お邪魔虫退治

「え〜っ!?名前ちゃん、それマジっスか!?うっわ〜、そりゃびっくりっスね〜!」

名前と明るい声で身を乗り出しながらしゃべっているのは黄瀬だった。
名前は照れたように「うん...ちょっと恥ずかしいけどね」と笑いながら答えていた。
その隣には静かに頷いているテツがいた。

「それは少し大変でしたね。でも頑張られたと思いますよ」

「ふふっ...ありがとう、黒子君」

一体何の話をしているのかは分からないけれど和やかな空気だった。

「.........」

でもそれを少し離れた場所から見ていた俺のこめかみがぴくりと痙攣した。

「(...なんだよ、あの距離感)」

「(つーかなんで黄瀬がそんなに楽しそうにしてんだよ。名前ちゃんって、あいつそんなに名前と仲良くなんてなかっただろ)」

「(...てか名前も楽しそうじゃねぇか)」

それにイラついてずかずかと近づいてきて___

ばしっ!

俺は黄瀬の頭を軽く叩いた。

こいつもどうせ俺と同じくらい馬鹿だから別に問題ねぇだろ。

「いったっ!?な、なにすんスか!?青峰っち!!」

当然黄瀬が文句を言ってきたけど今の俺はムカついてるからどうでもいい。

「うるせー。お前喋りすぎなんだよ」

キャンキャン吠える黄瀬を押し退けて守るように、いや、俺のもんだとアピールするように名前に近付いて肩を抱き寄せた。

「えぇぇっ!?名前ちゃんが可愛い話してくれたから楽しく話してただけなのに〜っ」

「知らねぇよばーか」

こいつは喋んなくても可愛いだろうが、まぁそれを黄瀬が知っててもそれはそれでムカつくけどな。
そんなことを考えながら黄瀬を睨むと俺に肩を掴まれている名前が不安げな顔で俺は顔を見上げた。

「あ、青峰君...?」

「...うるせぇ」

可愛い、すげぇ可愛いけど今はちょっとこいつにも苛ついてる。
あまりにも自覚が無さすぎる。
あまりにも無防備だ。

「お前は俺だけ見てればいいんだよ」

黄瀬なんかと話してる暇あんなら俺の側にいればいいだろう、そんなことを考えれば肩を掴む手にも力が入ってしまう。

「〜っ!!!」

俺の言葉にまた顔が赤くなった。
いくらなんでもこいつも発熱しすぎだろ。
まぁそこが可愛いんだけど、でもそれは俺だけが知ってればいい、こいつらに見せたくない。

「(つーか俺、さっきから可愛いしか言ってねぇ...)」

「ふっ...なっ、なんスか、それっ...あ、青峰っちカッコつけすぎっ...ぶふっ...!」

そんな俺を見ていた黄瀬が完全に面白いものを見たと言わんばかりの表情で必死に笑いを堪えながら肩を振るわせた。
我慢すんならちゃんとやれよ。

___ドゴッ!

自然と俺の足が動いて黄瀬の尻に蹴りを入れていた。
黄瀬は大袈裟な声をあげ不満を訴えた。

「ぐはぁっ!?!?ちょ、蹴った!?今思いっきり蹴ったっスよね!?今の絶対じゃれあいとかのレベルじゃなかったっスよね!?」

「うるせぇっつっただろ、黙ってろ」

テツくらいとまでいかなくても余計なことを言わなけりゃ俺だって蹴りを入れたりしてねぇんだよ。
こいつって良くも悪くも空気を読まねぇとこがあるからな。

同じ男の俺からしたらこいつがあんだけ女にモテる理由がわからねぇよ。

「理不尽すぎるっスーーーっ!!」

相変わらず黄瀬はオーバーリアクションでテツに泣きついた。
テツは呆れた様子でため息について一言。

「...君は本当に、学ばない人ですね」

「(...ほんとテツってこういう時容赦ねぇよな)」

まぁ別に同情したりはしねぇけど、テツのトドメの一言に黄瀬は更に騒がしくなった。

「黒子っちまで!?冷たいっス!?俺の味方いないんスか!?ねぇ!!?」

黄瀬に抱きつかれたテツは嫌そうな顔を隠そうともせず容赦なく黄瀬の顔を押し退けた。

「あ、青峰君やりすぎだよ!黄瀬君大丈夫?」

ただ1人黄瀬を心配したのは名前だった。
黄瀬に手を差し伸べようとした名前の身体ももう一度、今度はよりしっかりと抱き寄せた。

「心配すんな。こいつはこれくらいじゃ死なねぇから」

「し、死ななくてもだめだよ!」

やっぱり真面目な名前はこんな反応だ。
でも俺を咎めながらも俺に抱きしめられた名前はやっぱり恥ずかしそうに頬を染めている。
ほんと可愛い、そう思って名前の顔を見ているとまたニヤついている黄瀬が視界の隅に入ってきた。

「おい、それ以上笑ったら今度はプールに突き落とすぞ」

「えええっ!!??もうやだこの人!!暴力しかないっス!!!」

そう叫びながら黄瀬は俺の前から逃げ出した。

俺はそんな黄瀬を気にかけることもなく黄瀬を心配している様子を見せる名前の頭に顎を乗せ、よしよしと撫でていた。

「......結局一番子供なのは青峰君かもしれませんね」

テツはそう呟いて「それでは僕も失礼します」とその場を後にした。
俺がガキだってことなんて俺が1番分かってるよ。
でもそれでこいつを独り占め出来んなら別にいい。

「...青峰君、ほんとは黄瀬君のこと大好きなのに。あんまり意地悪しちゃ駄目だよ...」

「俺が大好きなのはお前だけだよ」

この流れってこのままキスしてもいいやつだよな?


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