沢山の愛で貴方を包みこみたい

熱が引いて、喉の違和感もだるさも消えて、いつもの元気な笑顔を見せてくれた彼女。

「やっと復活した...重いものじゃなくても久しぶりの風邪はしんどいね」

「本当によかったです。名前さんが苦しむ姿はやっぱり見たくないですから...」

彼女にぴったりとくっついて抱きしめた。
寝込んでいる時は出来なかったから。
その寂しさを埋めるように。
彼女はそんな馬鹿を抱きしめ返してくれた。

「...貴方が辛い顔をして眠っている間、少しでも僕が代わってあげられたらって...何度も思いました」

「テツヤが風邪をひくより私がひいた方がずっといいよ。だってテツヤは絶対無理するから」

彼女のは笑って僕の背中を撫でた。
無理...するんだろうか?
もしかしたら風邪を理由に彼女のに甘える可能性だってあるのに。
彼女にとって僕は無茶をする人間に見えているんだろうか。

「...テツヤ...」

彼女は僕の胸を押しこぶし一つ分距離をとって首を伸ばし僕の唇にキスをした。
少し驚いたけど彼女からしてくれたことが嬉しくて僕からも彼女にキスをした。
すると彼女ははにかむ様子を見せ僕の肩に顔を埋めた。
多分甘えてくれたのだと思う。
そしてそれが恥ずかしくなって顔を隠してしまったのだと思う。

「名前さん?」

優しく名前を呼べば彼女はゆっくりと僕の肩から顔を上げた。
そして僕の目をじっと見つめて。

「...今日も、甘えてもいい?...いつも甘やかしてもらってるから今更、なんだけど...」

いつもより小さな声で、遠慮がちに。
どうしよう、これは...かなりまずいです。

「...すみません、...正直理性の限界が...かなり...」

「え...どうして?」

僕の不純な気持ちにも気付かない純粋な彼女が堪らなく愛しくて、全部染め上げてしまいたくなる。

「貴方のそんな顔を見せられて、そんな言葉を聞いて...冷静でいられるわけがないじゃないですか...心臓が足りません...」

「...心臓が足りない?」

まぁはい、おかしなことを言っているという自覚はあります、普通に。
でも他に適切な言葉が浮かばなかったんです。
身体がどんどん熱くなっていく。
これは昨日までの彼女と同じように熱が出てしまったわけではない。
だってこれは何度も体感したものだから。
彼女を想って、何度も、何度も...

「テツヤ...私もう元気だよ。だから、ね?」

ああもうどうして彼女はこんなに僕に甘いのだろう。
労りたいと、大切にしたいと思うのに。
それならせめて...

「...優しく、します...」

愛しくて堪らない、他に代わるものなんてない、最愛の彼女を。







「...今日はもう一日名前さんのために時間を使います。何をしてほしいことはありますか?」

「う〜ん、...ずっと寝てたらからちょっと身体が痛いからマッサージとか?あと一緒に映画とか観ながらゴロゴロとか?」

もっと我儘を言ってくれたらいいのに。
そんなのいつだって出来ることなのに。

「全部叶えます。名前さんの願いを叶えることは僕の生きる理由ですから」

でも無理強いをしてしまっては意味がないから。
それじゃあ僕の我儘になってしまうから。
僕が不満を感じていることに気付いたのだろうか。
彼女はまた悩む素振りを見せた。
そして何か思いついたようで、あ!と言って僕に笑顔を見せ。

「今度私が風邪をひいても写真は一枚までにしてね!」

「...えっ...」

予想外の言葉に僕は驚いて一瞬反応が遅れた。
彼女はそんな僕を見ていたずらっ子みたいな顔で笑う。

「元気な時に可愛く撮ってもらいたいからね!」

僕にとってはどんな彼女も魅力的なだけれど。
でもどんな願いも聞くと言ってしまったから。

「...わかりました。...でも、もう...苦しむ貴方は見たくないですから...だからずっと元気でいてくださいね」

元気に笑う貴方で溢れたアルバムを作ろう、そう決めた。


next