「すみませんでした」
部活終了後一日無視をきめこんでいた私を半ば強引に体育倉庫へと連れ込んだ彼は私が逃げられないように壁際に追い込み私の両手を握って壁に押し付けて謝罪の言葉を口にした。
どう考えても許しを請う体勢ではないと思う。
「...痛い。...逃げないから離して」
彼は本当だろうかと不安の表情を浮かべたまましぶしぶ手を離した。
私だっていつまでも彼と気まずい状態が続くのは嫌だし反省しているようだからもういいかという気持ちにはなっていた。
「...もういいけど、...でも外でああいうの、私はやだ」
「ぅ...すみません、でした」
泣きそうな顔をして私の手を握る彼の手をもう片方の手でさすると彼は更に空いた手で私の手を握った。
「...男の子ってなかなかコントロールがきかなくて大変って聞いたことあるけど...でも私の2人っきりの時以外はああいうの嫌だから...」
彼は私の手を持ち上げてそのまま手の甲にキスをして自身の頬に私の手を擦り付けた。
「すみません、僕、自分でもわけがわからないくらい貴方に出会ってからおかしくなったんです。
貴方と出来ない日貴方を想って自分を慰める事がびっくりするくらい増えて」
「テツヤ君、わかった。もう許したから、もういいよ、帰ろっか」
また嫌な予感がして早々に話を切り上げようとしたけれど彼は話すのをやめない。
「僕この一年貴方以外で興奮出来なくなってしまって、どんなにいやらしいものを見たところで貴方の写真や録音した貴方の声のように興奮することが出来なくて...!」
「ねぇ、待って。写真はともかく録音した声ってなに?いつなんの声を録音したの?」
知らない方がよかった情報を聞いてしまい頭が痛くなってきてしまった。
それがどんなものかは分からないけれど消せと言ったところで彼が素直に消す筈もないということはもう分かっている。
「...名前さん」
「うっ...も、もう!そんな目で見ないでよ!」
私の腰を抱き至近距離でジッと私を見つめる彼。
目はうっとりとしていて明らかに熱を帯びている。
何度も見たその目、彼が何を考えているかなんて分かりきっている。
「好きです、だから今日一日触れさせてもらえない上、口もきいてもらえなくて...寂しくて死んじゃうかと思いました」
「そ、そんな、大袈裟、な...」
彼は首筋に顔を埋めて大きく息を吸った。
「はぁ...ほんと、なんで貴方ってこんなに良い匂いがするんでしょうか」
「っ、し、知らないよ!あの、ちょっと」
それが原因で一日私が無視を決め込んでいたというのに彼は性懲りもなくまたソコを硬くして私の腰をぐいぐいと押して擦り付けていた。
「...こうしてくれているだけでいいので、ここで抜いてもいいですか?」
「は!?え、あ、いやっ、あのここって」
彼は私の返事を聞くこともなく下着ごとズボンを少しずり下ろして硬く立ち上がった自身を露わにした。
「っはぁ...名前っ、さん...!」
彼は自身を手で擦りながら耳元で何度も私の名を呼び大きく深呼吸を繰り返す。
やめさせなければと思う気持ちがある筈なのに身体を少しでも動かそうとすれば彼に強い力で押さえ込まれて。
かと言って大きな声を出しこんなところを人に見られてしまったらと考えるとそれも出来なくて。
「...テツヤ、君」
「っっ、もっと、もっと名前、呼んでください」
彼の手を動かすスピードが上がったのを見てもう私は彼を止める事を諦めた。
止められないのなら早く終わらせてしまおうとそう開き直ったのだ。
どう考えても良い事ではないと分かってはいるのだけれどもう私に彼を止められる自信は少しもなかったから。
「テツヤ君...好き」
彼の背に手を回し耳元でそう囁いて耳にキスをすれば彼は身体をびくりと震わせ女の子のような声を漏らした。
「大好きだよ、テツヤ君」
