これから先もずっと特別な日を

「結婚して初めてのテツヤの誕生日だから気合いいれて準備しよ!」

食事は全部彼の好物ばかりにして、写真が好きな彼の為に二人で撮った写真でフォトブックを作って、夜は良い香りのするアロマキャンドルを灯して少しでもロマンチックな雰囲気を出せるように演出してプレゼントを渡す。
挙げてみれば大したことではないかもしれないけれど今私は仕事もしていないからあまり見栄を張り過ぎない程度に心を込めてお祝いしたい。

料理の下ごしらえを終わらせて、仕上げは彼が帰ってきてから。
取り敢えず予約しておいた誕生日ケーキを取りに行く為に外出着に着替え家を出た。
彼には何も伝えていないから驚くだろうなと。
お祝いする側もこんなに幸せな気分になれるのだから誕生日って素晴らしい日だと思う。

ケーキを受け取り崩したりしないように真っ直ぐ家に帰っている最中LINEが届いた。
今日が誕生日の彼からだ。

『今日は定時で上がれそうです。良い子で待っていてくださいね』

彼のメッセージに自然と笑みが溢れる。
誕生日に残業なんて嫌だもんね。
本当は0時を迎えた瞬間に彼におめでとうを言いたかったのだけれど。
起きてからも彼は自分の誕生日の話題を振ってきたりしなかったのだけれどもしかして忘れているのだろうか?
分かっている上で私がおめでとうと言わなかったから何も言えなかっただけかもしれない。
もしそうなのだとしたらその分彼を沢山甘やかしてあげなければという思いを胸に帰路についた。




「ただいま帰りました」

「おかえりテツヤ〜!」

彼が帰ってくる前にしっかりとおしゃれをして、メイクをした。
人から見れば自惚れていると思われるだろうけど、彼は本当に私の事が好きだから。
だから多分私が着飾ることは彼にとっては嬉しいことの筈だから。
実際彼は私を見るなり即スマホのカメラを起動して私の写真を撮り始めたから多分大丈夫。

「今日はいつも以上にお綺麗で...仕事の疲れが一気に吹き飛びました...」

彼はうっとりとした表情でスマホをスーツのポケットにしまい私を抱きしめた。
そろそろ頃合いだろう。

「今日はね、テツヤの誕生日だから...内緒で色々準備してたの。だから...言うのが遅くなってごめんね。テツヤ君、誕生日おめでとう!」

気持ちをたっぷりと込めて、愛情が伝わるよう優しく声色で。
彼は嬉しそうに目を細めて私の顔をじっと見てキスをした。

「ありがとうございます。...本当に嬉しいです。...全部知ってましたけど」

「...え?」

彼の予想外の言葉に目をぱちぱちとまばたきを繰り返した。
彼はそんな私を見てくすりと笑って再びスマホを取り出した。

「最近貴方は頻繁にスマホを触っていましたし、貴方の位置情報は常に僕に共有されています。
防犯用に自宅に設置した見守りカメラで名前さんの様子も頻繁に確認していますから」

筒抜けです、と言って彼は得意げな顔をした。
そうだった、結婚してからはだいぶ落ち着いていたけれど彼はそういう人だった。
好かれているというかストーカーされてたんだった。

「...私変なことしてたりしてない?」

「変なことって...僕の服を抱き締めて匂いを嗅いで1人で「あああああ!!!やめて!言わなくていいから!!!」

よりによってそんな場面を見られていただなんて。
恥ずかしくて死にたくなった。
彼の事だ、多分、いや、確実にその痴態は録画されてしまっているに違いない。

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいんですよ。僕も貴方が眠ってしまった後欲情した時はよく貴方の履いていた下着を洗濯カゴから拝借して使わせていただいてますし」

「テツヤは少しは恥ずかしがろうね!?」

また知らなくてもよかった事実を知ってしまった。
洗濯は毎日したほうがいいかもしれない。
でも2人しかいないのにそれも勿体無い気もするし...いいや、今はもう考えないようにしよう。
今日は彼の誕生日なのだし。

「...取り敢えずご飯食べよう!今夜はテツヤの好きなものばかりにしたしケーキも買ってあるからね!」

「名前さんの切り替えの早いところも好きです。ありがとうございます、僕の為に沢山悩んだくれて」

その言葉を聞いてメニューがなかなか決まらないと唸っていたところも見られていたのだなと察してまた恥ずかしくなってしまった。
でももういい、アレを見られたことに比べれば全然平気だ。
アレにしたって保存されていたとしても彼は人一倍独占欲が強いから人に見せる心配なんてまず無いしもう忘れよう。
2度としないようにして。

「フォトアルバムも作ったから見てね」

「はい、嬉しいです。また宝物が増えました。部屋に飾っていつでも見られるようにしますね」

彼のスマホのストレージは512GBなのだけれど既に私の写真と動画でいっぱいらしい。
私より彼の方がずっと写真を撮るのが上手いから今更、なんて思わなくはないけれど。
それでも彼が喜んでくれるのを知っていたから。
...多分私ほど夫に愛されている人はそういないと思うから。
その愛し方はちょっと独特だけど。

「今日はお風呂で私がテツヤの髪も身体も洗ってあげる。その後寝るまで膝枕もしてあげるし寝る前にマッサージもしてあげるからね」

「凄く嬉しいです。本当に最高の誕生日です。でも名前さんの髪と身体は僕に洗わせてくださいね?マッサージも僕にもさせてくださいね?」

それだと普段と変わらない気がするのだけれど...でも他でもない、今日が誕生日の彼が言っているのだから全部受け入れよう。

「じゃあ洗いっこしようね」

「洗いっこ...なんだか興奮する響きですね...!」

うっとりとした顔で私を見つめる彼の視界を遮って彼の手を引いた。
このままではご飯を食べる前にベッドに直行することになりそうだから。
まぁそれも別にいいんだけど、でも折角だから出来立てのものを食べてもらいたいし。

「来年も再来年もずっとテツヤの誕生日祝わせてね」

貴方は私の大好きな人だから。


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