「私ね、不安になっちゃったの」
「はい...」
両手を彼と繋いで、見つめ合ってキスをして。
「他の人から見たらテツヤ君にはもっとお似合いの人がいるんじゃないかって」
「...名前さんは僕を過大評価しすぎなんです」
何も纏わず触れる肌は気持ちよくてもっと触れてって身体が望んでしまう。
「私の方が後で好きになって、テツヤ君のこと私の方が知らないことがいっぱいあって」
「貴方に隠し事なんてするつもりはありません。
知りたいことはなんでも聞いてください」
なんて優しく触れるんだろう。
私の方が大切だって、大好きだって全身で言ってくれているような、そんな気がする。
「私、テツヤ君のこと知らないことが恥ずかしいとか、悔しいって思ってないの。そんなの関係ないくらい今のテツヤ君の事大好きだから」
彼が触れた場所全部が熱を帯びてその熱にだんだん頭がクラクラしてきた。
「知らなくたって私が1番テツヤ君の事好きだって、心から思ってるの、その、上手く言えないんだけど...」
「...はい、大丈夫ですよ。ちゃんと伝わってます」
上手く頭が回らない。
回ったところでこの場で適切な言葉なんて浮かばないかもしれないけれど。
いっそ考えたくない、ただただ酔いしれていたい。
彼に与えられる愛情に。
「私以外に触れて欲しくない、触れられてほしくないの。急にテツヤ君を独り占めしたくなって...」
「...大丈夫です。独り占めしてくれていいんです。僕は貴方のものなんですから」
数ヶ月前の出来事、目の前で見ていたその時の光景がやけに鮮明に頭に蘇った。
前は彼のことなんてただの部活の後輩としか思っていなかったから。
だからその時は何も感じなかったのに。
でも今同じものを見てしまえばきっと冷静ではいられない。
「誰に認めてもらえなくたってテツヤ君が私を認めてくれるなら別にいいって思ってたのに、でも、本当に分からなくて....」
別に黄瀬君に私を否定されたわけじゃないのに。
黄瀬君が驚いた理由がテツヤ君に彼女が出来たからってことだけじゃない気がして。
比べられたんじゃないかって勝手に不安になって。
だってどっちがって比べたら多分私はテツヤ君を好きだって気持ち以外なにも勝てるものを持っていないから。
彼はそんな考え方を、人を比べるようなことをする人じゃ無いって知っている。
だからこそそんな事を考えてしまった自分が汚く思えて勝手に嫌になっておかしな態度をとって。
そして彼を傷付けた。
彼はずっと大丈夫だよって語りかけるみたいに私に触れる。
その優しさが苦しくて痛くて、でも嬉しくて、気持ちよくてたまらなくて。
「テツヤ君が好きすぎておかしくなりそう」
人を好きになるってただただ幸せなことの筈なのに。
その分だけ別の何かに怯えて悲しい気持ちになって普段の自分とは、彼を好きだという気持ちとは正反対の行動を取ってしまう。
「...僕だって同じですよ」
互いの額をくっつけて、至近距離で視線が交わって。
嬉しいけれど今は彼の真っ直ぐな視線が、自分の後ろめたさを増幅させられるような、そんな気がして気まずくて彼の目から逃げるように顔を逸らせば頬を掴まれて強制的に戻されてまたからは真っ直ぐ私の目を見つめた。
いつもならこんなの普通なことの筈なのに、それが嬉しい筈なのに今は凄く恥ずかしい。
「...不謹慎だと叱られてしまうかもしれませんが今の貴方は今までで1番可愛い顔をしていますよ。僕が好きで好きで仕方ないって、それが普段以上に伝わってきます」
彼から降り注がれるキスに酔いしてる。
キスってここまで気持ちが良いことだったけ、と疑問を抱くくらい。
元々大好きな行為だけど、今日のキスは今までと比べるられないくらいもっと好き。
「名前さんは僕にとって太陽みたいな人でした」
あんなに丁寧に、大切に、解してくれたのに、感じるのはえぐいくらいの痛み。
一つになりたいって心から望んでいるのに、無理だって身体が彼を追い出そうとしているみたい。
それが嫌でどうにか身体の力を抜こうと頑張ってみたけれど思うようにいかない。
彼はそんな私に大丈夫だよって言うみたいに沢山キスをしてくれた。
「貴方のその熱にあてられると僕が隠しておきたかった感情も全て丸裸にされてしまうんです」
でも今涙が溢れているのは痛いからなんかじゃない。
これは嬉しくて仕方がないからなんだよって。
伝わって欲しくて私からも唇を、舌を絡めて。
「だから貴方に隠し事はやめようって、そう決めたんです。どんなに汚い部分も全部見せたって貴方が僕を嫌いになんてならないって分かったから」
私の顔にぽたぽたと彼の涙が落ちた。
きっと彼も私と同じ、安心して涙を流しているんだと思う。
「愛しています、以前よりも、貴方を好きだとお伝えした時よりもずっと、名前さんの事が大好きです」
心だけじゃない。
愛する人と繋がる事がこんなに幸せなことなんだって、私は今日本当の意味でそれを初めて知った。
「私も、私の方がテツヤ君の事大好きだよ、...絶対」
私を好きになってくれてありがとう。
きっとあの日彼が私に想いを伝えてくれなければ今の私はこんなに幸福では無かった筈だから。
「テツヤ君ボディクリームとか塗ってるの?」
最低限身体を綺麗にした後もなんだか離れがたくて布団の中で服も着ずにくっついていた。
彼の身体はどこに触れてもすべすべで、それが気持ちよくってついつい胸に顔を擦り付けた。
「いえ、クリームなんてスポーツ用の皮膚の保護クリームくらいしか使ったことないですよ」
「こんなにすべすべなのに...」
運動をして汗をながし、栄養のある食事を摂ってしっかり眠る。
きっとこれが1番なんだと思う。
でも分かっていてもなかなか出来ないから私なんかはそういうものに頼ってしまうのだけれど。
「そうですか?名前さんだってすべすべでしたよ。どこを触ったって」
彼はそう言いながら私の二の腕を撫でた。
そんな彼の顔を見つめると彼は私にキスをしてくれた。
嬉しくてもっとぴったりとくっつこうとしたけれど彼は腰を引いた。
理由はなんとなく分かる。
別に気にしなくたっていいのに。
「テツヤ君の触ってもいい?」
「う、...今は駄目です」
彼はそう言って私に背を向けてしまった。
無理強いなんて出来ないけれど後ろを向かれてしまうのは寂しい。
「じゃあ見るだけでいいから」
「もっと駄目です...!」
結局ちゃんと見ていないから見たくてお願いしてみたら随分はっきりと拒否されてしまった。
ちょっと寂しくなって背中にぎゅっと抱き付くと彼は身体を強張らせた。
これも駄目なのかと思いながら彼のお腹を撫でているとその手を握られた。
「僕が耐えてるの、分かってください」
「...なんで耐えるの?耐えなくていいよ」
うなじにキスをして強引に彼のモノに触れた。
凄く硬くてびっくりして、ドキドキした。
私とくっついていてこんな風になってしまうんだって考えると、ちょっと嬉しい。
「えっちしようね、テツヤ君。これから沢山」
ぎゅーっと抱きついて、互いに何度も好きだよって何度も言って、それは本当に幸福な。
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