「信じていただけるとは思いません。
ですがこれが私が話せる私の身に起こったことの全てです」
鮫島校長に連れられて学園内の校長室に移動した私は生前の話をした。
この世界の一部が書物になっていることをふんわりと話した。
細かな事は言ってはいけないことであることは何となく理解している。
私の住んでいた世界とは違うであろうことを伝えた。
私の世界との違いも含め。
「私達の世界、ましてやこの国でデュエルキングを知らない者はいない。
おそらく君の考え通り君はどこか違う次元から来た旅人なのだろう」
鮫島校長はあっけない程すんなりと私の話を信じてくれた。
カードの精霊やファラオの魂が存在した世界だ。
おそらくオカルト的な現象は私の世界よりもより身近なものであったことが原因なのでは?と考えることにした。
「君はこれからどうするかね?」
「わかりません。そもそも私は今どうなっているのかわからないのです。
あの時私は確実に死んだのだと思いました。
しかし今私は生きています。
でもやはり決定的におかしいことが一つあります」
窓ガラスに映った自分を見てその異変に気がついた。
「私は生前28でした」
その言葉に鮫島校長は改めて驚いた。
そう、私はおそらく20歳程度の頃の外見に若返っていたのだ。
「どうしたものでしょうか?」
困ったように相談とも取れない言葉を口にすれば鮫島校長は腕を組んで目を閉じ考える仕草を見せた。
そして妙案が思いついたと言わんばかりの表情でこちらを見てその言葉を口にした。
「君もこの学園でデュエルを学んでみてはどうかね?」
鮫島校長の表情を見れば本気の提案であることが分かる。
それでも正直な所その提案には抵抗があった。
この世界に係わる事で何か世界の本筋が変わってしまう事があるのではないかという不安からだ。
それをやんわりと伝えるも鮫島校長はデュエルの素晴らしさを是非とも身をもって実感してほしいと教育者らしい目をして訴えた。
「あの、どんな雑務でもやります。
ですから生徒としてではなくここで働かせてもらえないでしょうか?」
学生として生活することは拒んだがこの島を出て私がまともに暮らしていける保証などないことは知っている。
だからこそそう要求する私は実に狡い大人なのだろう。
鮫島校長は私のお願いにふむ、とまた考え始めた。
そして再び私に提案した。
「では採用試験を行いましょう。
勿論試験内容はデュエルです。
貴方が勝利したあかつきには学園内で働いていただきます。
しかし敗北してしまった場合、その時はこの学園でデュエルについて学んでいただくというのは如何ですかな?」
鮫島校長は試験の結果がどちらに転ぼうと私を保護してくれる事を約束してくれたのだ。
こんな正体不明の私なのに。
そんな気遣いをくれる鮫島校長はやはりとても優しい人なのだろう