今日は物凄くしっかりと眠れた。
目を開けて1番にそう思ったのはひさしぶりな気がする。
最近はテスト勉強に合宿にと予定が詰まっていたから。
アラームを設定せずに寝たのは久しぶりだ。
私の腕の中でまだ眠る彼の姿を見て昨日の事を思い出すと少し恥ずかしくなったのだけれどそのまま彼の頭を撫でると彼は少し身じろいだ後ゆっくりと目を開けた。
「...おはようございます」
「おはよう、ごめん、起こしちゃったね」
まだ眠そうな顔をしている彼の頬を撫でるとその手を握って唇を押し当てた。
こういう事って今の男の子はみんな普通に出来ることなのだろうか?
私はこの人生で付き合った男の子は彼だけなので分からない。
でも出来ればこのまま彼だけを想って生きていけたらいいのにって、そう思う。
「昨日はすみませんでした。
後の処理してくださりましたよね」
「あ、ううん、大丈夫。むしろ服まで着せてあげられなくてごめんね。身体冷やしてない?」
そう尋ね彼の背中に触れてみたけれどいつもと変わらず温かいままだったので安心した。
「大丈夫です。ずっと温めていただいていたので」
彼はそう言うと私のTシャツの中に手を入れて背中を撫でてすりすりと胸に顔を擦り寄せた。
「ちょっとてつ、や...あ、ご、ごめん。私テツヤ君の服着ちゃってたね」
わざとではない、単純に寝惚けていたのだと思う。
私もあの後なんとか処理を終えた頃には眠気がピークを迎えていて、すぐに眠ってしまったから。
それにしてもなんかこれと同じこと前にもした気がする。
「初めてシた時も名前さん間違えて僕の服を着てましたよね。朝方一度起きた時それに気付いて可愛くて襲いそうになりました」
「あっ、ま、待って...!」
背中にあった手が前へと周り直接胸に触れた。
そのままふにふにと揉んで私の顔を見上げた。
「駄目でもやめてでもなく待って、なんですね。
心の準備が出来たら続きしてもいいってことですか?」
またこんな事を言う。
そんなの揚げ足取りだと言いたくなるけれどでも別にそこまで本気で嫌だとか思っているわけでもないからこそ複雑なのだ。
多分反射で出てしまった言葉なのだと思う、私のそれは。
そしてそれを彼も分かっている。
「昨日は寂しい思いをさせてしまったと思いますので続きしますか?」
「...べ、別に寂しい思いなんてしてないよ!
だって普通に私は...」
2回も、という言葉は飲み込んだ。
ストレートに言葉にして伝えるには羞恥心が勝ってしまうから。
でもそこまで考えて私はともかく彼の方が不完全燃焼なのかもしれないと気が付いた。
いや、彼が満足するまで付き合えるかと言われると難しい話なのだけれど。
「...テツヤ君がシたいならいいよ」
「僕は...当然シたいです。でも名前さんにその気がないのなら無理強いはしたくないです。
こうしているだけでもいいです」
こうしているだけって、ずっと胸を触られているってことなんだろうか?
そう考えていると彼はTシャツを捲り胸の項を口に含んでしまった。
私が逃げられないようにいつの間にかがっちりと腰を抱いて。
「っ、テツヤ君っ!」
何も言わずに先端を口に含んだまま私の顔を見上げる彼と目が合って一気に顔が熱くなった。
すると彼は声には出さずに笑ってちゅっと小さな音を立ててそこを吸った。
「...これって、シなかったらずっと、このまま...なの?」
「はい、大丈夫です、これ以上はしませんから。
だから無理はしなくていいです」
先程から脚には硬いものが押し付けられているというのに、本気で言っているのだろうか?
