甘くて溶けてしまいそう

「...俺はどちらかと言えば可愛がりたいタイプなのだけれど」

「でも今は私が可愛がりたいの」

腕の中に彼を抱きしめてよしよしと頭を撫でると彼は困ったような表情で笑う。
でも私を拒むようなことはしない。
私の好きにさせてくれている。
いつだって彼は優しい人だから。

「漫画か何かの影響かい?」

「ううん、でも私が辰也にこうされるの嬉しいから、だから私もしたいなって」

額にキスをすると彼もお返しだと言わんばかりに首を伸ばし私の顎にキスをした。
私が彼の額にキスが出来るのは彼が座っているかベッドの上でしか出来ないから、それもまた嬉しい。

「こうしていたら身長差なんて気にならないね」

彼を仰向きにしてその上に覆い被さって。
得意げにそう言ってみたけれど彼が焦る様子はない。
私が同じようにされれば恥ずかしくて顔を逸らしてしまうのに、いつだって余裕がないのは私の方だ。

「そんなことを気にしていたのかい?」

「...気にするって程じゃないけど...」

彼の唇に触れるだけのキスをした。
その瞬間自然と目を閉じてくれることが私を受け入れてくれているようで嬉しい。

「私からキス出来ないから...」

「したいって言ってくれたらいつだってしてあげるのに」

私の顔を両手で包んで引き寄せて、今度は彼の方からキスをした。
すぐに終えると思い顔をあげようとしたけれど彼に顔を固定されてしまいそれは叶わなかった。
角度を変えて、唇を噛むように動かして、口を開こうとすればそのまま口内に彼の舌が入り込んで私の舌を捕まえた。

「んっ...た、つ...」

濃厚で深いキス。
逃がさないと言わんばかりに頭の後ろに回された手。
口を閉じられないから上に乗っている私の唾液が嫌でも彼の口内へと流れでいってしまう。
彼はそれを気にする素振りも見せずにキスをし続けて。

そのキスが気持ちよくてどんどん頭がぼんやりとしてきて身体も力が抜けて、気付けば彼と体勢が逆転してしまっていた。

「やっぱり俺はこっちの方がしっくりくるかな」

そう言って笑う彼はとても色っぽい。
とても同い年になんて見えない。
多分彼にとって私は初めての女の子じゃない。
少なくともキスは絶対。
アレックスさんだけじゃないと思う。
だってあまりにも慣れているから。
アレックスさんとはこんなキスはしていたとは思えないから。
彼女が彼に向ける愛情はどう見たって家族に向けられるものと同種だから。
まぁそれでも最初は嫉妬してしまったのだけれど。

「今日は一日デートの約束をしていたけれど何かしたいことは決まった?」

彼はそう言って触れるだけのキスを何度もして。

「殆ど毎日練習で十分に構ってあげられていないから寂しい思いをさせてしまっているし。俺に出来ることだったらなんでも言ってくれて構わないよ」

優しい笑みでそう言って、もう一度キスをして。
見た目だけじゃない、中身まで甘い人だ、彼は。

彼の特別な女の子でいられたらもう他に何もいらないって、そう思っていた筈なのに当たり前みたいに私を甘やかすから。
私はどんどん欲深くなってしまう。

「辰也が作るご飯が食べたい」

「いいよ、それから?」

どんどん彼がいないと生きられない女の子になっていく。

「一緒に観たい映画があるの」

「うん、一緒に観よう」

こんなんじゃ駄目だと分かっているのに、でもそこから抜け出せなくて。

「...いっぱいいちゃいちゃしたい...」

「勿論。俺も充電させてもらうよ」

彼も本当は分かってやっているんだろうって、それがなんとなく分かる。

「...私も同じだけ充電させてね」

「俺と同じだけのことをしたら明日は動けなくなってしまうかもしれないよ」

彼の綺麗な手が私の髪を掬って、そこにキスをして。
髪に感覚なんてあるわけないのに私にはそれがとても気持ちのいいことのよう思えた。

「いいよ、別に」

私はいつだって貴方に支配されていたいから。
私の全てが彼のものであると、そう思っていたいから。


end