マーキング

「取り敢えずベッドに入ってくれますか?」

「...部屋に入って3秒で言うのがそれ?」



朝リコ先輩が言った通りその日の放課後の部活は早々に切り上げられた。
帰りに寄り道をする計画を立てていた先輩達が私にも声をかけてくれたけれどこちらが返事をする前にテツヤ君が「今日は僕との先約がありますので」と勝手に断った。
別に約束なんてしていなかった筈なのにと思いながらもどうせ何を言った所で言いくるめられてしまうとのだからと諦めた私は先輩達に挨拶をして彼と共に学校を出た。

彼は必ず車道側を歩き私の歩くスピードに合わせてくれる。
荷物の多い日は手伝ってくれるしとにかく私の話をいつも真剣に聞いてくれる。
時々彼が実は赤司君と同じように2人いるのではないかと錯覚してしまうことがある。
時々こちらが引いてしまうほど暴走してしまうもののやはりこの人が好きだとしみじみ実感して幸福を感じる瞬間が確かにあるのだ。




「昨日洗ったばかりですので綺麗なので安心してください」

「そういう問題じゃないんだよねぇ...」

布団をめくってさぁどうぞ、とポーズを取った彼にため息を溢せば彼はわからない、といった顔をした。
そして何かに気がついたような顔をした後笑顔で言った。

「いえ、違うんです。変な意味とかないんです!」

「じゃあどんな意味があるの」

彼はベッドに腰掛けて私にも座るよう隣をぽんぽんと叩いた。
まるで子供のように無邪気な表情を見せた彼は本当にいつもの彼とは別人だ。
悩みながらも彼の隣に座ると彼は私に枕を手渡した。

「...何?膝枕してほしいってこと?」

「それもとってもそそられますけどそれなら生脚でお願いしたいです」

馬鹿みたいなことを真剣な顔で言う彼を見て言わなければ良かったと後悔した。

「僕の枕です」

「...知ってるけど」

「その枕を使ってるここで今から暫くお昼寝してほしいんです」

意味の分からない彼の頼みに頭の中ははてなでいっぱいになった。
なぜわざわざ昼寝を強要しようとしているのか、彼の考えていることがまるで理解出来なかった。

「...いや、眠くないんだけど」

「別に本当に寝なくてもいいんです。ただその枕に貴方の匂いが移ればそれだけで!」

どうやらシャンプーを変えた件についてはまだ彼の中で繋がっていたらしい。

「...何のために?」

「今夜僕が幸せな気分で眠れます」

何故彼はここまで堂々とした態度でいられるのだろうかと疑問を抱きながらもまぁそんなのいつものことかと自らを納得させた。
私の顔をじっと見つめる彼、私が了承するまできっと彼は折れないということが経験から予想出来た。

「...分かったから、ちょっとどいて」

「はい!」

彼はすぐに立ち上がった。
私は枕を元あった場所に戻しベッドに横になった。
制服ということもありスカートだったので布団をかぶり完全に眠る体勢になって。

「僕も一緒に入っていいですか?」

「...」

彼のお願いに無言のまま布団を少し捲ればすぐさまベッドに潜り込んだ。
至近距離でじっと私を見る彼はとても幸せそうだった。
全く視線を逸らさない彼に気まずくなって目を閉じるとすぐに彼にキスをされた。

「...昼寝だけで良かったんじゃないの」

「あ、すみません。目を瞑った名前さんが可愛すぎてついキスしちゃいました。
...嫌でしたか?」

付き合っている上他に誰もいないのだから問題はない筈なのだけれど、なんとなく騙された気持ちになるのはいただけない。

「嫌、とかじゃないけど...」

「じゃあもっとしていいですよね」

つい先ほどまで悲しげな顔をしていたというのに私がそう言うやいなやすぐに嬉しそうな顔をして唇を寄せたきた彼に呆れながらも再び目を閉じて彼のキスを受け入れた。

何度も何度も角度を変えながらくっついては離れる唇。
自然と彼の手が私の腰に回される。
ぐいと抱き寄せられた頃には彼の舌が口内に侵入していた。

「っん、ぅ...」

どんどん深くなっていくそれを拒もうとして彼の胸を押してみたけれどそれは叶わなかった。
下腹の辺りに硬いものがあたる。
これはベルトのバックルなどではないということも勿論分かっている。
せめてと思って腰を引こうとしたけれど逆に押し付けられてしまった。

「...すみません、やっぱりキスだけじゃ足りなくなっちゃいました」

悪びれなくそう言った彼にさっきはお昼寝するだけでいいと言っていたのに、と不満を抱きながらも何も言わずに彼を見た。
私の目に映る彼はもう完全に男の顔をしていた。

「枕だけではなく貴方の香り全て満喫させてもらってもいいですか?」

「...普通に、普通にえっちするだけならいいよ」

僕にとっては普通です、と自信満々の顔で言う彼に呆れながらも再び顔を近付けられれば目を閉じてしまう。

これから私にとって恥ずかしいことをされると100%分かっていたのに。
もしかしたら私も彼に染まってしまっているのだろうか、と。

「愛しています。心のそこから、名前さんのことを」

私達の間でその言葉を使うにはまだ子供すぎるのではないかと考えながらも彼の首に腕を回し身を委ねた。

彼を感じて悦ぶ身体と心に恥じらいを感じながらも。










(あの、今日履いてたパンツ借りてもいいですか?僕の下着代わりに履いて帰っていいので)

(...暫く話しかけないでください)


end