「っはぁっ、名前、さんっ!そんなことっ、されたらっ!」
ちゅっちゅっと音を立てながら何度もキスをすると彼は私の唇に噛み付くようなキスをしてそのままぶるりと身体を震わせた。
そして私の太ももに生温かい液体がかけられた。
どろりとしたそれはゆっくりと私の足を伝っていく。
それはけして気持ちのいい感触ではなかった。
「...テツヤ君、とりあえず早く出ないと。
人が来たら困るから...」
部活終わりでティッシュを持っていなかった私は仕方なくハンカチでそれを拭った。
薄いハンカチ一枚だったから彼のモノまで綺麗に出来る筈もなく彼もそういった類いのものを持っておらずどうしようかとお互い無言になってしまった。
一つ方法は思いつきはしたものの出来ればしたくない、というかすれば更に妙なことになってしまう可能性がある。
でもさすがにここに彼を放置していくのも心が痛む。
「...テツヤ君、これ、そういうことしたいって事じゃなくて、帰らなきゃいけないからすることであって、とにかくそういうことじゃないからね?」
「え、何をするんです、っ!!??」
私は彼の前にしゃがみ込んで欲を吐き出し中途半端下を向いた彼のモノを口に含んだ。
勿論彼を気持ちよくする為ではなく彼のモノについたそれを拭う為に。
とくんとまだ残っていた液が飛び出し舌に伝わる独特の味と匂いにウッとなったが素早くそれを舐めとって急いで彼の下着とズボンを引き上げた。
「...は、やくかへろ」
困惑する彼の手を取り体育倉庫を出て私は外の水道で口をゆすいだ。
その瞬間ここに水道があったならハンカチを洗ってそれで拭えば良かったと気が付いた。
がっくりと項垂れる私の横で手を洗う彼。
まだ余韻に浸っているのか、彼の目は熱を保ったままだった。
彼のもので汚れたハンカチ、これをこのまま持って帰るわけにもいかずそれも洗ってきつく絞った。
この後家で洗濯機で洗えば綺麗になるとは分かっているのだけれど多分もうこのハンカチを使うことは出来ない気がすると考えた。
「...テツヤ君、もうこんなこと、これっきりだからね」
「......はい」
彼に釘を刺すと妙に長い間を開けて彼は返事をしてすみませんと謝った。
多分反省はしている、でもこれはこれで良かった、なんて考えているんだろうなという想像が出来た。
学校でこんなことをして今日は運が良かっただけなのだと強く言い聞かせると彼は悲しそうな目で私を見つめるものだからまるで私が彼をいじめているような感覚におそわれた。
「こういうことはね、本当に2人っきりの時にしよ?
それだったらある程度出来る事は私も付き合うから、ね?」
「...じゃあ約束した日もしてくれますか?」
いいよと頷けば彼の表情が明るくなった。
「ほら、早く着替えてかえ」
「名前さんの自慰が見せてもらえるなんて楽しみすぎて今夜眠れる気がしないです!」
私の言葉を遮るように言った彼の言葉に私は洗ったばかりのハンカチを地面に落とした。
固まる私をよそに彼はそのハンカチを拾って洗い直して私の手に握らせた。
「すぐに着替えてきますので少しだけ待っていてくださいね」
上機嫌でそう言って私の頬にキスをして部室へと走る彼の背中に手を伸ばすけれどそれは掴める筈もなく。
「...そ、そんなことは一言も言っていないんだけどっ!!!???」
私の声は誰にも届く事もなく消えていった。
頭を抱えその場にしゃがみ込んだ私は必死で願った。
週末季節外れの台風が発生しますように、と。
結局そんな奇跡は起こる筈もなくその週末は腹が立つほどの快晴となりめいっぱい抵抗をしてみたものの信じられない辛い恥ずかしいことをさせられてしまったのは言うまでもないことだ。
(もうおよめにいけない)
(何言ってるんですか!名前さんは僕のお嫁さんになるんですよ!)
end