決戦に備える

新協戦以降も順調に勝ち進む誠凛。
でも更に強い学校と戦う時の為にあまり試合に出られていないテツヤ君は少し物足りないようでそわそわとしていつもより落ち着きが無い。
そんな中迎えた4回戦、対戦校はテツヤ君達とちょっとした因縁があるチームだった。
火神君と2人揃って明らかに挑発をしているテツヤ君を見て思わず苦笑いを浮かべてしまった。

そしていよいよ公式戦で姿を現したテツヤ君の元チームメイト緑間君に火神君は試合をする前から挑発的な行動をとった。
火神君の言っていることは確かにあり得そうだと思いながらも握手を求められたと思い手を差し出してくれた緑間君は真面目ないい人なのではないかと内心考えた。

これがなければ緑間君もあれほど火神君を試合の場以外で敵視することはなかったんじゃないかなと思う。
彼は多分潔癖な方だと思うし怒っても仕方のないことだとは思う。
まぁ私からすれば火神君のその行為自体子供っぽくて可愛くみえてしまったのだけれど。

「楽しそうですね。
やっぱり火神君のこと気に入ってますよね、名前さんって


「え、あ、いやそういうわけじゃないんだけど」

顔が笑ってしまっていたのだろうか。
テツヤ君にそんな風に言われてしまいそれを訂正するとテツヤ君は小さくため息をついて僕も少し挨拶をしてきますとベンチから立ち上がった。

緑間君と向かい合う彼を見て首が痛そうだ、なんて思った事は彼には絶対に秘密だ。
別に彼が小さいだなんて思っていない、緑間君が大きすぎるのだ。
そしてこの大会には緑間君より背の高い人がまだ複数人いるのだから驚きだ。

その後見学した秀徳高校の、彼のバスケはかつて見た事もない程美しく力強いプレイだった。
バスケットボールは案外重い、それをあんなに高く正確に。
才能が桁違いだったとはいえどれほどの修練を積んできたのだろう。
試合の最中テツヤ君を見上げた緑間君は一体何を思っていたのだろうか。

試合の後準決勝、決勝と王者と2連戦だと改めて説明したリコ先輩に火神君もテツヤ君も怖気付くどころか寧ろ楽しみだと息巻いた。
こういう豪胆なところは本当に男の子だなぁと思うし私も好きな考え方だ。
努力を重ねてきたからこそ強い相手と戦うのは楽しいことなのだろう、と。
その日の午後は試合前ということもあり休息の日となり解散した。






「テツヤ君、カントクはああ言ってたけど、休まなくていいの?」

「はい、だから休みにきてます」

テツヤ君は私にべったりとくっついている。
家でゆっくりした方がいいんじゃないかと思って言ったのだけれど彼はそれに気づかぬふりをした。

「最近名前さんが火神君や他の部員と仲が良いので妬いてます」

「え、そう、かな?まぁ可愛がってもらっているなとは思うけど」

カントクは勿論先輩達はあきらかに私を後輩として可愛がってくれているだけだから彼がヤキモチを妬く必要なんてまったくないのに。
火神君や降旗君達もチームメイトとして気を掛けてくれていることは明らかだ。

「それを素直に喜んでいる名前さんにも少し腹が立つんです」

「あ、えっ、ちょっとテツヤ君!?」

彼はそう言うと私を引っ張り自身の膝の上に横向きで座らせた。
ソファーの上とは言え彼は華奢な方だし大丈夫なのかと不安になった。
というよりなにより今日はリビングで過ごしていたのでもし今母が帰ってきたらと考えると不安でしかなかった。

「名前さんの事は僕が1番可愛がってあげたいんです」

私の腰をぎゅっと抱いて私の胸に顔を埋めた彼を見てこれは寧ろ私に甘えているのではないかと思いながらもそれを口には出さなかった。

「...じゃあ、可愛がるって何してくれるの?」

彼の頭を撫でてそう訊ねると彼は一瞬悩んだあと口を開いた。

「沢山抱きしめて好きですと伝えこれでもかというくらいキスをします」

真面目な顔をして一体何も言うのだと内心呆れながらもそれは結構嬉しいかもしれないなどと考えてしまった。
でもやっぱりこの体勢は恥ずかしいから降ろしてほしいと訴えてみたけれど彼は笑ってこう言った。

「組み敷かれる方が好みですか」

その状況を想像し私の顔に一気に熱が集まった。

「...このままでお願いします」

私がそう言うと彼は少し残念だと言いながら私にキスをした。
この後母が帰ってくるまでの間彼は宣言通りこれでもかという程私にキスをしたものだから彼が帰った後も唇に彼の唇の感覚が残り腫れてしまったのではないかと思い何度も唇を触ってしまった。
その日はそのまま彼もうちで夕食を食べることになって夜まで一緒にいたものだからそんな私を見て彼は楽しそうな表情を浮かべていた。


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