「私の愛が本物だって...名前ちゃんに、わかってもらえるように用意したの...」
彼女はそう言って私の手をとった。
「物で解決出来ることじゃないって分かってる。でも私は...こういうものを名前ちゃんに贈りたくて...」
暗がりの中、カーテン越しの街灯の明かりが彼女の瞳を怪しく光っている。
そんな怖いくらい綺麗な目がまっすぐ私を見つめているものだから、私は逃げだすことなんて出来なくて。
「...指輪?」
「そう、なんの捻りもないけど。私達が特別だっていう、ふたりのしるし」
そう言って彼女は私の薬指に指輪をはめた。
シンプルな、小さな濃いピンク色の石が埋められた指輪。
「一緒にいない時も名前ちゃんがこの指輪を見る度に私のことを思い出してもらえるように...私もお揃いの指輪を買ったの」
彼女はそう言って私にもう一つの指輪を手渡した。
彼女の意図を受け取って先程彼女がしてくれたのと同じように手を取り、彼女の綺麗な薬指に指輪をはめた。
まるで何かの儀式みたい
「...ありがとう、さつきちゃん」
「どういたしまして。...でもね、本当はアクセサリーなんかじゃ全然...私はもっと...名前ちゃんの心の奥に爪痕を残したいの」
そう言って彼女の指先が私の胸をなぞった。
「名前ちゃんが私の愛を疑ったら...信じられなくなったら、もう壊してでもわからせるしかないって...そう思うの...」
「...こわいよ...さつき、ちゃん...」
彼女の放った言葉に恐怖心を抱き小さく呟いた。
さつきちゃんはそんな私を見てくすりと笑った。
「私も自分が怖い。でも...これが本当の私の気持ち。それくらい名前ちゃんが特別で、絶対に離れたくなんてないの。」
彼女の愛は冷たくて熱い。
その冷たい炎に焼き尽くされるみたいに抱かれた。
キスが深過ぎて苦しい、触れる手は恐ろしいほど優しくて、でも、狂おしいほど激しかった。
「私以外、いらないよね?」
「...うん」
「私には名前ちゃんだけなんだって、ちゃんと伝わってる?名前ちゃんが不安になる度に何度だって教えてあげる。私が名前ちゃんを大好きなことを」
皮膚の奥にまで沁み込んだ。
私の心に静かに穏やかに落ちていく。
すごく、眠い。
「寝てもいいよ、おやすみ、名前ちゃん」
今日も彼女の柔らかな腕に、胸に抱かれて夜が更けていく。
朝目を覚ますと胸元に沢山の赤い花が咲いていた。
そしてがっちりと、けして離れないと言わんばかりに強く握られた手。
長いまつ毛、白くきめ細やかな肌、健康的な赤みを帯びた頬、ぷっくりとした唇、さらさらの髪。
眠る彼女は本当に天使のようだった。
(性別だけの話じゃない。多分、私たちは...普通の恋人同士とは少し違うんだと思う)
支配と依存、執着と渇望。
形容しがたい感情が混ざり合って、それでもそれは確かに愛になっている。
「...さつきちゃん」
そっと彼女の髪を撫でて、小さく呟く。
「私、きっともう逃げられないね。でもそれでもいいって思ってるの。...最初っから」
貴方に初めて愛されたあの日から。
狂おしいほどに愛されて、痛いくらいに誰かを想
える今の私は。
この世界がこんなにも温かいのだということを私は初めて知ったから。
たとえそれが少し歪んでいても、私たちは確かに想い合っている。
この愛は確かに本物だった。
そう思っている限り、私は彼女に望んで永遠に囚われて生きていく。
それが...それがさつきちゃんと私の幸せのかたちだから。
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