「折角のおやすみなのにごめんね」
「いえ、大丈夫です」
貴重なオフの休日私はリコ先輩と一緒にIH結果のデータをまとめていた。
テツヤ君は一年生達とストバス大会に参加している。
「黒子君の応援に行きたかったんじゃない?」
「テツヤ君の試合はこれからも沢山見られますから」
ウィンターカップで、そう続けるとリコ先輩はニヤリと笑う。
「名前ちゃんはもううちが勝ち進むって信じてるってことね。
そういうところ大好きよ!」
「勿論優勝すると信じてます。...というかしてくれないと困りますよ。
全裸で告白なんて、する方もされる方も」
恥ずかしい恥ずかしくない以前にそんなことになればまず確実に先生から大目玉をくらうことになり下手をすれば親を呼び出されてしまうのではという恐れもある。
まぁなにより日向先輩以外の他の先輩達は分からないけれど少なくともテツヤ君の好きな人=私だ。
つまり私がテツヤ君に全裸で愛の告白を叫ばれることになることは確定している。
想像しただけで反応に困ってしまう。
「黒子君が名前ちゃんに一体どんな愛の告白をしたのか気になるわ!」
「...リコ先輩が卒業しちゃってもずっと私と仲良くしてくれたらいつかお話しますよ」
彼女は当然大学に行くだろうしそうなるとお互い時間の都合は付きにくくなって自然と距離が出来てしまう、それは前の人生で経験し実感した事だった。
でも今私が彼女に言ったのは今その話題を逸らす為の嘘ではない。
これからも仲良くしてほしいという私の願望から出た言葉だった。
私のそんな気持ちに察してくれたのか彼女はにっこり笑って私の頭を撫でた。
「当たり前じゃない!
名前ちゃんはずっと可愛い私の後輩よ!」
真っ直ぐな言葉でそう言ってくれた彼女が改めて好きだと思った。
今日は休息日だと言うのに日向先輩達2年生は軽く身体を動かして体育館にきているらしい。
少し様子を見に行くという彼女に着いて体育館に向かった。
中に入るとがっつりバスケをしている先輩達に彼女は呆れた様子を見せた。
軽くやってるだけだと言っていたけれど。
そんな先輩達に彼女はIHの結果について話始めた。
彼女の話が終えた後なんやかんや普段の部活と同じように練習を始めた先輩達。
みんなIH結果を聞き闘志のようなものが芽生えたのだろう。
それに合わせリコ先輩の激も飛んだ。
そんな彼女の号令で一区切りついたところで着替える為体育館を出ようとした先輩達が入り口の前でなにやら騒ついていた。
なんだろうと思ってそちらを見て思い出した。
桃井さんが今日ここを訪れるということを。
「はい、これ。タオルも使って、髪もしっかり拭いてね」
「あ...うん、ありがとう....」
以前のような敬語はやめた。
既に同い年だと分かっているし時には萎縮させてしまうこともあるから。
でしゃばった行動だろうかと少し悩みながらも私の着替えを桃井さんに渡した。
彼女の大きな胸をみんなに主張するような服を着せ皆の前に出すのは正直どうかと思ってのことだった。
私が部活用に着ているTシャツはワンサイズ大きいゆったりとしたものだし柄もないから多分大丈夫な筈だと思ったからだ。
「じゃあ、外に出てるから風邪をひかない為にも早く着替えてね」
「あっ、ちょ、ちょっと待って!」
ドアノブに手を掛けたところで彼女に手首を掴まれ引きとめられた。
少しだけ話せませんか、と。
今この状況で言うという事は私と2人きりで話がしたいということなのだろう。
彼女が私と話すこときっとテツヤ君のことだろう。
少し怖いと思いながらも私はそれを承諾した。
先に着替えるよう促すと彼女は素直に服を着替えた。
サイズは問題ないようでほっとした。
「...この前は、ごめんなさい」
「...ううん、私の方こそ人前であんな風に偉そうなことを言ってしまって、ごめんなさい。
それにあの後ちゃんとリコ先輩に謝ってくれたし私にまで謝る必要なんてないよ」
あの場であの言い方は彼女に恥をかかせることになってしまったと後悔していた。
でもテツヤ君が私と付き合っていることを彼女に伝えたと聞いてもう私から彼女に接触することも彼女の方から私に接触することもないだろうから謝る機会はないと思っていた。
「ありがとう、私に謝罪する機会をくれて」
彼女がここに来たのはそれが目的だったわけではないと知っている。
だから私なんて無視したっていいのにそれでも私と話がしたいと呼び止め謝ってくれた。
素敵な女の子だと思った。
「...テツ君のこと、ごめんなさい...私、何も知らなくて...」
「ううん、それは本当に...」
あの時苛立ったのは本当にテツヤ君にたいしてだけだったから。
「...中学の頃からずっとテツ君の事が好きで...テツ君にそれを聞いて凄くショックで...しばらく落ち込んだけど、でも沢山考えて、今日また貴方と会って...ああ、テツ君が好きになった人ってこんなに素敵な人だったんだなって...」
泣きそうに笑う彼女を見て胸が痛んだ。
そんなことはないと思いはしたけれど彼と付き合っている私がそんなことを言うのは逆に失礼だと思いそれを言葉にする事はしなかった。
「...中学の時、一度話したことあるの、覚えてる?
...テツヤ君の家の前で」
「...うん、隣の家に住んでる幼馴染だって...テツ君に聞いて、それで思い出したの」
私が言おうとしていること、それだって彼女にたいして失礼なことなのかもしれない。
上からだと、そう思われるかもしれない。
でも私より近くで彼と同じように傷付いて彼を心配してくれていた人だから。
「...私が言うことじゃないって分かってるけど、あの時のテツヤ君をちゃんと見ていてくれたこと、本当にありがとう」
家に訊ねてきたような人は彼女だけだった筈だから。
彼の沈んだ気持ちを本当に理解してくれていたのは彼女だけだったと思うから。
「でも...ごめんなさい、貴方がどれだけ素敵な人だと知っていても、私、...本当にテツヤ君の事が好きだから、だから彼が私を好きでいてくれるなら私から彼の手を離すことは出来ない...」
こんな事を彼女に伝えるつもりなんてなかったのに、彼女だってこんなこと聞かされたところで困ると分かっているのに。
「...謝らないで?うん、もう十分...やっぱりテツ君が好きになった女の子は、素敵な女の子なんだなって分かったから」
彼女は涙を流しながら笑ってそう言った。
それが本当に彼女の本心かなんて分からない。
でも全く嘘だとは思わない。
「...ありがとう」
ごめんなさい。
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