「今日は...お仕置きだよ」
そう言った彼女の声は甘く、ても低くて背筋をツーっと指で撫でられるみたいな、そんな錯覚を感じた。
ベッドの上、制服のまま彼女に押し倒された。
「さつき、ちゃ...ん...ま、って...」
「ダメ、待たないよ」
そのまま唇を塞がれ言葉も呼吸も奪われてしまう。
焦らされることもなく、制服のボタンもスカートのフックも外されて、下着もずらされて彼女の熱を帯びた手が私の身体を這いずりまわった。
その手に全く躊躇いがない、私を求めるような、そんな触れ方に私の身体もどんどん熱を帯びていく。
「名前ちゃんが、他の人に微笑んでたから...私だけがいいって言ったのに」
「...ち、ちが、うの...さつきちゃ、あっ...!」
「分かってる、分かってるよ、名前ちゃんが私の事が大好きだってこと。でも私の中の嫌だって気持ちが抑えきれないの」
そう囁く声は震えていて、彼女が壊れてしまうんじゃないかって、そんな気持ちになった。
「だから...体で教えて?ちゃんと、私のことだけ好きだって」
一番熱いところに触れられて恥ずかしくなって彼女から目を逸らそうとしたけれど顎を掴まれて引き戻された。
再び混じり合ったその瞳は、熱と涙で、怖いくらい美しかった。
彼女は何度も何度も私の名前を呼んだ。
「名前ちゃん、名前ちゃん、名前ちゃん...!」
甘えているような、責めるような声で、彼女は私を呼び続けた。
「...さつき、ちゃ...ん、も、う...むり......っ!」
「ダメ、まだ足りない。まだ私のこと全然足りないって顔してる」
与えられる甘美な刺激にあっさりと達してしまった。
でも彼女の愛撫が止まることはない。
彼女の唇が私の耳に触れて直接熱を注ぎ込むように甘い言葉が贈られる。
「愛してる、世界で一番。何も考えられなくなるまで、全部私でいっぱいにして?」
世界が反転するみたいに、彼女の愛が私を覆って私を侵していく。
何度目かの絶頂の先、私はもう何も考えられなくなって、そしてそのまま意識を手放した。
次に気がついた時、彼女は私の頬を撫でていた。
「...いっぱい泣かせちゃった。ごめんね?」
その表情はあまりにも甘くて、泣きたくなるくらい優しくて。
私の中に嫌な考えが蘇った。
「...なんで、こんな風になっちゃったんだろうね」
ぽつりと呟くと私の頬を撫でていた彼女の手がぴたりと止まった。
「え?」
こんなこと言っちゃ駄目だって分かってるのに、止まれない。
嫌な感情が抑えられない。
「...だって、さつきちゃん...少し前まで、黒子君のこと、好きだったよね?」
そう、知っていた、私が一番。
彼女の優しさも、視線も、熱情もかつては私じゃない別の人に向けられていたってことを。
でもそれがいつの間にかこんなにも激しく、狂おしいほどに私に向けられるようになって。
「......うん、そうだったよ」
胸がちくりと痛んだ。
彼女はそれを否定しなかったから。
残酷な、変えようがない事実に胸が痛い。
「でも、気付いちゃったの。私、テツ君よりも名前ちゃんを好きな自分でいる方がずっと幸せなんだってことに」
その言葉が、鋭利な刃物となって私の胸に突き刺さる。
「...壊したくなるくらい誰かを欲しくなるなんて思わなかった。名前ちゃんとこうしていると、全部、自分のものって思えて安心するから」
微笑んでいてもやっぱり彼女は少し怖くて。
「だから名前ちゃん、私から逃げないでね?」
「..うん」
そう答える以外の選択肢は無かった。
だって今の私は、もう彼女なしじゃ、生きられないくらいに愛されて、壊されてしまっていたから。
私の胸に突き刺さったそれが私を苦しめる。
好きが壊れていく音がした。
でもその崩壊しかけた世界から外に出たいとは思えなくて。
それはたまらなく甘く幸福に満ちていたから。
だから私はきっとこれからもまた同じように彼女のお仕置きを受け入れてしまうのだと思う。
たとえ私が代用品でしかなかったのだとしても。
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