「あ、なた、どうしてここに」
「何故かしらね、貴方と話をしてみたい、そう思ったのよ」
あの苦しいデュエルの後自室に帰り何をするでもなくぼーっと座っていた時窓をノックする音が聞こえた。
カーテンを開けたその先にいたのは先程クロノス先生を人形にしたカミューラだった。
そのカミューラは私と話をしたくなったと部屋を訪ねてきたのだ。
「私、と?」
「ええ、どうして?貴方は、いけない、邪魔者が来るわ」
何か彼女か私に訊ねようとしたその時、彼女の傍に1羽のコウモリが現れた。
辺りを見張っていたのだろうか、すぐ傍に人が来ていることを彼女に伝えた。
「あ、あの」
「さようなら、またすぐに会うことになるけれど」
結局の所何も話は出来なかった。
彼女が何を言おうとしたのかわからない。
それでも彼女を引き留めなければ、そんな風に思って言葉を紡ごうとするも彼女はするりと窓の外に出てやがて闇と同化した。
(いったいなんだったのだろうか)
私の心境は複雑だった。
彼女の孤独も哀しみもしっていたのだから。
同情もした。
しかしクロノス先生の事も諦めきれない。
彼女は幻魔の扉に封印される。
それはどうにもならない事なのだろうか。
そこまで考えて頭を振る。
(全ての人を救いたいとでもいうのか?
私は偉大な主人公ではないのだ)
コンコン
自室のドアをノックする音が聞こえた。
ドアを開けた先にいたのは翔君と十代君、明日香ちゃんだった。
驚きつつも部屋に3人を通し暖かい紅茶を入れた。
一番はじめに口を開いたのは翔君だった。
「僕は、僕はお兄さんにこんな恐ろしいデュエルに参加してほしくないんです!名前さんからもお兄さんをとめてください!」
彼の気持ちは痛い程わかる。
ましてやその対象は家族だ。
その辛さを理解しきることなど私には不可能であろう。
「翔、大丈夫だ。カイザーは絶対に負けない」
違うんだよ十代君。
彼は丸藤君が負ける姿など想像しているわけでない。
それでも自らなんの保証もない危険な場所に飛び込もうとする兄を黙って見守っていられる程翔君は強くはないのよ。
それをどう言葉にすればいいか分からず上手く話せない私を不安そうに見つめる明日香ちゃんの視線にも気がついていた。
私は、私に何ができるのだろうか。
「···私が」
「なにかあったとしても、私が彼を守ると約束、します」
その言葉に十代君が驚きの表情を見せた。
明日香ちゃんと翔君の表情はさらに不安の色を見せた。
「それって」
「そろそろ時間だから、皆寮に帰りなさい」
何か言おうとした十代君の言葉を敢えて遮り3人に帰宅するように促した。
「皆疲れていると思うわ。だから今日はゆっくり休んで?」
何か言いたげな彼らの意思など見えない振りをして彼らを追い出した。
「おやすみなさい、気を付けて、ね」
彼に何かを言われてしまったら私の決心が崩れてしまうことが恐ろしかったのだ。
だって私はとても勇気のない人間だから。
窓から、帰っていく3人の後ろ姿を見た。
その視線に気付いたのかは定かではないが十代君が振り返った。
私にその彼と視線を交わす勇気がある筈もなく急いでカーテンを閉め彼を視界から消した。
どうか
どうか少し欲を出すことをお許しください