「そう言えば僕、もしも優勝出来なかったら屋上から全裸で名前さんに告白しなければいけなかったんですよ」
「え」
それは初めて彼と身体を重ねたすぐ後のことだった。
その唐突な言葉に理解が追いつかず疑問符を浮かべていた私を見て彼は小さく笑った。
出会った頃より笑うようになった気がする。
「まぁ告白と言ってもそれより前にもう名前さんは僕の事大好きになってましたけど」
慣れない行為による疲労感からまだベッドから動けない私を抱きしめ耳元で彼はそう囁いてそこに唇が押し当てられた。
「っ...」
普段とは違う声色。
つい先ほど散々聞いたソレ。
だがまだ慣れていない。
「もしもそんな形で僕に告白されていたらどうしてました?」
彼は肩から背中、腰からお尻に撫でた。
その手は日頃バスケで鍛えられているからだろう。
私より硬く骨っぽい、男の手だ。
「それでも僕の事今と同じくらい好きになってくれていましたか?」
脇腹を撫でられくすぐったくて逃げようとするも腰を強く抑えられたことでそれはかなわなかった。
「て、つや、君っ...」
いやらしく首筋を這う舌に身体にぴりぴりと電気のようなものが走る。
そして肩に鈍い痛み、彼は噛み付いたのだ。
「いっ、た、い」
それをやめさせようとぐいぐいと彼の頭を押してみたがそれも無駄なことだった。
「逃げないでください」
「んぐっ」
今度は口を塞がれる、勿論彼の唇によって。
先程より遠慮なしに口をこじ開けられて舌を絡め取られる。
もはや拒絶する気力も殆ど無くなってしまっていたけれどまだ慣れないその感触に反射的に舌を引っ込めようとすれば再び絡め取られひっぱられたあと彼は私の舌に歯を立てた。
「逃げないでくださいって言いましたよね」
二度目の忠告。
声色は穏やかだというのにぞくりと背筋が冷えた。
「すみません、なんかちょっと止まらないです」
私の太ももに押し付けられたモノに気が付いてまたのけぞりそうになるもなんとかぐっと堪えた。
「無理をさせたくないとは思っていたんですけどやっぱり知っちゃうとダメですね」
「っ」
彼の指がくちゅりと音をたて私の中に入った。
しつこいくらい触れられて舐められたそこは依然潤いを保っていた。
「もう少しだけ、お願いできますか?」
「あっ、んんっ、テツ、ヤ、っくんっ!」
許可を取る気なんて、ダメだと言ってもやめる気なんてないくせに。
でもそんな事を言えばまた噛みつかれてしまうかとしれないと予感した私はそれを言葉にはしなかった。
「さっきはからでしたけれど次は出来れば名前さんの方から欲しいって言ってほしいんですけど」
もう私の体力は殆ど残っていないというのに彼はそんな事を言って私を仰向けにして覆いかぶさって私を見下ろしている。
声色同様表情もいつもと殆ど変わらない。
それに逆に恐怖を感じた。
「お願いします」
新しいゴムの封を切りそれを素早く装着すると私の脚を大きく広げて熱くて湿ったソコにピタリと押しあてられた。
意地が悪い。
普段の彼からも時折そんな一面はあった。
それでもそれが些細に思える程意地の悪い言葉を続ける彼に動揺してしまっている。
もうここまでやっているのだからいっそ何も言わずに挿れてしまえばいいのにとさえ思い始めた。
でも彼は動かずじっとこちらを見つめたまま動こうとしない。
そして彼の手が私の下腹を優しく撫でた。
余裕さえ感じさせる。
とても今日初めてこういったことを経験した人とは思えない。
「...て、テツヤ君...お願い...い、れて...」
「はい、分かりました」
自分で無理やり言わせた言葉にもかかわらず彼は心底嬉しそうな顔をして再び私の中に自身を押し込んだ。
まだ圧迫感はあるものの最初のような痛みは殆どない。
彼は繋がった場所を見てうっとりとした表情を浮かべている。
「もう少し僕が大人になったら邪魔なものも取っ払えるんですけどね。
まぁ今は我慢します」
再び下腹部を撫でられ冷や汗をかいた。
この先もずっと私といる未来を当たり前のように思い描いているようだ。
もっと違う形で、場所で、言葉で伝えてくれたなら素直に喜べただろうに。
今の彼は少し怖い。
「それで最初の質問には答えてもらえないようですね。
もしも逆の立場だったら僕は勿論受け入れますよ。
その場でこうして抱いて僕だけのモノにして一生愛することを誓います」
ゆっくりと打ち付けられる腰。
手のやり場に困ってぐしゃりとシーツを握ればその手はすぐにはがされ彼の手に絡め取られてしまった。
「折角だからこうしていてください」
既に体力の限界を迎えかけている。
瞼が重い、けれど眠ることなんて許されない。
彼によって教えられた初めての快楽、それはおそろしく。
不満も睡魔も、疲れさえも忘れさせてしまうほど。
甘く心地よい。
「大好きです、愛しています。
だから僕のこともずっと好きでいてください」
こんなものを知る前とはあまりに違う彼に恐怖すら感じている。
それでもその言葉に首を縦に振ったのは恐怖心からではない。
本当に無意識で、からっぽで。
考えるまでもない、当たり前の事だと思っていたからこそ、私はそんな彼を受け入れたのだ。
「...キスして、もっと沢山、もっと沢山名前を呼んで抱きしめて」
きっと私は彼の得体の知れない恐ろしさも既に愛してしまっているのだろう。
end