特別な絆

「本当に私が選んでいいの?」

「はい、寧ろ名前さんが選んでくれたものがいいです」

ホワイトデー当日は部活があり2人でペアリングを買いにいくということが実現出来たのはそれから1週間程経った頃だった。
自分達が高校生という立場であるということも踏まえ当然数万円もする指輪をメインに扱っている専門店には行かなかった。
私が直感的にいいなと思って手に取った指輪はペアで一万円程度のものだった。
大人の感覚で見れば比較的安価なものではあると思うけれど今の私のお小遣いほぼ1ヶ月分だ。
ほぼ毎日部活をしているということもありこの一年殆ど使ってこなかったことと、中学時代は参考書なども古本屋で買い揃えていたこともあり貯金は多分その辺の同級生と比べればわりとある方だと思う。
でも彼がどのくらいお小遣いを貰っているかも知らないし当然貯金額も知らない。
大っぴらに無駄遣いをするような人でないと思っているのだけれどもっと安いものにした方がいいだろうかと悩みつつ彼に視線を移せば彼は私の手から指輪を取って私の指にはめた。

「いいですね。こちらにしましょうか」

彼はそう言って自身の指にも指輪をはめた。
でもそれはサイズが大きかったようだったので私は彼の指から指輪を外しワンサイズ小さな指輪を彼の指にはめ直した。
キツ過ぎずゆる過ぎない、多分これでいい筈だと彼に伝えるとありがとうございますと言って笑った。

「値段は大丈夫そう?」

「はい、勿論。小学生の頃から名前さんとのデートの為に基本無駄遣いはしないようにしてましたから」

私と付き合う前からそんなことを考えてくれていただなんて。
男子小学生にとって興味があるものなんて山程あっただろうにとなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。
でもそれを彼に言うのもなんだか違う気がして。

「...大人になったらテツヤ君におねだりするから今はあまり無理をしないでね?」

「全然していませんよ。僕バスケ以外だったら貴方と過ごす時間が1番幸せですから、僕の幸せを優先しているだけです。というかこれだって僕が欲しいと言ったものですし」

そんな言われ方をされてしまえば本当にもう何も言えなくなってしまう。
子供の頃から予感していたことだけれど順調にある意味怖い男になっていく彼の今後は本当に末恐ろしい。







「結局火神君と氷室さんの真似をする形になっちゃいましたね」

「まぁ実際手を使うスポーツだし、学校であんまり堂々と着けるのもね」

私が選んだ指輪を購入して改めて互いの指に嵌めた。
同時に買った店で指輪をネックレスに出来るようチェーンも買った。
火神君達が着けているのよりはもう少し細めのアズキチェーン。

「服の中に入れるとしてもセーラー服だからあまり学校では着けられないかもしれないけど着けたくないってわけじゃないから誤解はしないでね?」

「はい、勿論。僕はシャツなので中に着ければバレませんので毎日着けます」

そうなると私も着けたくなってしまうのだけれど。
火神君は堂々と着けているけれど何か注意を受けたりしているのだろうか?
その辺がもし緩いのであれば私も着けたい気持ちはあるけれどそれなりの成績を取っていることもあり先生方からは真面目な生徒だと思われている自覚があるからそんな人間がこう言ったアクセサリーを堂々と着けている所を見られると普通より目立ってしまう可能性がある。
大学受験の際は推薦を狙っていて、選手としてバスケ部に所属しているわけではない私は勉強や普段の生活態度でそれをアピールするしかない。
だからあまり悪い意味で目立つようなことはしたくないというのが本音だ。
でもそれはあくまでも建前で。

「...着けてない時もずっとテツヤ君のこと大好きだからね」

「僕が大人になったらその一言でなんでも買ってあげたくなりそうです」

彼はそう言って笑っていたけれど私にとっては笑えない話だ。
彼なら本当にそうなりかねない、そんな危うさがあるのだ。

「そんなこと言われたらもうテツヤ君に好きって言えなくなっちゃうよ」

「それは困ります。こういうことは言わないように気を付けますので、だからやめないでください…」

彼は私の言葉を聞き慌ててそう言った。
やっぱり私はまだ幼い部分の残る彼が好きだ。
子供が好きというよりは私に気を許して甘えてくれているのだという事が実感出来るからだ。

「うん、分かったよ。大好きだよテツヤ君」

「〜っ子供の頃の僕に脈がなさそうだと思っても諦めなくて良かったと言ってあげたいです」

そして僕の方がずっと好きですと言った彼。
先程からやっていることはバカップルのソレだ。

「指輪は買ったけどこのあとどうしよっか?
お昼どうする?」

「...すみません、あの......僕、今貴方とキスしたくて仕方なくて...何も考えられそうにありません...」

本当に恥ずかしい事を言うと思いながら彼に答えた。

「...うち、帰ろっか。誰もいない筈だから。
ケーキでも買って帰ろ。お昼は適当に何か作るよ」

「...す、すみません...」

照れくさそうに顔を覆った彼の手に指輪がきらりと光って、それは思っていたよりも良いものだと思った。








「テツヤ君、私もうお腹空いちゃったよ」

「すみません、...なんか止まりませんでした...」

彼と繋がったままぎゅっと抱きしめられた。
初めて彼とこういうことをした日から当たり前のようき彼と肌を重ねる事が増えていったけれどその度に彼の欲が強くなっていっているような気がする。
恥ずかしい言葉や体勢を取らされることも増えた。

「テツヤ君どんどんえっちになってくね」

うっすらと浮かぶ彼の汗を指で拭ってそう言うと彼は目を閉じて苦しそうな顔をした。

「...う...すみません...あと今そういうの言われるとなんか、こう...」

「え...なんで...」

私の中で彼のものが再び硬さを取り戻していく。
何が彼に刺さったというのだろうか。

「本当に単純なんですよ、男って...」

彼は苦しそうな顔で名残惜しそうに自身を引き抜いて着けていた欲の吐き出されたゴムを取り外しそれをティッシュにくるめてからゴミ箱に放った。

「あとできちんと処分しますから」

万が一それが私の両親にでも見つかってしまっては困るだろうと彼はいつもそれを回収していってくれるけれど毎度そんなゴミを持ち帰らせることにも申し訳なさを感じてしまう。
その気遣いは本当に有り難い話なのだけれど。

「早く大人になって一緒に住みたいね」

こんな言葉を自ら言うようになったあたり私は本当に心身共に子供になったのだろうと自覚させられるのだけれど。
彼の手をとって彼の指に嵌められた指輪にキスをすると彼も同じように私の指輪にキスをした。

「...すみません、ほんとちょっと理性の限界なんで...脱がせた僕が言うのもアレなんですけど先に服を着てもらってもいいですか?
でないと本気で耐えられそうになくて...」

切そうな顔で私を見下ろして手のひらにキスをした彼が愛しくて。

「別にいいよ、...まだ」

先程彼がしたのと同じように彼の手のひらにキスを返した。

「...その代わりお腹鳴っても笑わないでね」

「っ、...すみません、あとでご飯作るの僕も手伝いますから」

両手が絡め取られて再び私の上に影が落ちた。
誰かと比べているようでこんなことは彼には言えないけれど彼はこういう時沢山キスをして沢山好きと言ってくれる。
だから彼とするようになってから以前よりずっとこういう事が好きになった気がする。
絶対に彼には言えないけれど、理由はともかく私がそう思っているはきっと彼にバレてしまっているんじゃないかと思う。

でも今日は私は初めて彼と買ったペアリングにはしゃいでいたのだと、そういうことにしておくことにした。


end