強敵との再戦

丞成高校との試合、テツヤ君と火神君にとって初めての木吉先輩と挑む公式戦。
練習で見て知っていたとはいえやはり試合で見るのとは違う。
試合で見る木吉先輩はとても頼もしかった。
火神君はマークが張り付き思うように動けず苛立ったり気合いが入りすぎてから回ってしまったけれど得点源が増えたこともあり誠凛は
丞成を大きく引き離し勝利した。

これは持って生まれた知識の影響だろうか。
その試合の最後に見せた火神君のプレイ。
その瞬間背筋がぞくりとしたのは。

試合の後テツヤ君は火神君と少し練習がしたいと言うのでそこで別れた。
合宿が終わってから彼は部活以外の時間もほとんどいつもボールを触っていた。
そして何かを掴んだ彼は私とさつきちゃんの前でその成果を見せた。
彼が今日言っていた練習というのはその仕上げだ。


翌日は泉真館、IHの時とはもう別物となった誠凛は泉真館を圧倒した。
テツヤ君の新技をまだお披露目せずとも。
隣のコートで試合をしていた秀徳もまた...。
次の試合はいよいよ秀徳とだ。
テツヤ君と火神君は勿論みんなが静かに闘志を燃やしている。
それは秀徳の選手も同じで、互いの視線が交わっていた。






「いいの?なんて、今更だよね」

「はい」

自宅に帰り夕食を済ませたあと少しだけ会いたいと言われ外に出た。
明日に備え早く眠る為にも家には上がらずに玄関先で少しだけ話をする為に。

「貴方の顔を見ると心が落ち着くんです」

「ならこの顔に産んでくれたお母さんに感謝しなくちゃね」

彼が言っているのはそういうことではないと分かっているけれど私はそれに冗談で返した。
それを彼も分かっているからこそ敢えてそれを訂正することもしなかった。

「合宿で会ってからもう4ヶ月近く経ったんだね」

「はい、...あの時は緑間君のことを一度も抜けませんでした。練習試合にも勝てませんでしたし」

あの時はテツヤ君は緑間君に試行錯誤してプレイしていたことを咎められたんだった。
でもきっとそこに彼の悪意や軽蔑といった感情はなかったように思う。
多分帝光のメンバーでバスケに向き合う真剣さは1番似ていた2人だと思うから。
この世界で直接聞いたわけではないけれど確か彼はテツヤ君を尊敬しているとまで言っていた筈だ。

「でも明日は絶対に負けません」

力強い目をして彼はそう宣言した。
本当に男の子は怖い。
こちらが知らない間にどんどん大人になってしまうのだから。
それは彼が成長しているということなのだから、彼の保護者のような時間を過ごしたこともある私としては嬉しくもあり寂しくもある。

もっともそんなこと、彼の恋人となった今は絶対に言えないことだけれど。

「テツヤ君」

そんなことを考えていると無性に彼に触れたくなり、私は彼に抱きついた。
テツヤ君はそんな私を当たり前のように抱きしめ返してくれた。

「珍しいですね、名前さんから抱きついてくれるなんて。
普段からもっとしてくれてもいいんですよ?」

テツヤ君はそう言って私の額にキスをした。
彼とキスをするのはもう何度目になるのだろうか。
彼に告白された日からほぼ毎日のように、それ以前からだって唇をのぞけば数えきれない程だ。

こんな彼と幼少期を共にして、仮に今彼と付き合っていなかったとしてもその先で彼以上に好きになれる人なんていないんじゃないかって、そんな事を考えた。

「テツヤ君、こっちがいい」

「...本当に、貴方って時々ずるいですね」

顔を上げ彼の目を見つめ、目を閉じた。
彼はすぐに察して唇にキスをした。

「...ありがとう、テツヤ君。...そろそろ寝よっか」

「...はい、また、明日...」

彼はもう一度キスをして私の背に回していた腕を解いた。
自宅に入る私を見届ける彼に扉を閉める前小さく手を振ると彼も同じように手を振ってくれた。

自室に戻るとメールの着信音が鳴った。
ついさっき別れたテツヤ君からだった。

『冷えてしまったと思いますので風邪をひかないように暖かくして眠ってください。
おやすみなさい』

それにテツヤ君もねと返信して携帯をベッドサイドに置いた。


明日は彼にとって、誠凛のみんなにとって特別な試合になるだろう。


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