とても嬉しいご報告があります

「うーん、なんていうか、さすがテツヤって感じ...」

彼が仕事に向かった後、私は一人トイレでそう呟いた。
二本の赤いラインが浮き出た、妊娠検査薬を手に持って。

「...取り敢えず来週病院に行って...確定してからの報告でもいいかな?...いやでも病院に行った時点で分かるか、位置は把握されてるわけだし」

ぬか喜びになっても嫌だから確実になってから話したいと思っていたのだけれど我が家では内緒で行動するなんて事は無理に等しい。
取り敢えず今夜彼が帰ってきてから話をしようと決めた。

「...こういうのって、ドラマなんかだとパートナーに見せたりするものだけど...」

検査薬を見ながらこれをどうしようかと悩んだ。
ある意味記念すべきものなのかもしれないけれど自分の排泄したものをかけたもの...

「...テツヤに見せて処分、でいいかな...」

取り敢えず私はそれをビニール袋に入れた。
トイレから出て手を洗い、朝食を食べる際に使った食器類を洗い洗濯機のスイッチを押した。
部屋を軽く除塵して掃除機をかけ、洗い終わった洗濯を干した後ソファーに座ってテレビを付けた。

「...本当にいるの?」

当たり前だけどまだ自覚症状なんてない、お腹が膨らんでいるわけでもない。
確かまだ大きさも一センチも無いはずだ。

「あ、テツヤからだ」

そんなことを考えていたタイミングで彼からのLINEが届いた。

『今日のお弁当も凄く美味しいです。名前さんもしっかりお昼ご飯を食べてくださいね』

それを読んでもうお昼になっていた事に気が付いた。
お昼は自分だけだからいつも適当に済ませているのだけれど...なんとなく身体を労わりたい、なんて。
単純かもしれないけれど。

とは言っても今から凝ったものを作るのはめんどくさい。
冷蔵庫を開けて適当な野菜と豚肉、冷凍の里芋とお味噌を取り出した。
野菜をたっぷり入れた豚汁、そのくらいなら。
まぁそれとご飯だけ、だから手抜きには変わらないのだけれど多分卵かけご飯とかに比べたらマシだと思う。
納豆あたりも食べておこう。

『ありがとう。テツヤも午後からもお仕事頑張ってね』

『はい、また帰る時に連絡します』

取り敢えず私もご飯を食べよう。








「ただいま帰りました!」

「おかえりなさい、今日も一日ご苦労様でした!」

いつもと同じように私を抱きしめた彼の背中をさする。
取り敢えずご飯を食べながら話せばいいかな?と判断して彼に着替えておいでと言って背中を押した。
彼は素直に部屋着に着替えに向かった。
私は先にテーブルについて彼が来るのを待った。



「お待たせしました!今日も晩御飯を用意していただきありがとうございます」

「いえいえ、このご飯が食べられるのもテツヤのおかげだからね」

こちらこそありがとうと言って二人でいただきますを言って食事に箸を付けた。
お味噌汁を一口飲んで、まぁこれはお昼に多めに作っておいた豚汁なのだけど。
うん、お昼と変わらず美味しいからまぁ良し。
彼も美味しいと言って飲んでくれたし。
取り敢えず話をしようと思い彼に視線を向けると彼はすぐに気が付いてどうかしましたか?と訊ねてくれた。

「あのね、テツヤ」

「はい、どうしました?」

どんなリアクションが帰ってくるのだろうか。
少しどきどきする。
でも言わないなんて選択肢ももう無いから。
小さく一度深呼吸をして口を開いた。

「赤ちゃん、出来たみたい...」

私がそう言った瞬間彼の目が大きく開かれ、そのままこちらを見たまま何も話さず数秒間フリーズしてしまった。

「そ、それは...つまり...僕と、名前、さん...の?」

「うん、勿論。二人の愛の結晶だよ」

「...愛の、結晶...!」

彼は言葉を反復しながら両手で口を覆った。
彼の手から箸が落ちコロコロと床に転がった。
それを拾ってキッチンに洗いに行って、そのついでに検査薬を取りに行った。

「ほら、これ。...赤いラインが表示された時びっくりしたけどちょっと感動しちゃった...」

袋に入ったそれを彼に差し出すと彼は恐る恐るそれを受け取り涙を流した。

「嬉しい...嬉しいです...!...でも...でも...」

「でも?」

「どうして、名前さんの中に僕じゃない存在が...?」

「...避妊せずにテツヤが中に出したからだよ...ていうかこんなのもうテツヤが入ってるのと変わんないでしょ...」

なんというか感動もぶち壊してしまいそうな会話だ。
でもやっぱり彼は変わらないみたい。
私のことが好きすぎる。
でもまぁ...

「ありがとう、ございます...!本当、に...!ありがとうございます...っ!」

そんなことを言いながらも彼の表情はとても柔らかくて、それが心から喜んでくれているのだと私に伝えてくれているから。

「良いパパとママになれるように二人で頑張ろうね」

私達のところに来てくれてありがとう。
そう心の中で呟いて自身のお腹を撫でた。


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