風邪っぴき

「...大丈夫?」

「大丈夫じゃないです」

放課後彼の家を訪ねると一目で具合が悪いと分かる顔色をした彼が家のドアを開けた。

今日彼は彼は体調を崩し学校を休んだ。
高校に入って初めてのことだったと思う。
休むと連絡をくれたメールは全てひらがなで、変換する余裕もないほど弱っているのだということは察した。
朝練に出てそれをリコ先輩に伝え伝言を頼まれこちらからメールを入れてみたが昼休みになっても彼からの返信はなかった。
それをリコ先輩に伝えると心配だから放課後様子を見に行ってあげたら?と言われ彼の家に出向いたのだ。


「ごめんね、とりあえずベッドに戻って。
これ、ゼリーとか色々買ってきたけど何か食べられそうなものあったら食べて」

まともに話が出来る状態ではないとすぐに気が付いて彼を再びベッドに寝かせてお見舞いの品を渡して帰ろうと考えた。

けれど彼はその場を動こうとせず私の手を取った。

「...まだ帰らないでください」

そう言って縋るような視線を向ける彼にどうしたものかと悩むも握られた手の体温にとにかく今は彼を休ませることが最優先だと考えた。

「...まだ帰らないからとりあえず寝て。上がらせてもらうね」

私は了承をとって靴家に上がらせてもらい彼の背を押して部屋へと促した。
高熱が出たせいだろう、触れた背中は汗で湿っていてTシャツが身体に張り付いていた。

「水分摂った?一度着替えた方がいいね」

彼の部屋に入りベッドに座らせた。
飲みかけのスポドリがまだベッド際に置いてあったのでギャップを外して彼に渡した。
彼はそれを全て飲み干した。

「替えの服ってどこにあるの?私が出しても大丈夫?」

彼は首を縦に振りクローゼットを指差したので扉を開け中にあった衣装ケースを漁りTシャツと短パン、念の為下着も取り出した。

「タオルってこれ使っても大丈夫?」

「はい」

洗濯が終わったものをそのまま置いてあったのだろう、机の上に置かれたタオルを手にとった。
洗面所を使わせてもらうことの許可をとりタオルを濡らしに向かう。

「...早く帰ってきてくださいね」

ただタオルを濡らしにいくだけだというのに彼は不安そうな顔でそう言った。
本当に彼は弱っているらしい。



「...それじゃあ...着替える前に身体軽く拭くけど、私がしても大丈夫?それとも自分で拭く?」

「...名前さんに拭いてほしいです」

彼の返事を聞きとにかく早く済ませてしまおうと思って彼のTシャツを脱がせた。
負担にならぬよう出来るだけ優しくタオルで彼の身体を拭いていけば彼は気持ちよさそうに目を閉じた。
そんな彼をみてほっとしつつ上半身を拭き終え新しいTシャツを着せた。

「...下なんだけど.....一応下着も出したけど、着替える?」

彼は私の問いに頷くとのろのろと立ち上がりズボンに手をかけた。

「あ、いやちょっと待って!さすがに下は、その、自分で拭いてほしいから、後ろ向いてるから」

そう言って彼にタオルを握らせ背を向けた。

「...全部名前さんに
拭いてほしかったです」

彼は寂しそうにそう言いながらも本当に気力がなかったのだろう。
普段であればして欲しいことがあれば諦めが悪い彼が後ろで服を脱ぎ汗を拭い始めた。
少しして着替え終わった彼がベッドに座り終わりましたと声をかけた。

「おつかれさま、どうする?今何か少し食べる?」

「...今はいいです、すみません」

元々少食ではあったけれも何も食べられないのはよくない。
かと言って無理に食べさせても吐いてしまうかもしれない。
だから私はとりあえず彼をベッドで寝かせることにした。
布団をかけてゼリーと一緒に買ってきた冷却シートを彼の額に貼ってあげると彼の表情は少し和らいだ気がする。

