カーテンから漏れた夕陽の眩しさに目を覚ました。
あの後眠ってしまったらしい。
その時の事をよく覚えていないけれど目の前で眠る彼がある程度後始末をしてくれたようだ。
身体の不快感なはい。
「(綺麗な寝顔)」
昔から顔は整っていたけれどどちらかというと可愛い、と評するのがしっくりしていた。
でもそんな彼も昔よりずっと大人になり骨格も肉付きも男の体になって以前の彼とは随分変わった。
「(...とりあえず、服が着たい)」
頭が覚めてくると次第に肌と肌が触れ合っている現状が恥ずかしくなってきた。
眠る彼を起こさぬよう慎重に私の身体を抱きしめる腕を外し起き上がりベッドから足を降ろしたその時。
「どこに行くんですか」
「うわっ」
彼に腕を引かれ再びベッドに倒れ込んだ。
彼は後ろから私のお腹に腕を回しぎゅっと抱きついた。
「勝手に離れないでください」
「ご、ごめん...?」
彼はそう言って私のうなじにキスをした。
その行為に眠る前彼としていた事を思い出して私の心臓が跳ねるように大きく鳴った。
「...身体の方は大丈夫ですか?」
「っ、だ、大丈夫」
彼はそのまま私の肩や背中にちゅっちゅっと音を立てながらキスを降らせていく。
「っ、テツヤ君...!」
「...分かっています。さっきの今で無茶はしませんから...」
背中にちくりと小さな痛みが走った。
多分キスマークを付けられたのだろう。
人に見えるような場所ではないしまぁいいかと思って好きにさせていると彼は気を良くしたのか肩や腰にまでシルシを付けることを続けたので流石に静止させた。
「...テツヤ君、あんまりやりすぎたらダメだよ」
彼の方を巻き直して彼の口を手で塞ぐと少し不満そうな顔をしたけれど頷いたので私は彼の口から手を離した。
すると彼は顔をぐいと寄せて唇にキスをした。
「おはようございます、名前さん」
「ん、おはよう、テツヤ君」
彼は懲りずに私の胸元に顔を寄せ再び唇を寄せたので彼の額を軽くはたいてやめさせた。
「痛いです」
「ついさっき言ったばかりなのにまたしようとしたテツヤ君が悪いんだよ」
彼はしょうがないじゃないですかと言いながら胸に顔を擦り付けた。
鎖骨や首筋に彼の髪が擦れてくすぐったい。
「くすぐったいよ、テツヤ君」
「...非常に不本意なのですが...僕、青峰君の気持ちが少しだけ分かりました」
彼はそう言って私の胸にそっと触れた。
いやらしい触り方をされたわけではないけれどそもそも彼に触れられているというこの状況が恥ずかしくてやめさせようと彼の手を握った。
「大丈夫です、僕が興味あるのは貴方の、だけですから」
「...それは光栄だけどあんまり触られるのは恥ずかしいかな...」
私がそのまま手を剥がすと彼は無理に触ろうとはせずに私の背に腕を回した。
「あ、そういえば名前さんのご両親は何時頃お帰りになられますか?」
「あー、えっと...確か8時過ぎの新幹線に乗るって言ってたから早くて9時すぎくらいになるんじゃないかな?」
「そうですか」
両親の予定を聞き彼は私の部屋の時計を確認した。
私も同じように目を向ければ時刻はもうすぐ夕方6時を回るところだった。
それを確認すると彼は再び私をじっと見て口を開く。
「以前した約束、ダメですか?」
「......ごめん、約束ってなんだっけ?」
少し思考を泳がせてみたけれど彼の言うそれがなんのことを指しているのか分からず素直に彼に訊ねると再び不満げな顔をして口を開いた。
「一緒にお風呂入りましょうって約束です」
「...あー...、えっと...」
そういえば流れでそんな約束をしてしまったことがあったなと思い出した。
もう既に全部見られてしまったのだから今更お風呂くらい、と思うのになぜか恥ずかしくて彼から視線を逸らしてしまった。
すふと彼は私の顔を掴んで無理やり自身の方を向かせた。
「今日を逃したら今度いつになるかわかりません。...ダメですか?」
「う...わ、分かった...いいよ入るよ...」
まるで子犬のような顔をして、私がその顔を見れば折れると分かってやっていると分かっているのに。
結局私は彼の策略に乗ってしまうのだ。
私が入ると言った瞬間彼はころりと表情を変えた。
「...じゃあ、お風呂、お湯張ってくるから...」
「はい、すみませんが宜しくお願いします」
彼はあっさりと私の拘束を解きそう言った。
その身代わりの早さに複雑な感情を抱きつつもベッドから起き上がりベッドの下に落ちていたTシャツだけさっと着て浴室に向かバスタブに栓をしてお湯張りのスイッチを押した。
浴槽の前にしゃがんでごぽごぽとお湯が出るのを見ているとそこに彼も現れて隣にしゃがんだ。
「今の貴方を見たらまたそういう気持ちになってしまって、困ります」
「...あ、ごめん」
私が適当に袖を通した服は彼のものだった。
指摘するまで気付かないだなんて、私はどれだけ動揺していたのだろうかと自分の余裕のなさに恥ずかしくなって膝に顔を埋めた。
