「テツヤ君、今日どうするの?」
「久しぶりに図書館に寄って帰ろうと思っているのですが、名前さんもご一緒しますか?」
いつも部活が早上がりとなれば彼の方から誘ってくるのに、今日は何も言われなかったから用事でもあるのかなと思って訊ねてみるとそう返ってきた。
図書館に行くということは何か読みたい本があるということだろうし借りたら今日は解散だろうから別に行く必要がないのだけれど。
「名前さん?」
今日はそれが寂しくて。
でも今の彼にとって本を読める時間は貴重だと思うから遠慮しておくことにした。
「あの、テツ「それでは行きましょうか」
私がやめておくと言おうしたのを遮って彼はそう言って私の手を握った。
「え、でも...」
「一緒がいいです。僕が名前さん分も選びますから、一緒に読みましょう」
ね、と微笑んで。
そんな風に言われたらもう断る気にはなれなくて。
「うん...」
彼は今私が考えていた事を知ったらどう思うのだろうか。
引いたりはしないと思うけど、でも知られたくないような、そうでもないような。
「(いつもみたいにしてくれてた方が良かったのに)」
普段はまずそんなこと思わないのに、勝手だと自分を恥じた。
繋いだ手から体温が伝わって。
それだけでその欲求はじわじわと増幅してしまう。
「どうかしましたか?」
「...なんでもない」
恥ずかしい本音を隠して彼と図書館までと道のりを歩いた。
彼はやっぱり最初から読みたいと思っている本があったようで真っ直ぐその棚に向かい指を指しながら少し探して一冊の本をその指で引っ掛けて取り出した。
今日借りる本のジャンルは推理小説らしい。
「名前さんはどういったものがいいですか?」
「...とくには。テツヤ君のと同じ作家さんの本で何かおすすめとかってある?」
今何が読みたいかなんて思いつかなかったので投げやりな返事をしてしまった。
でも彼はそれを気にする様子もなく棚から本を取り出し私に本を手渡してくれた。
「はい、以前こちらを読みましたがとても面白かったですよ」
「...ありがとう、読んでみるね」
彼はもう2冊、私は彼のおすすめしてくれた1冊だけ借りて図書館を出た。
彼の家に寄る前にコンビニに立ち寄ってお菓子と飲み物を買った。
いつもであれば少しお腹が空いている時間な筈なのに今日は不思議と何も感じていない。
それほど別のことで頭がいっぱいなのだろうかと考えると恥ずかしくて顔が熱くなってしまった。
きっと赤くなっているであろうその顔を彼に見られずに済んだことは幸いだ。
「(...どうしよう。内容が全然頭に入ってこない)」
彼の部屋に上がり隣に座って本を読み始めたのだけれど二の腕に触れている彼の体温が私の集中力を削いでしまう。
普段ならそんなこと気にならないのに。
少し距離を取ろうとして不自然にならない程度に体勢を変えて彼の体に触れないように座り直してみた。
そうすると彼は私の肩に頭を乗せた。
より近くなった距離に私は益々動揺してしまったけれど彼は依然として本を読み続けている。
こんなことなら図書館を出た時点でまっすぐ家に帰ればよかったと改めて後悔した。
でも当たり前のように彼に手を引かれてしまったから、いや、そんなのは言い訳だ。
普段の彼と同じように私も下心があったからこそ彼の家に着いて来てしまったのだからこれは全部自己責任だ。
このままここにいるのは辛いだけなのは分かっている、かと言って久しぶりの読書を楽しむ彼の邪魔もしたくない。
「...ごめん、テツヤ君。私やっぱり今日は帰る」
「え、どうしてですか?」
そう言って彼を押し退けようとすると彼は本を置いて私の腰に抱きついてそのまま顔を覗き込んだ。
別に今更、こんなの恥ずかしがるような関係でもないのに。
「...眠くて」
なんて雑な理由付けだろうか。
彼は案の定私の答えにポカンとした顔を見せた。
「ごめんね、じゃあまた明日ね」
「待ってください」
顔を逸らして床に手をついて立ちあがろうとすれば彼は私の手を上から握って引き止めた。
「でしたら一緒にお昼寝しましょう」
「えっ、あっ、ちょ、ちょっと待って!?」
彼はそう言うなり私を強引にベッドに引き上げ寝転がせて、彼自身も横に寝転んで布団を掛けた。
「あ、あの...テツヤ君本読んでたのに悪いからやっぱり帰るよ」
「僕は貴方と一緒にいたいんです。別に本は寝る前や学校の休み時間にも読めますから」
だったらなんで今日は私がいるのも気にせずに本を読んでいたの、と思いながらもそれは口に出せなかった。
だってそんなの構ってほしくて拗ねていたと言っているようなものだから。
「...寝ちゃったら一緒にいても意味ないんじゃない?」
「......本当にするんですか?お昼寝」
彼はふふっと笑って私の頬に手を当てた。
視線が混ざり合って、少しの沈黙。
私は全てを悟り顔を両手で覆った。
「すみません、最初はもしかして...くらいだったのですが。そわそわしているのが可愛くて様子を伺っていました」
「...ひどい...!」
穴があったら入りたいって言葉はきっとこういう時に使うのだろう。
どうせバレているのであれば最初から素直に言えばまだよかった。
変に隠そうとしたからこそ今こんなに恥ずかしい思いをしているのだから。
「少し期待もあったんです。
貴方の方から誘っていただけるかな、と」
彼の手が腰を撫でてセーラー服の中へと入った。
私とは違う骨ばった男の子の手。
そんなのずっと前から知っている筈なのに妙に気になってしまう。
「貴方って本当に可愛いですね」
慣れた手つきで下着のホックを外されて背中を一撫でして、そのまま胸を包み込んだ。
「凄くドキドキしていますね、本当に可愛いです」
「っ、いっつもそういうことばっか言って...!」
恥ずかしくて肩を押し距離を取って逃げだそうと起き上がったけれどすぐに彼に捕まって後ろから抱きしめられる形でベッドに引き戻された。
「もう意地悪なことはしませんから、一緒に気持ちいいことしましょう」
首筋にペロリと舌を這わされた私は情けない声を漏らし、そんな私を見て彼は笑った。
顔は見えなくとも彼の吐息が確かにそこに触れたから。
「名前さんを満足させられるよう、沢山頑張りますね」
「っ、い、...いつも通りでっ...いい、から...っ!」
こういう時彼は平気で嘘をつくから。
きっと今日も沢山いじめられて恥ずかしい思いをして、でもそんな彼を嫌いになんてなれないのだと。
全部、全部分かっている。
(いつから気付いてたの?)
(放課後今日どうするのかと予定を聞かれた時からですかね)
((最初からバレバレだったってこと!?))
(名前さん結構顔に出やすいですからね。凄くえっちな顔していました)
(ばかっ!嫌い!!)
(嘘付かないでください、僕の事大好きじゃないですか)
end