「じゃあ長居してもゆっくり休めないと思うから私は帰るけど、家の鍵ってどうしたらいいかな?」

彼の頭を撫でてそう問いかけると彼は再び悲しそうな表情を見せた。

「いやです、もう少しそばにいてください...」

私の手を握って泣きそうな顔で懇願する彼があまりに普段と違うものだから、私はどうすべきかと悩んだ。

「...寒いんです、凄く。暖めてほしいです...」

彼はそう言って布団をめくった。
私に入れと言っているのだろう。
だがそれはさすがにどうなのだろうかと躊躇しつつもあまりにも寂しげな目を向けるものだから私は彼の願いを聞き入れた。

「...少しだけ、ね?」

ベッドに上がり彼の隣で横になればすぐに彼は私に抱きついた。
甘えるように胸に顔を埋めた彼を抱き返して頭を撫でれば彼は大きく息を吸ってはいた。

あれだけ汗をかいていたというの寒いということはかなりの高熱が出ているのだろう。
そんな彼とこんなに近くに、まず間違いなく私も貰ってしまうなと気付いていなかったわけではないけれど今日の彼を見てそのまま帰ることなんて出来なかった。

「名前さん...」

「...ちょっと待って」

熱っぽく私の名を呼ぶ彼、そこになにか妙な違和感を感じながらも比喩ではなく熱を出しているのだから当たり前だと自分を納得させようとした。
けれどそれは彼に腰を抱き寄せられた瞬間覆されることになる。

「...お願いですから...」

「いや、あの、今の自分の状態分かってる?」

あれほど儚げな顔をして弱っていた彼に硬い何かをぐりぐりと太ももに擦りつけられた。
なにか、だなんて。
それが眠気による生理的なものであったなら男である以上それは致し方ない、不可抗力だ。
だがそれがそうでないことは分かっている。

彼の手は私の背を直接弄っていたのだから。

「いくらなんでもこんな時に何考えてるの!」

「...でも...すみません。貴方の匂いを嗅いだら興奮してしまって」

彼は私を上目遣いで見つめてそのまま弄っていたその手で下着のホックを外した。

「...もう一回汗かいたら、もしかしたら楽になるかもしれないです...」

「っ絶対に安静にしてた方が楽になります!」

私の拒絶も無視して彼は私の上に覆い被さり制服を下着ごと捲りあげて胸に吸い付いた。
元々2人きりになると恥ずかしいことばかりしてくる彼だがここまで強引なことをされたのは初めてだ。

「...鼻がつまってなくて、よかった、れす...」

顔を胸に押しつけ何度も何度も深呼吸を繰り返す彼に引きながらも彼の頭を押し退けようとした。
それでも肌に直接触れる彼の体温があまりにも熱かった為思い切り力を込めることは出来なかったのだけれど。

「...今日は、さすがにキス出来ないので...その分いっぱいこっちにします...」

そう言って首筋や肩、鎖骨にと次々に吸い付いていく彼。
そもそとこれだけ接触していては今更キスをしなかったところで何か変わるのだろうかと疑問を抱きながらもベッドから抜け出そうとしたところを無理やり引き戻された。

「乱暴なことはしたくないんです。...だから逃げないでください」

抵抗してこれ以上彼を興奮させてしまえば風邪も長引いてしまうかもしれない、何より今の彼に何を言ったところで聞き入れることはないだろうと悟った私は結局そのままされるがままになってしまった。

今日はキスはしないと自ら宣言した彼が結局我慢出来ず寧ろ普段より激しいのではないかというくらいキスの荒らしを降らせた、それにより翌日私も高熱を出すはめになったのは言うまでもないこと…












(近付かないで)

(なんでそんな酷いこと言うんですか!僕は名前さんがいないと生きていけないのに!)

翌日2日間休んで学校に行って会った彼がこの日の事を殆ど覚えていなかったことに腹を立てて一日無視をしたのはまた別のお話


end