隠しきれない独占欲

彼が中学時代のチームメイトの話をしている時は本当に楽しそうで。
勿論なんの話をしていたって明るく元気いっぱいなのだけれどそれ以上に。
とくに黒子君の話をする時は...というか黒子君の話が一番多いかもしれない。
でもそんな黒子君は彼に素っ気ないらしい。
昔よりは優しくなったと教えてくれたけれど。
そんなの、私はいつも彼に甘いく素っ気なくなんてないのに。
少し面白くなくて楽しそうに話をする彼の言葉を遮るように彼に抱き付いた。

「名前ちゃん?」

「...黒子君、より私の方が涼太君のこと好きだもん」

幼稚な台詞。
もっと気の利いた口説き文句が使えたらいいのに。
これじゃあ子供が駄々を捏ねているのと同じだ。

「黒子っちにヤキモチ妬いちゃった?」

でも彼はそんな私を揶揄うことなく優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
...ちょっと子供を宥めている感は拭えないのだけど、それでも私は喜んでしまうから悔しい。

「黒子っちと名前ちゃんに向ける好きは全然違うから心配しなくていいっスよ」

そんなのわかってる、わかった上で拗ねているのだ。
私は独占欲が人一倍強いのだと思う。
でも付き合う前彼の好みの女の子は束縛しない子だって聞いたから、それを表立って言うわけにもいかない。
多分浮気されたって言えない、彼が私を本命だと思ってくれているうちは別れたくないから。
そのくらい彼に執着している自覚がある。

「名前ちゃんが何考えてるかバレバレっスよ」

彼はクスリと笑って私の額にキスをした。
違う、するならこっちがいいと唇にキスをしようとしたけれど身長差がありすぎて触れたのは彼の顎だった。

「分かってるっスよ、名前ちゃんが欲しいのはこっちだよね?」

彼はその後すぐに唇にキスをしてくれた。
分かっているなら最初からしてくれたらいいのに。
彼は時々意地悪だ。
私の反応を見て面白がっている。

「涼太君...」

縋るように彼の服の胸元を掴んで引き寄せて、今度こそ私から彼の唇にキスをした。
数秒感、ゆっくりと。
彼の唇を十分に満喫して離れようとした、唇が少し離れたその瞬間、彼に手が頭の後ろに触れた。
支えるように、逃がさないように。
言葉も交わさない、ただただ触れ合う唇が甘い言葉を囁いているような、そんな感覚。
彼はどうしてこんなにキスが上手いんだろうか、それについては考えないように、考えてはいけないことだと分かっている。
きっと、いや、確実に彼にとっての初めてのキスの相手は私ではないから。
口内に入り込んできた彼の舌を絡め取って舐めれば私の頭を支える彼の手に少し力が込められた。
もう片方の手は私の腰をがっちりと抱いて。

「...名前ちゃん...今日は積極的っスね...」

彼はその端正な顔で柔らかな笑みを浮かべた。
この笑顔で一体どれだけの女の子が恋に落ちたのだろう。
尤も、私もその一人なのだけれど。
別に顔だけで好きになったわけではないけれど、それでも彼の顔が全く好みじゃない、なんてことはない。
きっとその外見にだって惹かれているのだと思う。

「もっと、って...顔してるっスね」

「...知ってる...」

でも彼はそんな私を許してくれているから、だからそれに甘える。
私だけ愛して、なんて言えないけれど。
でも心の中で望むことくらいは許してほしい。

「そんな顔されたらもう俺やめてあげられないけど...」

もっともっとって、私はいつだって彼を望んでる。

「ヤキモチ妬きな名前ちゃんの為に、黒子っちとはしないようなこと、しようかなって思ってるんスけど...いい?」

私が断る筈ないのに、それをわざわざ聞くのは言わせたいってことなんだろうなって分かってる。

「...したい...して欲しい...」

だって、彼は凄く楽しそうな顔で笑っているから。

「好きだよ、名前ちゃん...」

絶対に私の方が好きだけどね。


end