静かな、静かすぎるホテルで二人っきり。
ベッドに横たわった私を見つめる彼の瞳は、いつもより揺らめいていた。
「…名前さん、貴方が苦しむことのないよう…優しく、丁寧に触れさせていただきますから…」
そう言った彼の声も私に触れている手も少し震えていた。
彼も緊張しているということが伝わってきて、私自身の緊張も少し和らぎ自然と笑みが溢れた。
「テツヤ…大丈夫だよ。私も、テツヤとだから…始まりはちょっと人とは違ったかもしれないけど今はテツヤに結婚しよって言ったの良かったなって思ってるよ」
硬い表情になっていた彼の顔にそっと手を伸ばし頬に触れると、彼の震えは止まった。
そしてそっと私の手に唇を寄せた。
その動作は普段よりぎこちなくて、でも私への愛しさが滲み出ていて、胸がぎゅっとなった。
「…名前さん、貴方が可愛すぎて、愛しすぎて…どうしたらいいかわからなくなります…」
彼は慎重に、慎重に私に触れていく。
再び手が震えたり、大丈夫なのだろうかという表情をして戸惑って手が止まったり。
少し力加減を間違えて、慌てて私に謝ったり。
そんな一つひとつが、彼のらしくて愛しさで胸がいっぱいになった。
だからそんな彼の首に腕を回して囁いた。
「テツヤに全部任せるよ。テツヤの好きにしていい、全部あげる」
私が発した一言で彼の目からぽろりと涙が溢れた。
彼は私の前ではよく泣いてしまう。
それが私を好きすぎるからだということを知っているからその涙も愛しいと感じる。
「…僕、名前さんを絶対に...絶対に幸せにします...僕を選んで良かったって思ってもらえるように...!」
誓いのように呟いた。
そんなのとっくに思ってるのに。
彼以上に私を愛してくれる人にはもう絶対出会えないと思っている、だから結婚しようと言ったのだ。
彼はそっと、優しいキスをした。
そして初めて一つになった。
痛みはやっぱりあったけれどそれ以上に彼の優しさが、愛情が伝わってきて心を満たしてくれた。
ぎこちない動きに震えるキス、何度も痛くないですか?って、労わる言葉をかけながら行われる行為。
全部、全部が、私だけを想ってくれる彼の愛だった。
夜が深くなるにつれて彼も少しずつ慣れ、私の痛みもかなり和らいで、それでも最後まで、どこまでも優しく、私を壊さないように抱きしめ何度も何度も愛を伝えてくれた。
どのくらい時間が経ったのだろう。
私も彼もとうとう体力を使い果たしてベッドに力無く沈んでしまった。
いや、多分彼は私ほどではないのだろうけど。
彼は私の身体を抱きしめ頭を撫でながら優しく問いかけた。
「名前さん…大丈夫ですか?...痛いところはありませんか?」
している最中も何度も何度も聞いていたのに。
私が大丈夫だよと小さく首を振るとほっと息をつき、私の首元に顔を埋め、ちゅ、とリップ音を立てキスをした、
「…よかった。…本当に、よかった…貴方を傷付けることにならなくて」
小さな声で何度も何度も繰り返しながら彼は私を抱きしめ顔中にキスをした。
すこし涙混じりの声で。
「…名前さんは、僕の、たった一人の特別で大切な人です。…世界一可愛くて、僕の愛する妻です…貴方の夫になれたことが本当に幸福で、きっと今の僕ほど幸せな人間はそういません」
とろけるような甘い言葉を彼は飽きることなく何度も囁いた。
愛してるだなんて、本来こんなに言ってもらえる言葉なのだろうか?
少し気恥ずかしいけれどその度に胸の奥がじんわりと温かくなっていく。
「私も…テツヤの奥さんになれて良かったよ…」
素直な気持ちを伝えると彼はまた目を潤ませた。
「…僕、幸せすぎて、どうにかなりそうです…」
かすれた声で呟いた。
その夜、彼は何度も何度も私にキスをして、抱きしめて繰り返し愛を囁き続けた。
きっと私たちはその日世界で一番甘い夜を過ごした。
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