誠凛の部員と合流すると日向先輩には遅いと叱られてしまったけれど試合前ということでそれ以上責められることはなかった。
海常との試合を前にして先に秀徳と洛山の試合が取り行われる。
キセキ世代のメンバー同士がやり合うのは青峰君と黄瀬君以来だ。
その試合が始まるとすぐに試合が始まることもありこの試合を前半は全て観戦する時間は無かった。
インターバル中アップの為にコートに入ったテツヤ君は元チームメイトの赤司君と顔を合わせた。
そんな2人の間に入るように赤司君に声をかけた火神君は赤司君とその気迫のようなものに文字通り圧倒されてしまった。
慌ててテツヤ君が火神君を心配して駆け寄ったけれど。
赤司君に向けられた目に彼も少しだけ気後れしているように見えた。
コートの外にいる私でさえ彼の存在感に圧倒され身震いしてしまったのだ。
至近距離でそれを浴びた彼らはとんでもないプレッシャーを感じただろう。
でも火神君はまだそこで折れる様子はない。
立ち上がり強い目で赤司君を見据えていた。
緑間君を含めた秀徳の選手達はその恐ろしい程のプレッシャーから逃げることはせず、全力で戦った。
テツヤ君は緑間君がこのままでは終わらないと、諦めない限り勝負はわからないと彼らを真っ直ぐ見据えていった。
テツヤ君は緑間君がどれほど真面目に真摯にバスケと向き合ってきたか知っているから。
テツヤ君はいつだって諦めずに何度も何度も挑んできた人だから。
だから諦めない人がいる限り可能性は捨てない。
秀徳が見せたとっておき、それは一体どれだけ練習を積んだ結果完成させた技術なのだろうかと。
言葉を失ってしまう連携プレイだった。
その後緑間君のシュートは一筋の光を見せた。
希望が、勝利が。
それでも、それでも届かなかった。
結果は洛山の勝利で終わった。
緑間君の差し出した手を赤司君は取らなかった。
その姿を見て胸が切なくなったのはきっと私だけではない筈だ。
どちらにせよ今から戦うのは洛山ではない、海常だ。
彼らと戦うのは春の練習試合以来だ。
誠凛は勿論練習試合とはいえ一度負けてしまった海常の気迫は凄まじい。
一見して静かな、でも確実に、ぴりぴりとした緊張感が場を包んでいるのを肌で実感した。
黄瀬君は他のテツヤ君の元チームメイトと比較するとテツヤ君は勿論火神君に対しても好意的で明るく接してくれる。
それは今だって同じ筈なのに、彼が纏うそれはなんだか今日は違っていて。
絶対に勝つという、そんな気迫が感じられた。
試合前のアップで黄瀬君と火神君、それぞれ牽制をかけあった。
両校の試合へのボルテージが上がっていく。
コートに入りキャプテン同士挨拶を交わす。
IH予選の頃より日向先輩の背中が大きく見えた。
みんな気合いは十分だけど良い意味でリラックスしているように見えた。
ベンチからコートにいるテツヤ君と目が合った。
絶対に勝ちますと、そう言っているような目をしているように見えた。
黄瀬君と話をするテツヤ君はどこか楽しそうで。
私にはけして見せてくれなかった弱い部分、劣等感のようなものを、その胸の内を話す彼を見て嬉しくなった。
それを吐露したということは彼が克服出来たということだから。
いよいよ始まる。
海常高校との初めての本気の試合が。
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