ああ、あれは天上院明日香ちゃん。
どうして気が付いてしまったんだろうか。
よりにもよってすぐ隣には十代達がいる。
それでも、この場合は仕方がないだろう。
一つ深呼吸をして彼女に近付く。
「天上院さん、先生が貴女にお話があるらしいの。
少し来ていただけるかしら?」
そう声をかけた私に疑問符を浮かべながらも、はい、分かりましたと素直に返事をして私の後に続いた。
すぐ近くで私を見つめる彼の視線には気がつかない振りをして。
彼女を連れて保健室のドアを開けた。
「保健室?鮎川先生に呼ばれたのでしょうか?」
「いいえ、違うの。ごめんなさい、これは私の勝手な判断なのよ」
私のその返事に彼女はもしかして、と困ったような表情を見せた。
「顔色がすごく悪く見えたの。
それでも貴女はいつも通り振る舞っているように思えて」
だからこそ心配だった、と言葉を続ければ彼女は力が抜けたようにベッドに座りこんだ。
「違うんです、その、ただの生理痛なんですが今回は少し重くて」
貧血気味でした。
だからありがとうございます、そう言って彼女は笑った。
大人びた彼女のほんのすこし幼さを感じる彼女の笑顔に少しだけ安堵してしまった。
「ここは気候が良いとは言えその制服では冷えるから」
そう言って彼女の肩に私のロングカーディガンを掛けてあげると少し照れた様子で再びありがとうございますと言葉を述べた。
「貧血にはこれね」
ミルクたっぷりの暖かいココアを差し出すと彼女は両手でそれを受け取りゆっくりとそれを口にした。
「普段は紅茶ばかりなので、なんだか凄く懐かしく思います」
紅茶派だという彼女にイメージ通りだなと思う。
「鮎川先生には伝えておくから無理せず休んでいってね」
「····はい」
空になったカップを彼女の手から取り上げると少し思案する顔を見せたが私の言葉を受け入れベッドに横になった。
「お大事にね」
「あの、ありがとう、ございました」
「いいえ、どういたしまして」
こんな状況でもきちんとお礼を口にする彼女はやはり育ちの良い子なのだろうなと思った。
弱味を見せない貴方を尊敬します
それでも貴方が休息をとることを誰も責めはしないと思います
どうかこんなときくらいは無理をなさらずに