でも私はこんな事をずっとされているだなんて、耐えられる筈がない。
でもそれをやめさせるには私の方から彼を望むしかなくて。
強引に引き離せばいいだけの話だとは分かっているけれどそれをしたくない自分もいて、ならばもう答えは出ている。
「...テツヤ君。...昨日の続き...したい、です...」
そう言って彼の頭にキスをすると彼は顔を上げて凄く嬉しそうな顔をした。
子供の頃から見慣れた笑顔な筈なのに、今では全然違うものに見えてしまう。
「今日はしっかり寝て体力もバッチリ回復してますから、期待してくれていいですよ」
普段から、昨日だって私は十分過ぎるくらい満足しているというのに。
そんな風に言われてしまえば一体なにをされるのだろうかと不安になってしまう。
「今日は一日僕の事だけを考えていてくださいね」
そんなのわりと普段からそうなのだけれど。
でもそれを今言うのは空気が読めていない感があるのでやめておいた。
昨日よりも更に時間をかけ、焦ったいくらいゆっくりと進められる行為に私はただ溺れることしか出来なかった。
「テツヤ君ってむっつりだよね。青峰君とかの前ではそんなの興味ありません、みたいな感じなのに。」
「...僕がそういう欲を他人と共有しない人間なだけです。こんなの普通ですよ、別に」
限界を訴えた後少し休憩して2人でもう一度お風呂に入った。
シャワーで済まそうと思っていたのだけれど彼がそうしたいと言ったからだ。
のぼせやすくて長湯は出来ないタイプだけどこういうことは好きみたいだ。
「貴方のせいでもあるんですよ。僕にそういう欲が生まれたのは殆ど名前さんのせいなんですから。だから一生をかけて責任を取ってください」
後ろから私を抱きしめてうなじにキスをして。
一体私はどこで接し方を間違えてしまったのだろうかと記憶を辿ってみたけれど別に思い当たる節はない。
敢えて言うならキスやハグをやめさせなかったことだろうか。
でもあれだって子供同士の可愛いものだったのだと思うのだけれど。
多分あれだと思う、たまたま近くに自分を甘やかしてくれるお姉ちゃんが...いや、同い年なのだけれど。
まぁそういう女の子が居て純粋に慕っていたのだけれど思春期特有の何かフィルターのようなものが掛かって見方が変わってそれが恋愛感情へと変換したんじゃないかって。
結果的に私はもう彼をそういう対象として見ているのだから私にとっては幸運なことだったのだけれど。
「...私は今からテツヤ君以外の男の子を好きになるなんて無理だと思うよ」
「またそうやって、どうして貴方は僕は心変わりするかもしれないみたいな言い方をするんですか。
いい加減怒りますよ」
彼はそう言って私の肩に噛み付いた。
それ程強く噛まれたわけではないからそこまで痛くはないのだけれど。
それにさっきの言葉にそんな意味を含んでいたつもりは無かったのだけれど。
多分もしそうなった時自分のダメージが少しでも少なくなるよう無意識のうちに予防線を張ってしまっているのではないだろうかと思う。
「...不安になっちゃうの!...テツヤ君がどんどん素敵な男の子になっていっちゃうから。...だからもしもの時ダメージを受けないようにって、私もいっぱいいっぱいなの!」
まるで子供みたいに、いや、今の私は誰が見たって、法律的に見ても子供なのだけれど。
でも昔は、前の人生ではここまで素直に自分の気持ちを伝えることなんて出来なかった。
それを思えば子供であり続けることはけして悪くない部分もあるのかもしれないけれど。
「僕だって不安になりますよ。貴方がどんどん綺麗になって、身体もすっかり大人の女性になって。
僕と同じように貴方の事を好きだという男性も現れて...だから不安なのは僕も同じです」
今になってあのラブレターの彼の話を掘り返されるとは思っていなかった。
というか薄情かもしれないけれど私は完全に忘れてしまっていたのに。
多分彼にとってあの人は地雷になったのだろう。
でもそんな事を言ったらテツヤ君だって、という気持ちもある。
「...テツヤ君だって私が知らない間にさつきちゃんと凄く仲良くしてたじゃない...」
今思い返したってそんなことは関係無しに私をずっと好きでいてくれたことは分かっているし本気で怒っていたわけではないけれど、でもやっぱり少しはヤキモチを妬いていたんだと思う。
「...私多分帝光に行ってたら今こうしてテツヤ君と居られなかったと思う。多分自信が無くて、距離とってたと思う」
「なんなんですか、それ!そんなことしたって貴方が逃げたって僕が捕まえてますよ」
彼はそう言って私のお腹に回した腕に力を込めた。
腕をフルに使う彼の腕は結構筋肉質で、意外と力もある。
だから苦しい。
「貴方が桃井さんの事を言うのであれば僕も言わせていただきますけど最近貴方達は仲が良すぎだと思います。僕はそれを見ていつもヤキモキさせられてます!」
先に男の子の話題を出したのは彼の方なのに、でもそれを言ってしまえばややこしいことになるのは目に見えているから言わないけれど。
「でもこんな事言ったらさつきちゃんには失礼かもしれないけどさつきちゃんがあれだけ私の事も好きになってくれたから私は安心出来るとこもあるんだよ。...あんな可愛い女の子がテツヤ君の事ずっと好きだったら、なんて考えたら怖くて仕方ないよ」
「そこは僕の気持ちを信じてくださいよ!
