今が一番幸せ

ある日の部活終わり、用具の片付けも終わり部員のみんなも柔軟も終わらせた頃、私は練習メニューに目を通すリコちゃんに声をかけた。

「リコちゃん、明日の練習終わりちょっとお買い物付き合ってもらえない?」

「え?別にいいけど、黒子君とじゃなくていいの?」

明日は体育館に施設メンテが入る為、1時間程早く終わる予定になっている。
だから買い物に行きたくて彼女を誘った。

「うん、テツヤ君に見せる時用の下着買いに行くから。相談したくって」

「......あの、僕すぐ隣にいるんですけど。
もしかして見えていませんか?まぁ僕にはよくある事ですが」

別にテツヤ君に隠すつもりはなかった。
もう何度もそういうことがしたいと言ってしまっているし。
なにより変に隠し事をして誤解されてしまう方がもっと嫌だから。

「見えてないわけないよ。テツヤ君かっこいいから私の中では誰よりも目立ってるよ!」

「まぁ...貴方にとってはそうなんですよね...ありがとうございます」

彼はそう言って部室へと着替えに行った。

リコちゃんはそんな彼を見送った後私に小声で話しかけた。
もう体育館には私たちしかいないのだからそんなにこそこそする必要なんてないのに。

「あんた達ってもうそういうことしてるの?」

「ううん、しようねって約束してたんだけどなかなかタイミングが合わなくて出来てないの。だから出来るってなった時少しでも可愛いって思ってもらえるように新しい下着買いたくて」

私の言葉に顔を赤くするリコちゃんを見て可愛いと思った。
私もこんな風な反応が出来たらもっと可愛いって思ってもらえるのかもしれないと思ったけれどこういうのって計算で出来るものじゃないから今更私がそれを演じたところで彼女のような可愛さは多分私には手に入れられないのだと思う。

「...前は抵抗あるって言ってたのに、大丈夫なの?まぁ黒子君の反応を見る限り黒子君が無理強いしてるわけじゃないってのは分かってるけど...」

私は本当に凄く運がいいんだと思う。
こんなに優しくて可愛い友達がいて、あんなにかっこいい彼氏がいて。

「テツヤ君は私の正直な気持ちとか全部聞いてくれてね、それでも全部受け止めてくれて。
沢山好きって言って沢山抱きしめてキスして。
好きになるって事がどれだけ幸せかって事が分かったから、もっと好きになっても大丈夫って思ったの」

「...聞いてるこっちが恥ずかしくなるわよ。
でもまぁあんたが幸せそうなら良かったわ。
あんまり黒子君を困らせないようにね」

リコちゃんはそう言って私の頭を撫でた。
テツヤ君に撫でられのも大好きだけどリコちゃんに撫でられるのも大好きだ。
テツヤ君とは違う意味でリコちゃんのことも大好きだからだと思う。

「リコちゃんが男の子だったら好きになってたかもしれない。
んー?でも別に男の子じゃなくてもなってたかも?」

「...私にはあんたなんてとても扱える気がしないからお断りよ」

リコちゃんはそう言って私の額にデコピンをした。
やっぱり彼女のこういうところが好きだと改めて思った。
テツヤ君の次にかっこいい女の子だと思う。





「お待たせしました、帰りましょうか」

リコちゃんと一緒に体育館を出ると丁度帰り支度を済ませたテツヤ君が現れた。
私達はリコちゃんに挨拶をすませそこで別れた。
校門を出てから彼の手を握ると彼も握り返してくれた。
さっきまで運動をしていたからやっぱり体温は彼の方が温かかった。

「明日はリコちゃんとお買い物行ってくるからテツヤ君はたまには私のこと気にせず好きなことしてね」

「...その言い方をされるとまるで僕が嫌々貴方とお付き合いをしていると言われているようで嬉しくないのですが...」

彼がどれだけ私を好きでいて、私を優先してくれているかという事はよく知っている。
多分バスケを除けば私が1番大切にされていると感じる程に。
私は好きな人とずっと一緒にいられたら幸せだと思う人間だけどみんながそうでないということは知っているのでそう言ったのだけれど彼は複雑そうな表情でそう言った。

「ごめんね、いつも私の我儘ばかり聞いてもらってるからたまにはって思っただけなの」

「貴方にそれ程我儘を言われた記憶もないですけどね。でもまぁいいです。カントクとお買い物楽しんできてください」

彼はそう言って私の頭を撫でてくれた。
やっぱり彼に撫でられるのは気持ちいい。
目を閉じて彼の手を満喫しているとぷにっと柔らかいものが唇に触れた。
確認するまでもない、だって何度も味わった感触だら。
彼の唇が私の唇に触れたのだ。

