ」

そう促し彼の唇にキスを贈ればトーマスはもう我慢が効かないと言わんばかりに私の中を突いた。
それは確かに痛みを伴った。
けれどその痛みはやはり愛しいものに感じられた。
痛みを悦びに感じられる程彼を好きでいる事が嬉しくて堪らない。
今再び目から溢れ出た涙は喜びの涙だろう。

「っ、こんな、っや、べぇな、ほんと···に、」

「っ、ト····、ーマスっ」

名を呼べばトーマスは私の目尻を舐め舌で涙を拭ってくれた。
猫が泣いている飼い主を心配しているかのようなその行為に彼への愛しさが破裂しそうだった。

「もっと、もっと名前っ···呼べ、よっ···!」

「っとー、ますっ、とぉま、す、好きっ···大す、きぃっ···!」

荒々しいキスなんて初めてだった。
悪く言えばそれは雑なものになっていたかもしれない。
歯が何度か当たった。
それでもそんなキスが気持ちよかった。
突き上げられたソレはまだ私に痛みを与えている。
けれどももっともっと、と私を掻き立てる。

「っ、好きだ、名前!!全部、お前の全部俺のもんだ、誰にも、やらねぇっ···!!」

「っあっ···!ひ、あぁっ···!!」

私の中で彼のモノがどくんどくんと痙攣した。
私は痛かった筈なのに、再び彼と同じように達してしまった。
痙攣しているのは私の方だったのだろうか。

トーマスは私に体重を預けぎゅうっと抱き付いた。
苦しみも感じたが心地よい重みだった。
お互いしっとりと汗ばんでいたがそれでも触れる肌は気持ちいいと感じた。


「···俺以外の奴とこんな事、絶対に許さねぇから、な····」

「しないよ、···トーマスも、ね」

当たり前だと言いながら彼惜しみながらも私の中から自身を引き抜いた。
ゴムの中に彼が出したソレがたまっているのが見えた。
トーマスはソレを外してそそくさと縛ってゴミ箱に投げ入れティッシュで自身を拭った後私のソコも綺麗にしてくれた。

「じ、自分で、出来るからっ」

「俺がやりてぇんだからじっとしてろ」

防ごうとしたら手を退けられソコにティッシュをあてられた。
まるで赤ん坊のような扱いを受けていると感じたがこれは普通な事なのだろうか。
何分経験が無いものでその辺りの基準が分からない。

「じゃ、じゃあトーマスのも拭いてほしかったってこと?」

「···いや···今名前に触られたら多分また勃つから、···また今度、で」

トーマスはそう言って私を抱き締めベッドに転がった。
先程とは逆で今度は私が彼の上に乗ってしまっている。

「だ、大丈夫?重くない?」

「ああ、重くはないが····やっぱ駄目だな···」

「えっ、···あ····」

先程下を向いた筈のトーマスのモノは再び硬さを取り戻し私のお腹に押し付けられていた。

「···えっと···だ、大丈夫?」

「さすがに今日初めての奴相手にこれ以上無理をさせる気はねぇよ。
···まぁ、そのうち落ち着くから」

お前は気にするな、そう言われてしまった。
あまり気を使ってほしくは無いのだがこれも彼の愛情の形だと受け取ったので私はそれ以上何も言わずに彼に抱き付いた。
お互いの心音が触れた身体を通して伝わって、とても幸せな時間だった。



「····いつ、引っ越す予定だ?」

「····準備が出来次第、出来るだけ早くかな····今は叔母さんが付いていてくれているけど、いつまでも迷惑はかけられないから···」

出来れば話したくはない話題だった。
それでも逃げているわけにはいかないことだった、それを分かっているからこそトーマスの方から話を切り出してくれたのだろう。

「見送りは何が何でも行く」

「····寂しくなっちゃうよ」

彼の胸に顔を押し付けると優し
優しい手つきで私の頭を撫でてくれた。

「言っただろ?別れる気はないって。
ならいってらっしゃいの挨拶は必要だろ」

「····本当に、待っていてくれる?」

トーマスは力一杯私を抱き締める。
そして耳元でその力強さとは正反対な程優しい声で“当たり前だ”、そう言ってくれた。

「会いに行く時はお前の母親にきちんと挨拶して給料3ヶ月分の指輪を用意しておく」

「····さ、さすがにトーマスの給料3ヶ月分はとんでもない金額になりそうだから···そんなに高いものは買わないで?」

彼の稼ぎを完全に把握しているわけではないのだが以前偶然とあるイベントのギャラの話を聞いてしまったことがある。
その額が私のような庶民には衝撃的な金額であったのだ。
そう考えると彼が月どのくらい稼いでいるのか、それは想像することすら恐ろしかった。

「何年かかったってお前以外と結婚する気はねぇ。
最終的にこっちに戻ってこれねぇってなったら俺が通う。
そうでなくても結婚式もそっちで挙げても良いしな」

「···ずっとって事はないも思う。
でもどうなるかは分からないなら···トーマスの家族はそれで許してくれる?」

「俺は男だしまぁ父さんの事情を名前の家族になんて説明するかは難しいところだが、多分父さんならなんとでもするだろ。
俺の家族は皆元気だからなんとでも出来る、余計な心配はしなくていい」

トーマスはごろりと横に転がって私を下にして再び私の上に覆い被さった。
両手で頬を包み込んで唇を合わせた
こんなに沢山キスをしたのもまた初めての事だ。

「一番見たいと思ってるのは間違いなく俺だ、でもその次に見たいと思っているのは名前の母親だろうからな、····ウェディングドレス姿」

自分がウェディングドレスを着た姿なんてまだ想像出来ない。
それでもいつかは着たい、そう望むようになったのはトーマスと恋人同士になってからだ。

「もう絶対俺以外の男には触れさせるな。
一生俺だけの女になってくれ」

プロポーズはきちんと改めてする、そう言って小指を差し出した。

「はい···宜しくお願いします」

私は彼の小指に自身の小指を絡めた。
その子供のように交わす約束に心はぽかぽかと暖まった。


「今日はずっとこうしてたいな」

「ああ、後で風呂も一緒に入って、···今日は泊まる」

私の部屋に彼を呼ばずにここを選んだのは部屋のものがもう殆ど無かったからだ。
残されているものは段ボール数箱分の荷物とベッドだけで、そんな寂しい部屋を見せたく無かったからだ。
あの部屋で彼と抱き合えば寂しくて行きたくないと泣いてしまったかもしれない。

こんな場所ではムードが無いと言う人もいるかもしれない。
それでも私にとってはここは最高の思い出となった。

来週にはきっと私はこの地を去る。
それでも私達は間違いなく繋がっている。
彼と出会えて良かった。
これから先もっと私は彼を好きになる。

きっとこの予感は外れることはないだろう。