教えを乞う

翌日アレックスさんも一緒に秀徳戦を観に行った帰り火神くんは師匠であるアレックスさんと、私は青峰君の所にシュートを教えてもらいにいくというテツヤ君と別行動をすることになった。
私としては他の誠凛の部員と共に、と思っていたのだけれど今回はリコ先輩から彼を見張るよう、カントク命令だから、と言われてしまった。
確かに彼は無茶をするところはあるけれど試合を直前に控えそこまで無茶をする心配をしていなかった私としては少し複雑だった。
彼の集中力を奪うことにならないだろうかという心配もあった。

駅の近くで青峰君と待ち合わせをしてとくに前置きも無しにシュートを教えてほしいと言ったテツヤ君に青峰君は意味が分からないという顔をした。
でもそんな青峰君をお構い無しに彼はバスケゴールのある公園と引っ張っていく。
なんというか本当に怖いもの知らずにというか。
彼がそれだけ必死だということは分かっているけれど今回ばかりはさすがに青峰君に少し同情してしまう。

眠れていないという彼の顔には確かに疲れが見えた。
でもそんな状態でも彼は無性にバスケがしたくなったと言ってシュートを教えてくれるというのだから、テツヤ君は本当に良い友達を持ったと思う。
1番の相棒が彼だったからこそ中学の頃の彼はあれほど傷付き心が折れてしまったのだろうなと思った。
もっともそんなものは全て私の推測にしかすぎないのだろうけど。

そんな事を考えながらテツヤ君がボールを投げる姿を見ていた時にポケットの中の携帯が震えた。
それはさつきちゃんからメールが届いたことを知らせる着信だった。
彼女とは時々こうして連絡を取るようになった。
今日届いたのは青峰君にドタキャンされたという愚痴のようなメールだった。

そういえば彼女は今日彼と約束をしていたのだったと言う事を思い出し申し訳ないことをしたと罪悪感を覚えた。
今青峰君はテツヤ君にシュートを教えてくれているということと謝罪を送るとさつきちゃんは私がいるなら自分も行くからどこにいるこ教えてほしいと返事が返ってきた。
こんな時間に大丈夫だろうかと一瞬悩んだけれど本来の予定を変えさせてしまったのはテツヤ君のせいだと思えばそれを拒むのもなんだか、と思い場所をメールした。
帰りは青峰君が送ってくれるだろうし大丈夫か、と思うようにした。




「名前ちゃーん!!」

「っと、さつきちゃん早かったね」

15分もしないうちに現れたさつきちゃんは勢いよく私に抱きついた。
なんとか彼女を抱き止めたのだけれどなるほど、とテツヤ君がこういう時彼女に少しそっけなく接していた理由も少し分かってしまった。
あまり頻繁にやられていては腰を痛めそうだ。

「すぐ近くにいたの。
大ちゃんったらほんとに直前に言うんだもん!」

さつきちゃんはそう言って青峰君にあっかんべーと舌を出した。
青峰君はめんどくさそうな顔をして俺だって急に呼び出されたんだからしょうがねぇだろうと言った。

「さつきちゃんごめん、今日は本当に、テツヤ君がいきなり...余裕がなくって...」

「ううん、いいんだよぉ!
名前ちゃんとテツ君には怒ってないから!」

青峰君が不憫だと思ったけれどこれも2人の距離感なのだろう。
青峰君もそんなさつきちゃんを強く拒むようなこともないし仲が良いからこそ、なのだと思う。

「つかお前なんで来たんだよ。
騒ぐんなら気が散るからどっか行ってろ!」

「なんで大ちゃんにそんなこと言われなきゃいけないのよ!
いいよもう!名前ちゃん、終わるまで私とどこかでお茶してよ!」

彼女の提案を聞き正直そうした方がいいかもしれないと思ってテツヤ君を見た。
テツヤ君はガーンといった顔でこちらを見たものだから胸が痛んだけれど青峰君に真面目にやんねぇなら帰んぞ、と言われてしまい気を付けてください、と言って私たちを送り出してくれた。

「じゃあ行こっ!名前ちゃんとデートするの初めてだね!」

「これってデートなの?」

彼女は私の腕を組んで私を引っ張った。
私はテツヤ君に手を振り彼女に着いていくことにした。

見張っていろと言われたのに後でリコ先輩にバレたら叱られてしまうだろうかと考えたけれど多分彼女は気を使ってくれただけだと思うから。
私がテツヤ君といたいだろうと、そう思って言ってくれたことなのだろう。
彼女は本当に優しい人だから。

「どこのお店がいいかな?名前ちゃんどこか行きたいところある?」

「んー、じゃあ私がよく行くお店でもいい?」

「勿論!」

元気に返事をして笑うさつきちゃんを見てやっぱり可愛いなぁと改めて思いこちらも自然と笑みが溢れた。


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