23:私には何もわからない

私は元いた学園に帰ってきたていた。
カミューラが帰してくれたのだろうか。
彼女が消えてしまった今、それを確かめる術はない。
結局のところ私がいようがいまいが彼女は扉の向こうに封印されてしまったようだ。

目の前の十代君がとても鋭い眼を私に向けている。

「なんであんなことしたんだよ」

十代君が私にそう言った。
その声色からも彼が怒っているということは明確だった。

「ごめんなさい、でも私は貴方達子供を」

「大人とか子供とかそんなの関係ないだろ!!!」

私が言い終わる前に彼がそう怒鳴った。
私が余計な事をしたせいで彼は責任のようなものを感じてしまっている。

それでも、私という異分子がいるのだ。
世界にどう影響を与えるかわからない。
そんな危険を一つでも減らせたなら、そう思うといてもたってもいられなくなってああ言ってしまったのだ。
この世界に彼は絶対に必要なのだから。
しかし私が何かしたところでやはり世界の本筋は変わらなかったのも事実だ。

「今名前か考えていること当ててやろうか」

十代君は私を鋭い目で射ぬいた。
その目は恐怖も感じたが同時に十代君の悲しみも私に伝えた。

「名前は自分よりもカイザーの方が大切だって思ってるんだ」

なぜ彼にそれが伝わったのかはわからない。
でも十代君は強く確信している。

「カイザーは確かに必要な人間だよ、でもそんなの名前だって同じだろ!!」

なぜ十代君は私にこんなことを言うのだろうか。
私達はそんなに親しい仲ではない筈なのに、どうして彼は私を思って怒りをぶつけてきたのだろうか、わからない、わからない。

「俺は、きっと他の奴が名前と同じ事してもすげーやだよ、すげームカつく、でも」

ああ、だめ、お願いだからその続きを言わないで。
十代君の顔を見て分かってしまった。
言葉の続きが。

「名前が消えたら俺はすげぇ悲しい、すげぇ辛い、俺も、」

そこまで言って言葉を止めた。
泣きそうな表情で私を見つめる。
私がこんな表情をさせてしまったのだ。

「なんで俺がこんな風に思うか、名前には分かるか?」

ごめんなさい、なにも、なにもわからないよ。
そう心の中で答え首を横に振った。

「·······そっか」

十代君は怒鳴って悪かったと私に一言お詫びの言葉をかけてその場を立ち去った。

ねぇ、貴方は何を思ったの?

ねぇ、どうして私はそれに気付けないの?

ねぇ、私は何を望んでいるの?