『あっ...てつや、くんっ...!きもち、いいっ!』
僕の上で自らいやらしく乱れる彼女に何も出来ずただただ快楽に身を任せた僕がその気持ちよさに耐え切れずあっという間に達してしまった、気持ちがいい筈なのに妙な不快感があって、そこで気が付いた。
これは現実ではなかったのだと。
目を開けるとそこに先程までいた彼女はいない。
当たり前だ、あれは僕が見た夢だったのだから。
「...着替え、ないと...」
夢精なんて、いつぶりだろうか。
感覚としては漏らしてしまったのと変わらないと思う、多分。
それこそ物心つく前の頃以来などで比較しようがないのだけれど。
下着がべっとりと肌に張り付いて、それが凄く気持ち悪い。
シャワーを浴びて浴室でそのまま汚れた下着を洗いながら僕は一体何をしているのだろうか、と虚しさに襲われた。
別に如何わしい夢を見たのなんて初めてのことではないしこんなの生理現象みたいなものだと分かってはいるのだけれど。
でもこんな風に好きな人のあんなに生々しい夢を見たのは初めてのことで、だからこそ罪悪感が酷い。
きっとそんな夢を見たのは彼女の身体を実際に見て、触れてしまった事が原因だと思う。
練習、だなんて。
自分で言っておいて思い出せば恥ずかしくて仕方ない。
勉強に身が入らないから、なんて理由になっていない。
本当に集中したいのであればすぐにでも帰れば良かったのだ。
きっと僕には自覚せずとも下心があったのだと思う。
今度は一緒に、と約束した後彼女も僕の為に頑張りたいからと言ったことに対し最初は僕に任せてほしいと言ったくせに。
今日僕の夢に現れた彼女は僕の上で乱れていた。
本当は僕は彼女にそういうことをされるのを望んでいるのではないか、と思わせる夢だった。
そんなことを考えていればまた僕のモノは硬くなってしまった。
我慢していれば収まるものだと分かっているのに、でも今は我慢出来そうになくて自然とソレを握って。
目を閉じてあの日見て触れた彼女を思い出しながら自身を慰めた。
彼女は僕を好きすぎるけれど何かフィルターのようなものが掛かっている気がする。
そんな彼女が今の僕を見てどう思うのだろうか。
引かれてしまうんじゃないか、怖がられたりしないだろうか、なんて。
いや、あれだけ僕とシたいと言ってくれているのだから多分大丈夫な筈だと、そう思いたい。
「テツヤ君おはよう」
「おはようございます」
朝練の為体育館に向かうといつも通り僕の顔を見るなり満面の笑みを浮かべる彼女についさっき彼女のいやらしい姿を想像して自己処理をおこなっていたことに対する罪悪感が再び蘇った。
でもそれを彼女に話すわけにもいかないのでそういった気持ちを隠して彼女に笑顔で挨拶を返した。
彼女は何も気付く様子はなく朝練頑張ってねと声を掛けて空のドリンクボトルが入ったカゴを持って僕の前から早々に立ち去った。
他の部員がいる前では僕にくっつかないように我慢しているから。
僕だってそれが適切なことだと思うけれどでも時々それを寂しく思ってしまう気持ちもある。
理性が働かないくらい僕に夢中になってくれたらいいのに、なんて。
今の僕は矛盾だらけだ。
彼女が僕の事を好きすぎるくらいだということは分かっている筈なのに。
もっともっとと求めてしまう自分もいる。
彼女を抱けばこの感情も少しは落ち着くのだろうか。
いや、多分もっと酷くなる、そんな気がするからこそ困っている。
「悪いわね黒子君、お邪魔しちゃって」
「いえ、大丈夫です」
彼女と過ごす昼休み、今日はカントクも一緒だ。
部活のことで彼女と昼のうちに話しておきたい事があるからという理由で。
正直今の僕にとってカントクの存在は有り難い。
最近どうにも暴走しがちだったから。
家でならともかく学校でああいう事はもうしたくない。
万が一人に見られでもしたら何か処分を受けることになる可能性も高いしそうなれば確実に部に迷惑をかけることになるだろうから。
「先に言ってくれてたらリコちゃんの分もお昼作ってきたのに」
「別にいいわよ、そこまでしなくても。
あんたのご飯はもう何度も食べさせてもらってるしお弁当までお世話になるわけにはいかないわよ」
カントクはそう言って購買部で買ったサンドイッチを食べた。
この2人は全然違うタイプなのに凄く仲が良いから少し不思議だ。
まぁでもカントクはバスケの事に関しては厳しいけれど優しくて面倒見の良い人だから。
カントクからすれば彼女は多分面倒の見がいがある女の子なのかもしれない、そう考えると2人の仲の良さにも納得がいく、と思っていたのだけれど2人の会話を聞いていればそれだけではないんだろうなと察した。
どちらか一方ではなく互いに信頼しあっているような、そんな気がする。
「お二人はいつからのお付き合いなんですか?」
2人の打ち合わせを終えたところでそう訊ねると彼女はうーんと悩む仕草を見せた。
「中学が同じなのよ。クラスも一緒だったんだけど話した事は無くて、でもテスト前に学校で勉強してる時私が悩んでた問題の解説をこの子がしてくれたのがきっかけで、それから私が話しかけるようになって仲良くなったの」
「あ、良かった。やっぱりあの時が初めてだったよね?違ってたらどうしようかってちょっと悩んじゃった」
「え、カントクが教わったんですか?」
