「おじゃまします」
「んなきっちりしなくていいよ。今、家に誰もいねぇから」
玄関の扉を開く前からそう言って頭を下げた名前にそう言って出来るだけ優しく背中を押した。
まぁ正直上手く力を調整出来ていたかはちょっと自信がねぇけど。
それは言うまでもない、既に俺に余裕なんてなかったからだ。
バタン、と玄関が閉まるのとほぼ同時に___
「っ、わ...っ!?」
肩を掴んで強引にこちらを向かせて抱きしめた。
「...なあ...今2人きりだけど...もうキスしていい?」
いつもならこんな条件下ならわざわざ聞いたりしねぇけど、一応、な。
「えっ、ちょ、ちょっと待って!さ、さっき、たこ焼き食べたばっかりだからっ!?わ、私まだ歯磨きしてないし...っ!」
俺の言葉に名前は途端に焦りだした。
俺のキスを防ぐために慌てて両手で自分の口をガードして、必死な形相で。
「...んなの俺も食ったから別にいいだろ」
「で、でも……っ!」
俺がここでじゃあ2人で一緒に歯磨きしようって言ったらどうするんだろうな、こいつ。
そうなったらもう完全に逃げ場無くなるだろ。
まぁそんな余裕ねぇから言わねぇけど。
「...いーから」
名前の手を振り解くくらいなんてことはない。
手首を掴み引き下げさせると口元が露わになった。
そして当然頬はまた赤く染まっている。
「だめ、って言っても...」
「無理」
本気で言ってるわけじゃないってもう分かっている、だって手首を掴んで顔から剥がした時、まるで抵抗しなかったから。
だからそのまま唇を塞いだ。
優しく触れるだけの最初のキス。
でも___
「......っん」
そんなので満足出来る筈がない。
吸い寄せるようにもう一度唇を重ねた瞬間、名前の膝ががくんと力が抜けた。
「や、だ...っ、これ、また......っ」
「ほらな...」
“また”はこっちの台詞だっての。
こんなにあっさり、身体に力が入らなくなって俺に身体を預けるようにくっついて。
俺からすればもっとして、と誘われているようにしか思えない。
「(こいつのこういうとこ“小悪魔”って感じがすんだよな、時々...)」
倒れないようしっかりの腕の中に閉じ込めて、ふにゃふにゃになって目をとろんとさせて。
「(......ほんと、毎回これだ...)」
名前1人くらい抱えるのはなんてことはない。
でもその体格差にまた罪悪感を覚えてしまう。
同い年だっていうのに___
「(...キスしただけで、こんな顔して...震えてんのにもっとしてくれってねだっているみたいに...)」
背中に回した手を名前の首筋に這わせればまたびくりと身体が跳ねた。
「(やっぱり敏感すぎんだよ、こいつ...)」
名前は俺にとって初めて付き合った女。
だから他の女がどうとか比較は出来ねぇけど。
でもAVとかエロいシーンがある映画とか、ああいうのは演技だってことくらい俺でも知ってる。
逆に考えたら演技出来るくらい余裕がある奴もいるってことだ。
まぁその道のプロと比べるのも違う気がするけど___
「,,.あーもう、理性がもたねぇ......」
ため息混じりに出た言葉。
額をこつんと名前の額に当てて名前のとろんとした目を見つめた。
「......こんな反応されて我慢しろってのが無理だろ」
全部お前のせいだって、そう言って再び唇を塞いだ。
「...だ、だって!...い、いつもっ、きゅ、急にするからっ...!び、びっくりしちゃって...」
ぎゅうって俺のシャツを握って抱き付いて、騒がしい鼓動の音まで伝わってきた。
まぁもしかしたら俺のかもしれないけど。
「じゃあ今度からもっと前もって予告してからすればいい?」
「......それは、それで、...無理かも...」
「...だろ?」
まぁそもそも俺がそんな律儀なこと出来る筈ねぇけど。
でも予告したらこいつ、多分ずっとソワソワしてるんだろうな。
それはちょっと見たいかもしれねぇ。
ま、そんなの見たらそっこー我慢出来なくなって襲っちまうだろうけど。
想像したら笑っちまった。
「......なんか、私のこと馬鹿にしてない?」
名前は不満げな顔をして俺を見つめた。
違う違う、と否定してもう一度キスをして___
「お前が可愛すぎるからつい笑っちまうんだよ」
なぁ、ここがまだ玄関だって、気付いてるか?
俺は夢中になって忘れてたよ。
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