「大丈夫です、名前さんが約束を守ってくれたのですから僕も約束は守ります」
彼はそう言って私の頭を撫でた。
それにしたって彼も今日が初めてだった筈なのに、この余裕の態度はなんなのだろうかと少し悔しくなって彼にじとりと視線を向けてみたけれどからは余裕の感じられる笑みを浮かべるだけだった。
「お湯、たまりましたね」
「...うん」
入りましょうかと言って彼は立ち上がり私に手を差し出した。
私は彼の手を取り立ち上がった。
「気持ちいいですね」
「...うん」
身体をシャワーで洗い2人で浴槽に入る。
さつきちゃんとリコ先輩と入った時とは違い狭い浴槽だから当然2人で入れば身体が触れてしまう。
まぁ触れるも何も後ろからがっしりと抱きしめられているのだけれど。
「テツヤ君は逆上せやすいんだから無理しないで早めに言ってよ。
私もう運んであげられないからね」
「小さい頃も逆上せてお風呂で溺れそうになった僕に名前さんは慌てて引っ張りあげて僕のお母さんを呼びましたよね」
幼稚園児だった頃の話だ。
私はともかく彼が覚えているなんて思っていなかったので少し驚いた。
「勿論覚えていますよ。他でもない貴方との思い出ですからね」
私が考えていることなんて彼にはお見通しらしい。
そう言って頬にキスをし肩に顔を乗せ私の顔を見つめた。
「...すっかり大人になっちゃったね、テツヤ君」
「子供の頃の僕の方が好みでしたか?それは少し妬けますね」
彼はそう言って私の頬に手を添え自身の方を向かせ今度は唇にキスをした。
彼の前髪からお湯がこぼれてそれが頬を伝いぽたりと水面に落ちた。
なんだかそれが妙に色っぽく感じてしまい恥ずかしくて顔に熱が集まってしまう。
「僕も子供の頃の名前さんも大好きですけどね。 …勿論今の貴方はもっと好きですけど」
逃げられないよう彼は私の後頭部をしっかりと支え何度もキスをした。
顔だけではない、身体が熱を持ってこのままでは私の方が逆上せてしまいそうだ。
「...今朝と同じ顔をしていますね」
そう彼に言われ私は耐えきれなくなって彼から距離をとって顔を手で覆った。
「そんなに照れなくてもいいんですよ。
ぼくは貴方のそんな顔が見られて嬉しかったんですから。
だから大人しく僕の腕の中にいてください」
先程出来た距離は簡単に縮められ私はまた彼の腕の中に収まってしまった。
私の心臓の音があまりにうるさくて彼に伝わってしまっているのではないかと不安になった。
「...引いて、ない?」
「なにがですか?」
「だって...私、なんかすっごく...」
初めてとは思えない程感じて乱れてしまったから、さすがにそこまで言葉にすることは出来なかった。
でも彼には私の考えていることなんて簡単に読み取られてしまうのだ。
彼は声は出さずに喉を鳴らして笑った。
「言ったじゃないですか。
もっと貴方を好きになった、と」
彼は私の頭を優しく撫でて耳にキスをした。
それにまたびくりと跳ねてしまう自分が恥ずかしくて仕方ない。
「...そろそろ出ましょうか。僕ももう限界です。
色んな意味で...」
気付かないふりをしていたけれど先程からお尻に硬いものがあたっていた。
彼の年齢を考えれば恋人とこれだけ密着していればそれも当たり前の反応なのだろう。
でもやはりそうなってしまった対象が自分なのだという事実は恥ずかしい。
浴槽の中で立ち上がると少しふらついてしまったところを彼に抱きとめられた。
胸がぶつかり彼の心音が伝わってきた。
私と変わらないくらい早く鳴っている鼓動に気恥ずかしさは更に増していく。
「大丈夫ですか?」
「う、うん、ごめん、ありがとう」
恥ずかしさから顔を見れず下を向けば完全に立ち上がり硬くなっているであろうそれをもろに見てしまい私は慌てて上を向いた。
目が合った彼はさすがに恥ずかしかったようで少し顔を赤くしていた。
「...すみません、収まるまで少しかかりますので...先に上がっていてもらえますか?」
彼はソコを手で覆い私にそう言った。
私は分かったと返事をして彼に言われた通りもう一度軽くシャワーを浴びて浴室を出ようとしたところで立ち止まった。
「...名前さん?」
彼はそんな私に声をかけた。
どうしようかと悩みながらも彼が先程もっと私を好きになったと、その言葉を信じ私は勇気を出して振り返り彼の手をとった。
「...まだ、...時間、あるから...」
たった8文字、声に出したのはそれだけだったのに。
「...我慢、するつもりだったんですよ、本当に...」
彼はそう言って再び私を引き寄せ抱きしめた。
「...貴方は昔からいつだって僕の心を掻き乱しますね」
深い、深い、大人のキス。
彼は乱れた呼吸を繰り返しながら貪るようなキスをした。
よろめきそうになる私の腰をしっかりと支えて。
「...ここでは危険ですから...もう一度ベッドに行きましょうか」
きちんと髪や身体を拭くこともせずに2人で再びベッドに沈む。
この後汚れたシーツをどうしようかと考えながらも再び彼との情事に耽ってしまった。
end