「...テツヤ君が私の事誘惑してくる」

「寧ろされているのは僕の方なんですけどね」

彼はそう言って困ったような顔を見せた。
いや、多分本当に困っているのだと思うけれど。

「私がされてるんだよ。ただでさえ普段からかっこよくていつも抱きつきたいって思うの我慢してるのにこうやって私がしてもらって嬉しいこと沢山してくれるんだもん」

「...貴方がそんな風に言うから僕も何をしても許されるんじゃないかって勘違いしちゃうんですよ」

彼はそう言うと私の手を引き再び歩き始めた。
横顔はほんのり赤くなっているような気がする。
もう日は落ちて暗くなってしまっていたので確信はないのだけれど。

リコちゃんといいテツヤ君といい本当にみんなどうしてこんなに可愛いんだろう。

「リコちゃんとかテツヤ君みたいに可愛くなれたらよかったんだけど、なんか私変でごめんね」

「まぁ少し変わっているということは否定出来ませんが。どうしてそこに僕やカントクの名前が上がるんですか?」

彼は正直な人だから私を変だということは否定しなかった。
でもそういうところと含めて好きだし信用出来るからそれも彼の魅力の一つなのだと思う。

「リコちゃんもテツヤ君も照れ屋さんだから、恥ずかしいってなってる時顔が赤くなるの凄く可愛くて」

「誰のせいだと思っているんですか。
まぁ確かにカントクは練習中は厳しいですけど普段は可愛らしい人だと思いますよ。
...でも僕にとっては貴方が1番可愛いんですけどね」

やっぱり好き、好きで好きで仕方ない。
多分こんな私の事をこれ程好きになってくれる人とは一生出会えない。
私よりずっと長く生きている大人から見ればまだ高校生のくせにそんな事を、なんて思われるかもしれないけれど。
少なくとも今の私はそう信じている。

「テツヤ君は可愛いけどそれ以上にかっこいいよ!テツヤ君のお姉ちゃんとかに生まれてたら毎日一緒にご飯食べて一緒に寝られてたのになって思うくらい、ずっと一緒にいたい」

「仮にそうだったとしたら僕はこの歳になって姉と一緒寝たりしませんよ。名前さんは僕の恋人なんですから、姉になんてなられては困ります」

彼はそう言って再びキスをしてくれた。
嬉しくて抱き付いてもう一回、とねだるとすぐにもう一度キスをしてくれた。

「僕たちが姉弟だったから当然こんなことも出来ませんよ」

「...それはヤダからやっぱりテツヤ君のお姉ちゃんに生まれなくてよかった...」

彼の首元に顔を埋めてぐりぐりと顔を擦りつけると彼は私を抱きしめてよしよしと頭を撫でてくれた。

「そうだ、テツヤ君は私がどんな下着着けてたら嬉しい?」

「っ、あの、本当にそういうの、...僕は女性下着には詳しくありませんからよくわかりませんが貴方には優しい暖色が似合うと思います...」

彼は私の質問に動揺しながらも彼なりの意見を聞かせてくれた。
最初は彼の髪色みたいな色の下着を買おうと思っていたのだけれど彼が似合うと言ってくれたのだからそっちにしておこう。
いや、でも普段用に両方買っておいてもいいかもしれない。

「テツヤ君、私おっぱいDカップなんだけど、男の子のイメージするDカップ程おっきくないからあんまり期待はしないでね」

「っ名前さん!!誰かに聞かれたらどうするんですか!?」

彼はそう言って周りをキョロキョロと見て確認して誰もいなかったことを確認してほっとため息をついた。

「ごめん、でもがっかりさせたら悪いかなって...。…テツヤ君のお友達はもっとおっきいし...」

「...誰の事を言っているのか想像はつきますけど僕が一度でも彼女の胸が好きだとかそういう事を言ったり匂わせた事がありますか?」

彼はちょっと怒っている、余計なことを言ってしまったと後悔してすぐにごめんなさいと謝ると彼はもう一度ため息をついて私の頭を撫でた。

「僕は貴方の身体を目当てに好きになったわけではないです。...勿論今は全てひっくるめて大好きですけれど」

私のほっぺたを両手で摘んでむにーっと引っ張ってパッとはなした。

「貴方が思っている以上に今の僕は貴方に夢中なんです。ですから変な疑いは持たずに誰よりも僕に愛されているという自信を持ってください」

「うう...テツヤ君、だいすき」

思わず涙が溢れてしまった。
嬉しくて泣くだなんて初めてのことかもしれない。
どうしてこんなにかっこいい男の子が私を好きになってくれたのか、本当にわからない。

「はい、僕も大好きですから、泣かないでください」

私の瞼にキスをして、今度は目尻に、そして唇に。
今すぐ彼と抱き合ってもっともっと愛を伝え合いたいくらいなのに。
自分たちがまだ子供なことがもどかしい。

「大人になったらもっと沢山いちゃいちゃしようね。朝から晩までずっといちゃいちゃしようね」

「...僕の身が持たないかもしれないですね...でも僕もそう出来たら嬉しいですよ」

彼はそう言って私の手を繋ぎ直した。

「これからもずっと一緒にいますから、焦らなくたっていいですからね」

まだ残暑が続いていたけれど、お互い汗をかいていたしそんな状況で手を繋げばその手も汗ばんでしまったけれど今はもうそんなこと気にならなかった。
彼の手に触れられるこの瞬間が何より特別で幸せで。

「大好きだよ。ありがとう、テツヤ君」

何度だって、嫌になるんじゃないかってくらい彼に好きだとと伝えたい。
彼はそれを独りよがりになんてしないから。


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