彼女はテストはわりと余裕があるから、と言って僕の勉強を見てくれていたのだけれど。
正直それ程勉強が出来るということは知らなかったので驚いた。
彼女を下に見ていたわけではない、ただカントクは1学期の中間テストの結果も学年2位だったということを聞いていたから驚いてしまった。
「私の方が頭がいいとかそういうことじゃないよ。なんていうか、あの時の問題結構意地悪問題だったんだよね。たまたま私がそういうの好きだったっからすぐ解けたってだけだよ」
「まぁこの子はこう言ってるけど学力自体私と変わんないから、黒子君もテストヤバかったら遠慮なく頼んなさいね」
そんなに賢い人から勉強を教わっていたのにろくに集中出来ずにあんな事をしてしまった事がカントクにバレたらどんな顔をさせるのだろうか。
怒られる、というよりも普通に引かれてしまう気がする。
まぁ勿論あんな事を話す気はないのだけれど。
...でももしかしたらもうカントクは知っているのかもしれない。
だって彼女にカントクにだけは僕との事を話す事を許してしまっているのだから。
オブラートに包んでほしいとは言ったけれど彼女がそれ程しっかりと包んで話せる人だとは思っていない。
本当に素直な人だから。
「はい、頼りにさせてもらいます」
だからと言って僕からそんな事を言うわけにもいかずそう返事をすれば彼女は嬉しそうに笑った。
この状況で見るその笑顔は少し腹立たしさすら感じるのにでもそれ以上に可愛くて。
僕は本当に彼女が好きなんだと何度も何度も自覚させられる。
「じゃあ私先に教室帰るから!アンタらも授業サボんじゃないわよ」
「はーい、リコちゃんまた後でね」
「はい、お疲れ様でした」
午後の授業の予鈴まであと15分程。
カントクがいなくなった部室で彼女と2人きりになった。
それはよくある事なのだけれどやっぱり今朝ああいうことをしてしまった後なので少し緊張してしまう。
そんなの言わなければ気付かれる筈もないのに。
「テツヤ君今日あんまり元気ない?」
「...いえ、そんなことないですけど...そう見えますか?」
「うん、なんか...」
そう言って彼女は僕の肩に触れるくらいまで近付いて腕に抱きついた。
今はこんな事ですらドギマギしてしまう。
感情を隠す事はわりと得意な筈なのに彼女が関わるとそれは全然上手く出来ない。
「...名前さんの事で頭がいっぱいなせいかもしれないです」
正直にそう話せば彼女は驚いた表情を見せたあとものすごく嬉しそうな顔を見せた。
ああもう本当にこういうところが...
「貴方の頭の中も僕の事でいっぱいになってくれたらいいのに」
「わ、私はテツヤ君のことでいっぱいだよ!
夜寝る時もテツヤ君のこと考えてドキドキして眠れなくなることとか最近多いし授業中も全然集中出来なくて何度か注意されたし部活中はテツヤ君ばっかり見ちゃってリコちゃんに叱られるし!」
「それは...少し抑えましょうか...」
部活中の彼女からの視線にはある程度気付いていたけれど思った以上に彼女は四六時中僕に夢中みたいだ。
嬉しいけれどそれでは彼女の生活に支障をきたしてしまう。
「テツヤ君がいけないんだよ。かっこよくて優しくて私を夢中にさせるから」
彼女は抱き付いた腕に頭を擦り付けた、まるで2号がしているように。
いっそ2号くらい小さければこっそり家に連れて帰れるのに、なんて考えた僕はどうかしている。
「あとね、テツヤ君って多分えっちなことも上手なんだと思う。前シてくれたのが気持ちよくって、もっとシて欲しいって考えたらますます寝られなくなっちゃうから」
どうして今そんな話をするのかと彼女を責めたくなってしまった。
いやもう本当に彼女のそういうところにも慣れた筈なのに。
今すぐベンチに押し倒してお望み通りこの場で襲ってしまおうか、なんて考えが頭をよぎった。
勿論そんな事はしないのだけれど。
常識とか色んな制限を取っ払う事が許されるのであればきっと実行に移している。
「...名前さん」
彼女の顔を両手で包んでそのままキスをした。
当然とびきり大人のキスだ。
彼女は一瞬動揺したけれどそのまま僕の背に腕を回しされるがままになっていた。
キスの最中彼女がもぞもぞと膝を擦り合わせたのを見て背筋がぞくりとした。
今彼女の身体はどんなことになっているのだろうか、と。
「...もう授業が始まる時間ですね。...また今度続きしてあげますから、授業頑張ってくださいね」
「ひあっ!?」
そう言って耳に息を吹きかけると彼女の身体が大きく跳ねた。
ほんの少し意地悪をしたくなった、それだけなのに。彼女は敏感すぎる。
「すみません、立てますか?」
「...テツヤ君、今ティッシュ持ってる?」
「え、はい。ありますけど...」
彼女は顔を真っ赤にしてスカートをぎゅっと握って僕を見た。
「...気持ち悪くて、拭きたいから...ちょっと分けてくれる?」
そう言って再び太ももを擦りつける彼女を見て目眩を起こしそうになった。
今日はキスをしてほんの少し耳を刺激しただけなのに。
「すみま、せん...」
でもそうさせたのは僕だから。
謝って彼女にティッシュを渡し彼女が視界に入らないよう後ろを向いた。
背後でごそごその布が擦れる音がして、それを聞きながら確信した。
多分今夜はなかなか眠れないのだろう、と。
next