食べてしまいたいくらい大好き

彼女の風邪が治ってから約1週間、お弁当を届けてもらったお礼もしたくて明日はどこか空気の良い場所にでもデートに行きませんかと誘ってみた。
彼女は途端に嬉しそうな顔をして牧場に行きたいと言った。
なにやら最近テレビで特集されていた牧場が気になっていたようだ。
僕が承諾するとありがとうと言って僕に抱き付いた。
まったく、本当に可愛すぎて困ります。

「天気もいいみたいです、明日に備えて今日は早めに休みましょうね」

「うん、服だけ選んどくね」

彼女は上機嫌でクローゼットを漁りこれとこれならどっちがいいと思う?と僕に何度も聞いてきた。
何を着たって可愛いですよと言うと彼女は真面目に考えてと少し不貞腐れた。
その顔が可愛かったので思わずスマホで写真を撮れば彼女は怒りはしなかったけれど少し呆れ顔だ。

「もっと可愛い時に撮って」

「可愛いと思ったので撮ったのですが...」

僕がそう言うと彼女はそれならいいけど、とあっさりと許してくれた。
本当にこういうところも大好きだ。







「うわ〜!可愛いっ!!」

予定通り彼女の行きたいと言っていた牧場に、少し遠かったので折角だから宿を取った。
今日はお泊まりデートだ。
羊たちを誘導する牧羊犬を見て微笑む彼女が可愛すぎる。
僕はすかさず一眼レフカメラを構え写真を撮っていく。
パシャパシャと何枚も連写している僕を見た他の観光客が少し騒つき始めたけれど彼女はもう慣れてしまっているのか気にする様子はない。
本当に彼女は寛容というか、理解の広い女性だと思う。
僕の愛を理解して受け入れてくれているのだから。

「テツヤ、あっちでポニーにご飯あげられるみたいだから行こ!」

パンフレットを手ににこにこ笑顔で、ああ、本当に心が洗われる気分だ。
この笑顔を独り占めすることが許されている僕は最高に幸せ者だと思う。

「慌てなくて大丈夫ですよ」

こんな時間が永遠に続けばいいのに、そう心から願った。



「うわ〜、この子めっちゃ人懐っこい!...あははっ、顔舐められちゃった!」

ケラケラと笑う彼女に硬直する僕。
いくら動物だからって彼女の顔を舐めるなんて、そんなの僕でも殆どした事がないのに。

「...今夜の食事は馬肉にしましょうか」

瞬間的に湧いた憎悪、つい口を滑らせてしまった。

「動物にまで嫉妬するのはさすがにやめて!」

動物的、感が働いたのだろうかポニーは僕から隠れるように彼女の背に顔を擦り立てた。
彼女にそんなことをしていいのだって本当は僕だけの筈なのに。

「ごめんね、怖かったね〜」

彼女はそう言ってポニーを優しく撫でると今度はお腹に顔を擦り付ける。
可愛いと言ってはしゃぐ彼女は可愛いのだけれどやっぱり僕としては少し複雑な気分だ。
ポニーより僕のことを撫でてほしい。




「晩御飯ほんとに馬肉じゃなくて良かった...あの子のこと絶対思い出しちゃうから今日は食べられなかったと思うから...」

「貴方を泣かせたいわけではありませんから。
でも本当に嫉妬はしてます。...僕も動物になれたら名前さんに可愛がってもらえるのかなって本気で考えました」

持っていたグラスをテーブルに置いて彼女の手を握った。

「僕がなんの動物になったら1番可愛がってくれますか?」

子供みたいな、絶対に叶わない願望を口にした。
彼女はうーんと悩む素振りを見せた。
でもすぐに笑って。

「私的にはテツヤのこと1番可愛がってるつもりだから人のままでいてほしいんだけど...」

彼女はそう言ってデザートのアイスをスプーンで掬って僕の口へと運んでくれた。

「ご飯の後部屋で沢山可愛がってあげるからね」

「...うぅ...名前さんが好きすぎておかしくなりそうです...!」

「最初からおかしいから大丈夫だって!」

天使みたいな愛しい彼女はこの後僕がお腹や背中、顔を舐め回しても怒らず受けとめてくれた。
食べてしまいたいくらい可愛いですと言うと彼女はやっぱり怖いねと言って笑った。
たっぷりと愛し合った後何も身に纏わずに布団に包まってぴったりと抱き合って。
じっと見つめると彼女は気恥ずかしそうに笑った。

「人じゃなくなったらこういうことも出来ないから、それは寂しいからずっとこのままでいてね」

彼女から贈られた可愛いキスに僕はまた元気になってしまった。

「今夜はもう少し触れ合っていたいです」

愛しくて堪らない貴方と、許されるのであれば永遠に。


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