純白のドレスを纏った私の横には、凛とした佇まいの彼。
お祝いに集まってくれた親族や友人達に見守られ、式場の空気は、温かかった。
でもどこか絶妙に騒ついているようにも感じた。
列席しているほぼ全員からこの二人は大丈夫なのだろうか、という、そんな心配に満ちた表情を向けられていたからだ。
当事者である私はどうにでもなる、というかわりと楽しく過ごせそうだと思っているのだけれど。
でも他人事だというのにそんな心配をしてくれる友人がいるというのは有難いことだと思う。
火神君を始め誠凛メンバー、そしてキセキの世代とマネージャーであったさつきはもちろん全員出席してくれた。
披露宴会場に移動すると友人達の会話が私の耳にも聞こえてきた。
「黒子っちがついに結婚っスか...まさか本当にここまでこぎつけるなんて...」
「なんかまだ、言じられないっていうか...いやもう信じるしかないんだけど...」
黄瀬君はさすがモデルだなって、納得しちゃうくらいオシャレな装いだ。
さつきのドレスも凄く似合ってる。
相変わらずスタイルがいい。
「おめでたいことだけれど...あの黒子が彼女と合法的に四六時中一緒にいられる状況を手に入れたのは少し怖い気もするな」
「いや〜でも名前ちんも名前ちんで監禁されるより結婚がいいとか言ったの普通に怖いし...」
「...まぁどっちもやべぇんだからいいんじゃねぇの?」
私に聞こえているのだから隣に座る彼にだって聞こえている筈なのに彼はそんなの気にする素振りもなく熱のこもった視線を私に向けていた。
新居同様式のことも殆ど彼に任せていたのだけれどドレス選びくらいは、と思い頑張ってみたのだけれど試着をすればするほど正解が分からなくなってドレス選びの時間も限られていることもあり結局は彼に選んでもらった。
だから多分彼の好みのドレスだと思う。
それもあって彼はドレスを着た私をいつも以上に見つめているのだろう。
「テツヤ、このお肉めちゃくちゃ美味しいよ」
「そうですね、僕の分も少しあげますね」
彼はそう言って食べやすいよう一口サイズにカットしてから私の口元へと運んだ。
どうしようかと一瞬悩んだけれど多分滅多に食べられないレベルのお肉だから私は彼の厚意に甘えそのまま食べた。
美味しいと言うと彼は心底幸せそうな笑みを浮かべた。
こういうところは本当に好き。
なんで普通に告白してくれなかったんだろうって正直思う。
そんな私たちを見て先ほどまではお祝いしたいけど感情が追いつかないという空気を纏っていた友人達の空気が少し和らいだ気がした。
「ドレスなんて着る機会なかなかないから写真いっぱい撮ってもらえて嬉しいよ」
テーブルラウンドをしているとテーブルを移動する度にみんなが写真を撮ろうと声をかけてくれた。
そんなみんなと笑顔でみんなと写真を撮っている時だった。
「すみません、先程撮った写真を少し見せていただけますか?」
彼はその時写真を撮っていた伊月先輩の背後にぬるりと近寄りそう声をかけた。
伊月先輩は苦笑いを浮かべ素直に彼にスマホを渡した。
さすが先輩だ、彼の奇行には慣れている。
「...角度は問題なし、ライティングも良好...ですが名前さんの肌が少し明るく飛びすぎています。これは調整の必要がありそうです。というかこの人距離が少し近いですね」
「うわ.....出たな、黒子の名字の写真に男の写り込みチェックが...」
真剣な顔で写真をチェックする彼の呟きを聞いて日向先輩が顔を引き攣らせた。
それにしたってどうして彼はここまで写真のことになると本気なのだろうか。
今は式の途中だというのに彼は写真に夢中になっている。
時折りうっとりとした表情で笑みを浮かべ、その異質さに周りの友人達は顔を青ざめていた。
「テツヤ...今この瞬間、目の前に私本人がいるんだけど......?」
「...わかっています。ですが...ですがどんな貴方も、どんな瞬間の名前さんも見落としたくなくて...!」
その場の空気に耐えかねてそう声をかけた。
彼は少し渋りながらも分かりましたと言ってスマホを返した。
しかしそこで終わる彼ではない。
「この場で撮影されたすべての写真、動画をできれば全部、僕に送っていただけますか?」
そう言って、参列者全員に丁寧にお願いして回った。
私の元に帰ってきた彼に何も全員にお願いしなくても、と言うと彼は真剣な表情で答えた。
「思い出は一秒たりとも取り溢したくありませんから」
果たして彼のスマホのストレージは足りるのだろうか?なんてどうでもいい事が気になった。
「名前ちゃん、黒子君!本当におめでとう!」
「末永くお幸せにな!...いやほんとに、マジで...!」
「結婚まで出来たんだからちっとは落ち着けよ、黒子」
カントク、小金井先輩、火神君、みんなが私たちを祝福の言葉をかけてくれた。
正直なところ結婚式はかなりお金も掛かるし私としては別にしなくてもいいと思っていたのだけれどいざこうして家族や友人達に祝ってもらえるとやっぱりして良かったなと思った。
彼の強引さがなければきっとこの喜び味わえなかった筈だから。
「幸せになろうね、テツヤ」
「はい、寧ろ僕はもう幸せの絶頂にいます!」
結婚式が終わったら次は楽しい新婚旅行が待っている。
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