というかそんなに僕の事が好きならその気持ちをもっと僕に伝えてください」
彼に腰を支えられて浴槽の中で膝立ちになった。
こちらを向けという事なのだろうと察して私は彼の方を向いた。
こんな明るい場所で何も身に付けずに彼と向き合うなんて恥ずかしくて仕方ない。
まぁ明るさの話をするならば彼はベッドの上で電気を消してくれた事なんて一度も無かったのだけれど。
「...好きだよ。...私もう何度も言ったと思うけど、ちょっとしたことで不安になっちゃうくらいテツヤ君の事が大好き」
何度も言った言葉を再び口にすると彼は私の顔をじっと見上げて目を閉じた。
キスをせがまれているんだという事は容易に想像出来たから彼の望むがままにキスをすると彼に腰を抱き寄せられまた深いキスをした。
お風呂なのに、本当にこんな事をしていたら彼がのぼせてしまう。
そう思いながらも私はそのキスをやめられなかった。
それは本当に気持ちがいいものだったから。
身体にも、心にも。
「...お風呂出て、お昼食べたら近くでいいからちょっとだけお出掛けしない?...このまま家にいるとお母さん達帰ってきた時いかにもお泊まりしました、みたいな感じがして...なんかちょっと...」
「...はい、勿論いいですよ。僕も名前さんのご両親に嫌われては困りますから。いずれは僕にとっても義両親になる方々ですからね」
彼はこちらが反応に困ることばかり言うのだから。
多分これに関しては計算とかではないと思う。
普段はちょっとそういうところがあるとは思うけれど。
テツヤ君のお母さんはともかくいずれテツヤ君のお父さんをお義父さんと呼ぶ日がくるのかと考えると少しくすぐったい。
「ちょっとやそっとのことじゃお母さんがテツヤ君の事嫌うなんてないと思うけどね。多分お母さんテツヤ君みたいな人が好みなんだよ」
「だとしたら名前さんはお母さん似ですね。良かったです、貴方のお母さんが僕の事好みだったみたいで」
普通の男の子はこんな事を言われても戸惑って反応に困ると思うのだけれど、そこはやっぱりテツヤ君だからこそなのだと思う。
多分好きになったら年齢とか、なんだったら性別とかも気にならないんじゃないかって思う。
「私もテツヤ君のお父さん好きだから、多分そうなんだろうね」
顔はお母さん似の彼だけれど性質はお父さんそっくりだと思うから。
まぁさすがに彼程目的以外のものが見えなくなってしまう人ではないとは思うのだけれどもしかしたら昔はその辺りも彼と同じだったのかもしれないと勝手に想像した。
「...僕の父の事はいいです。名前さんが好きだと言っていい男は僕だけでいいです」
私の幼馴染で恋人の彼は本当に可愛くてかっこよくて、私の事が好き過ぎる。
まぁ私だって人の事は言えないのだけれど。
「上がろっか」
天気はいいけれど外は暑いから、今日はどこかでゆっくりお話ししながらお茶でも飲めたらそれがいいかと、そう思う。
end