「今日はなんでも我儘言ってください」
土曜日の午後、部活を終えた彼が私の家に来るなりそう言った。
「どうしたの?急に」
なぜいきなりそんな事を言いだしたのかよく分からなくてそう訊ねたら彼は申し訳なさそうな顔をして口を開いた。
「...多分暫くこういう時間が取れそうになくて...」
「あー部活のおやすみが無いってこと?
仕方ないよ。まぁ学校では普通に会えるし気にしなくていいよ」
バスケ部の練習がハードなことは知っているしそれを承知で付き合っているのだからと思いながら2人分のコップにお茶を注ぎ一つを彼の前に置くと彼はそれをじっと見て一気に飲み干した後悲しそうな表情でこちらを見た。
「え、なに?」
「...僕は今とても寂しい気分になりました」
彼はそう言って体操座りをして顔を膝に伏せてしまった。
内心面倒なことになってしまったと感じてしまった私は薄情な女にのかもしれない。
「...私はやるべきことをやって頑張ってるテツヤ君が好きだし応援してるよ」
半分は本心だけれど半分はめんどくさいという気持ちから出た言葉だ。
彼は含まれたその半分に気付いたのかじとりとした視線をこちらに向ける。
内心本格的にめんどくさいことになってしまったと後悔した。
「名前さんは僕をいじめて楽しむ嗜好があるんですか」
「いやまったくこれっぽちもないよ」
妙な勘繰りはやめてほしい。
ごめんねと彼を抱きしめてわしゃわしゃと頭を撫でると子供扱いしないでくださいと怒られてしまった。
でも彼はそのまま私の腰に抱き付いて私は動けなくなってしまった。
まるっきり子供の駄々の捏ね方だと思うのだけれどと思いながらボサボサにしてしまった髪を手櫛で整えた。
それに対しては抵抗する様子はない。
「あ、一つ我儘思いついた」
「...なんでしょうか」
ちょっと離して、と彼の腕を解きテーブルの上に置いてあったDVDをとって彼に見せた。
「ホラー映画のDVD友達に借りたんだけど1人で観るの怖いから一緒に観て。
テツヤ君そういうの全然怖がったりしないでしょ」
「...まぁ確かに大丈夫ですけどなんですか、まるで僕の心臓に毛が生えているみたいな言い方」
彼の解釈はあながち間違ってないと思うが、と思いながらも口には出さずにDVDをデッキに入れた。
そしてクッションを二つ用意して彼にその上に座り直すよう指示して私は彼の足の間に座った。
「怖いからくっついてて」
「...しょうがないですねぇ」
私のお願いをのんだ彼の声色は心なしか嬉しそうに聞こえた。
普段顔にはあまり出ないけれど長く時間を過ごすとそれなりに感情豊かなのだと気付いた。
遠慮なくもたれかかると彼は私を後ろから抱きしめた。
リモコンの再生ボタンを押し映画が始まると彼は肩に顎を乗せる。
再生した映画はホラー映画と言いながらも内容はわりとグロかった。
どちらかというとスラッシャーホラー。
というかもうタイトルからパッケージから完全にそうだとパッケージを見直して気付いた。
どうして私は最初からそれに気が付かなかったのだろうか。
横目で彼の顔を見るとなんだか幸せそうで。
とても今映画の登場人物が赤と白の服を着た殺人鬼に虐殺された場面を見ている顔には見えない。
見ようによってはサイコパスだ。
ホラーだと思って観た映画は想定外のグロ映画で話が進むごとに私はだんだん気持ちが悪くなってきてしまった。
もう観るのをやめてしまおうかと思ったけれど依然彼は幸せそうな顔で私に抱き付いているものだからなんとなく気が引けて薄目でテレビ画面を観ながら先程いれたお茶を飲んで気を紛らわせた。
「...疲れた...全然思ってたのと違った。もう観ない...」
「最後はあんな感じでしたけど続編は出ているんですかね?」
出てたとしてももう絶対に観ないと言って項垂れていると彼はよしよしと頭を撫でながら私を抱きしめる。
横向きに座り直して彼に抱き付くと彼は更に嬉しそうな表情を見せた。
「テツヤ君はグロいのも平気なの?」
「まぁ程度によると思いますがあくまでもフィクションですし」
確かに今日観た映画はきっとB級映画と呼べる代物なのだろうとは思うけれど。
それでも私は気分が悪くなったのでやっぱり彼は人より神経が図太いのだと思う。
「...取り敢えず付き合ってくれてありがとう。
折角の休みになんだか嫌な体験させちゃったから今度は私がテツヤ君の我儘なにかきくよ」
「え、...なんでもいいんですか?」
私の言葉を聞いて先程まで幸せに包まれた表情を浮かべていた彼の顔が真顔に変わる。
「...ごめん、お金はあんまり持ってないから何か高いもの買うとかは無理だよ。
マジバくらいなら全然奢るけど...」
「いえ、大丈夫です。お金なんてかかりませんから」
彼はそう言って私の服の裾に手を滑り込ませた。
「いやいや、今の今でそんな」
「ある意味王道の展開じゃないですか」
距離を取ろうと彼の胸を押してみたけれどさすがにいくら小柄だとは言っても現役運動部の彼との力くらべだなんて、結果はやる前から決まっていた。
「今まさにエロいことしてたカップルが殺されたの観たばっかでちょっと気が引けるんだけど?」
「大丈夫です、あれはフィクションの中のお話ですから」
彼はそう言って自身の胸を押していた私の手を取り手のひらにキスをした。
「今日はクリスマスでもないですし僕も貴方も良い子だから大丈夫ですよ」
彼はそう言って抵抗する私なんてお構いなしにガバッと私から服を脱がせてしまった。
「凄く可愛い下着ですけど僕とのデートの日以外もいつもこういう下着を着けているんですか?」
下着の上から胸を撫で谷間にキスをした彼は揶揄うような口ぶりでこちらを見上げた。
どこが良い子だと内心ツッコミを入れながら彼から顔を背けた。
「知ってますよ。素っ気ない態度をとりながらもいつも僕とのデートの日は当日シャワーを浴びて僕好みの服と下着を選んだ着てくれていますよね」
下着のホックを外しそれも抜き取られて隠すものがなくなった胸に彼はリップ音を立てて吸い付いた。
「素直じゃない貴方も可愛くて大好きですよ。
でも素直な貴方はもっと好きです」
腰を抱き寄せ唇を塞がれる頃にはもう私は彼の言う、素直な私になってしまっていた。
別に普段も意地を張っているつもりなんてないのだけれど。
「...テツヤ君は普段から自分に素直すぎるんだよ」
「そんなことないです。普段は必死で押さえ込んで我慢していますよ、実際のところ」
ふにふにと胸を触りながら何度もキスをする彼に手持ち無沙汰になって彼の首に腕を回せば彼は嬉しそうに笑った。
「だから今日は僕も素直な良い子になろうと思います」
良い子って一体なんなんだろうかと疑問を抱きながらももう考えることもめんどくさくなった私は素直に彼に身を任せることにした。
(2号だっこしたい、癒しがほしい)
(1号を抱っこして癒されたらいいじゃないです)
(...2号は1号みたいにおっぱい吸ったりしないもん)
(目の前にあったら吸いたくもなりますよ)
end